実態を伴わないグリーンウオッシュの事例と各国の規制状況一覧

基礎知識

2024年2月5日、東洋経済新報社による「CSR企業ランキング 2024年版(第18回)」の結果が発表されました。CSRとは「Corporate Social Responsibility」の略となっており、日本語では「企業の社会的責任」と訳されています。今年度も上位10社には、業種別のトップ企業ランキングでも掲載されている企業が、数多くランクインしています。

@https://corp.toyokeizai.net/news/wp-content/uploads/sites/5/2024/02/20240205.pdf

 

しかし、このように、昨今では多くの企業によって積極的に取り組まれているCSR活動ですが、前向きな結果を残しているものだけではない現状があります。

言うまでもなく、CSRは今後の企業経営に欠かせません。
そこで、本コンテンツでまずはCSRについて理解を深めていただき、企業が目指すべき適切なCSRとはどのようなものか、改めて考えていただく機会に繋がれば幸いです。

 

CSRとは

企業の社会的責任を示すCSRですが、実は概念そのものは新しくはなく、1956年の経済同友会によるCSR決議以来、50年以上の歴史があります。以下にお示しするように、世界全体で見ても様々な国際的フレームワークの中で色々な角度からCSRは位置づけられています。

経済産業省 経済産業政策局 企業会計室:CSRについて(平成27年9月)
©https://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/kigyoukaikei/pdf/CSR_policy_direction_J.pdf

 

例えば、ISO26000では七つの原則と七つの中核主題をもって、CSR活動を行う上での枠組みとしています。

朝日新聞SDGs ACTION!:CSRとは 活動事例とメリット・デメリット、導入のプロセスを解説
©https://www.asahi.com/sdgs/article/15050234

 

七つの原則概要
説明責任組織の活動によって環境や社会に与える影響について十分に説明する
透明性組織情報や事業活動によって環境、社会、経済が受ける影響について透明性を保つ
倫理的な行動誠実性や公平性に基づいた企業活動をおこなう
ステークホルダーの利害の尊重株主だけでなく、さまざまなステークホルダー(利害関係者)に配慮して企業活動をおこなう
法の支配の尊重各国の法的義務を企業全体で把握・尊重する
国際行動規範の尊重法令だけでなく、国際行動規範も把握・尊重する
人権の尊重人権は普遍性のあるものであると把握し、全ての行動で人権を尊重する

朝日新聞SDGs ACTION!:CSRとは 活動事例とメリット・デメリット、導入のプロセスを解説
を元に作成

 

七つの中核主題具体例
組織統治公正な意思決定・運営がおこなわれる企業体制の整備、ステークホルダーへの情報開示
人権ダイバーシティの推進、児童労働・強制労働の禁止、セクハラ・パワハラの禁止
労働慣行働きやすい環境づくり、従業員の健康管理
環境環境に配慮した製品づくり、省エネ、二酸化炭素(CO2)削減
公正な事業慣行コンプライアンスの尊重、関係組織への社会的責任の推進
消費者問題品質管理や情報開示など、消費者へ向けた安全衛生の保護
コミュニティへの参画地域コミュニティとの連携・支援、インフラ設備への投資

朝日新聞SDGs ACTION!:CSRとは 活動事例とメリット・デメリット、導入のプロセスを解説
を元に作成

 

また、GRI G4ガイドラインにおいても、「経済」、「環境」、「社会」の3つの大きなカテゴリがCSRの論点とされています。

経済産業省 経済産業政策局 企業会計室:CSRについて(平成27年9月)
©https://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/kigyoukaikei/pdf/CSR_policy_direction_J.pdf

 

このような背景のもと、事業者は多様な側面から社会的責任を求められる時代となり、CSR活動と呼ばれる様々な活動が活発化してきました。しかし一方で、その実態については疑問視されるような活動も含まれており、過去にはCBCC(*1)によるCSRの実態調査(*2)が行われることもありました。

そこで、2章ではカテゴリを「環境」にフォーカスし、昨今問題となっている環境に関連するCSRの取り組み事例を見ていきます。

(*1)公益社団法人 企業市民協議会、英文名 Council for Better Corporate Citizenship。
経団連の呼びかけにより、1989年9月に設立。

(*2)「CSR実態調査」 結 果:https://www.keidanren.or.jp/CBCC/report/201707_CSR_survey.pdf
別冊「CSR実態調査事例集」:https://www.keidanren.or.jp/CBCC/report/201707_CSR_jirei.pdf

グリーンウォッシュとは

1990年代、気候変動に関する2つの国際的な枠組みが注目されました。1992年に採択された「国連気候変動枠組条約」と、1997年に採択された「京都議定書」です。これらの地球温暖化問題に関する環境関連の国際条約が締結されたことで、CSR活動を通して「環境」への社会的還元を行う動きが世界中で加速し始めました。

しかし、そのような中で出てきた問題の一つがグリーンウォッシュ(= Greenwashing)です。これは、企業が広告でアピールする環境配慮の取り組みや企業イメージが、実態を伴っていないケースのことを示しています。語源としては、「Green(環境に良い)」と「Whitewashing(不都合な事実や要素を隠蔽する)」を組み合わせた造語となっています。日本ではSDGsウォッシュと呼ばれることもあります。

以下に2つのグリーンウォッシュの事例をご紹介します。実際にどのような事例がグリーンウォッシュとされているのか、参考にしていただければ幸いです。

事例1:マクドナルド(イギリス、アイルランド)
2018年、全ての店舗で従来のプラスチック製のストローを紙製のストローに切り替えた際、グリーンウォッシュであるとの批判を受けています。100%リサイクルが可能とされていた紙製のストローですが、実際には使用後そのまま廃棄されていたことが明らかになったためです。

事例2:H&M(スウェーデン)
2019年、自然由来の綿やリサイクル可能なポリエステルなどをすべてのラインナップに使用した「H&M コンシャスコレクション」が、ノルウェーの消費者庁から指摘を受けました。「サステナブルなファッション」としてPRしていましたが、素材の含有量などの具体的な情報が欠けており、消費者に対して実際以上に「サステナブル」な印象を与えているとされたためです。

このようにグリーンウォッシュが増加すると、せっかく環境に配慮した製品やサービスを提供しているにも関わらず、企業活動に悪い影響を与えかねません。そのため、CSRに取り組む際は、このようなグリーンウォッシュと受け取られるような活動を避けるよう、事業者側にも配慮が求められます。

グリーンウォッシュに対する規制について

実際に2章でお伝えしたようなグリーンウォッシュに対し、世界で取られている規制は異なります。日本はその中でも、法的な規制はまだしっかりと確立していません。

グリーンウォッシュに関する規制としては、ISOが定めたISO14021(環境ラベル)規格や、環境省による「環境表示ガイドライン」などがありますが、いずれも法的拘束力はない状況です。
しかし2022年には「生分解性」をうたっていたプラスチック製のカトラリー類やレジ袋などの表示が「優良誤認」にあたるとして、消費者庁が行政処分を行う事例が発生しました。そのため、今後は日本でも環境配慮の表示については厳しく取り締まるようになることが予測されます。

アメリカ:
グリーンウォッシュを取り締まった事例として、SEC(米国証券取引委員会)による罰金があります。実態を伴わない投資商品を取り扱った運用会社に対し、150万ドルの罰金が科されました。

EU:
2024年2月20日、グリーンウォッシュを禁止する指令案が正式に採択されました(*3)。
法案が採択されたことにより、「自然」や「エコ」などの表示は、環境に配慮していることをしっかり証明できない限り、使うことができなくなりました。また、欧州理事会は2023年3月、環境に配慮されていることを実証するための最低条件として、第三者機関による裏付けと認証が必要だとしています。違反した企業に対しては、罰則として罰金や公的資金の一時的な除外などが含まれる予定となっています。

アジア:
金融業界を中心に、グリーンウォッシュの規制強化が進められています。アジア投資家グループ(AIGCC)は2023年4月に「グリーンウォッシングとそれを回避する方法:アジアの金融業界の入門ガイド」を発表し、グリーンウォッシュの概要や規制、グリーンウォッシュへの対策方法などを公開しています。また、韓国では2023年1月、虚偽や誇張した環境配慮を掲げる企業に対して最大で300万ウォンの罰金を課すという「グリーンウォッシュ規制法案」を立案しています。

(*3) European Council, Council of the EU and the European Councilによるプレスリリースを参照。

 

まとめ

本コンテンツでは、グリーンウォッシュの事例を通し、事業者がCSR活動に取り組む上でどのような点に注意する必要があるのか確認してきました。

企業の倫理観やモラルが問われるCSRですが、持続可能な社会の実現に向けて企業が経済活動を行う上ではしっかりと向き合う必要があるのも事実です。2050年のカーボンニュートラルに向けて、環境や人権、労働環境といった問題は見直されるべきであり、事業者側からの積極的な取り組みの情報開示も求められます。

今回の記事が、自社で展開されているCSR活動について、改めて見直していただく機会に繋がりましたら幸いです。

本コンテンツ、並びにCO2排出量の算定に関しご質問がございましたら、弊社までお問い合わせ下さい。

関連記事一覧