第1回全国海の再生・ブルーインフラ賞が決定しました。
「全国海の再生・ブルーインフラ賞」とは一般財団法人みなと総合研究財団により今年度から新たに創設された賞であり、海辺の環境改善やカーボンニュートラルの実現等につながる活動を行う団体(環境活動団体等)の取組を称えることを通じて、我が国の海辺空間の環境再生やブルーインフラ(藻場・干潟等及び生物共生型港湾構造物※)の保全・再生・創出の推進に貢献することを目的としています。
※生物共生型港湾構造物:多様な生物の定着を促す港湾構造物
参照:https://www.mlit.go.jp/report/press/port06_hh_000283.html
目次
【国土交通大臣賞】
「 兵庫運河の自然を再生する活動」
〇応募者:兵庫運河の自然を再生するプロジェクト
〇構成員:2013年発足当時(兵庫漁業協同組合、兵庫運河を美しくする会、兵庫運河真珠貝プロジェクト、兵庫・水辺ネットワーク)、2016年から浜山小学校が参加
〇実施場所:神戸市兵庫区 兵庫運河
〇取組期間:2013年4月~(10年9ヶ月)(2024年1月末時点)
〇目的・取組内容:「神戸で一番汚かった海を神戸で一番の里海・ゆりかごの海にする」ことを目的に、「兵庫運河の自然を再生するプロジェクト」を立ち上げ、兵庫運河の生物多様性の向上のため、アマモ場の育成、粗朶(そだ)沈床の設置、天然アサリの育成、小学生対象の観察会やアサリ学習、清掃活動等を継続して実施。
〇組織の特徴:漁協、地元企業団体、小学校、二つのNPOが協働して活動を実施。
〇具体的効果:現在の兵庫運河には、レッドリスト対象種が15種類以上確認されるなど、豊かな里海へ改善が進むとともに、「Jブルークレジット®」認証を受けるなどカーボンニュートラルに貢献している。
〇授賞理由:多岐に渡る地元関係者(漁協、NPO、小学校、行政、企業等)が連携し、人工干潟を活用した藻場を造成し、レッドリスト種を含む多種多様な水生生物が育つ環境を創出した点、小学生の環境教育の場としての活用や企業と連携したイベント開催等、環境教育やブルーカーボンの普及啓発に継続的に取り組んでいる点や、育成した藻場によるCO2吸収量がJブルークレジット®で認証されている点など、豊かな海の実現やカーボンニュートラルへの貢献を目的としたブルーインフラの取組を全国に拡大する上で特に模範となる優良事例であるため。
【みなと総研賞】
「はんなん海のゆりかご再生活動」
○応募者:阪南市
○協力者・関係者:尾崎漁業協同組合、西鳥取漁業協同組合、下荘漁業協同組合、NPO法人大阪湾沿岸域環境創造研究センター、大阪公立大学、株式会社漁師鮮度、チーム☆ガサ
○実施場所:阪南市全域のアマモ場
○取組期間:2005年4月~(18年10ヶ月)(2024年1月末時点)
○令和5年度前期自然共生サイト認定全国122カ所のうち、沿岸域の自然系海岸(藻場)として、全国唯一の認定
○海洋教育パイオニアスクールプログラムを活用。市内全小学校・全学年で、環境・海洋・森里川海の繋がりをテーマに、探求型協働学習を実施
○はんなん海の学校を創設。中学生から子育て世代を対象に、海洋教育に関する専門的な内容や体験などを学ぶ場を提供
○授賞理由:自治体主導で多岐にわたる関係者(漁協、NPO、小学校、企業等)の参加を 担保しており、阪南市内の小学校のカリキュラムとして藻場の再生活動等を取り入れ、さらに学年ごとに体系的な教育プログラムを設定するなど海洋教育に力を入れている点や、企業との連携・協働によりアマモ場再生活動等の持続可能性を高める工夫がみられる点、再生した藻場によるCO2吸収量がJブルークレジット®で認証されている点など模範となる優良事例であるため。
「アマモ場再生活動~21年の実践~」
○応募者:熊本県立芦北高等学校林業科アマモ班
○協力者・関係者:芦北漁協、芦北町、アグリライト研究所
○実施場所:熊本県芦北町芦北湾(計石湾)など
○取組期間:2003年4月~(21年10ヶ月)(2024年1月末時点)
〇21年前、アマモの消失と共に漁獲量が減ってきている海の異変に気づいた漁師さんより「海のゆりかごであるアマモ場を復活させてほしい」と依頼を受け、アマモ場再生活動がスタートした。日頃授業で学ぶ農学や林学の知識・技術を応用して様々なアマモの造成技術を考案し、アマモ場の再生につなげた。活動当初0.25haから令和2年6月までには30倍の7.5haまでアマモ場の拡大に成功した
〇21年前「アマモって何?」からスタートしたこの活動は多くのアマモ場造成技術を考案し、今では県内外から視察依頼や技術指導を依頼される活動になった。アマモ場が拡大する中で漁協の方からは「良型のヒラメやカニが捕れるようになった」「稚魚の放流に大切な場所です」など、嬉しい言葉を頂いていた。令和2年7月熊本豪雨では、一夜にして山から流れてきた大量の土砂に埋もれ約5haのアマモ場が消失した。その中でも生徒たちは諦めずに逆転の発想でヘドロポット苗栽培の考案につなげられたのも、先輩から後輩にアマモの襷をしっかり繋いできた成果でもある。現在も新たな造成技術の研究を進めており、面白い結果が出ている。アマモは、生物多様性やブルーカーボンなど多くの機能を有している。SDGs達成、2050年カーボンニュートラル実現に向け、世の中の一助になれるよう、今後もアマモ場の再生(造成)を追求していきたい。
○授賞理由:独自の工法を考案し、脈々と受け継がれる専門知識を持った高校生がアマモ場再生に取り組み、活動当初から藻場面積が30倍になるなど大きな効果が確認されている点、また、次世代を担う高校生が自ら積極的に情報発信に取り組むなど、藻場の再生活動及び青少年の育成の点で模範となる優良事例であるため。
【審査委員会特別賞】
「日本の美しい自然を次世代に引き継ぐために」
○応募者:(一財)セブン-イレブン記念財団
名称 | 関係者協力者 | 実施場所 | 期間 |
青森セブンの海の森 | 青森市・NPO法人あおもりこどもクラブ | 陸奥湾・青森駅前干潟 | 2021年10月~(2年4ヶ月) |
塩竈セブン海の森 | 塩竈市・松島湾アマモ場再生会議 | 塩竈市松浦湾 | 2020年7月~(3年7ヶ月) |
館山セブン海の森 | 館山市・NPO法人たてやま海辺の鑑定団 | 館山市沖ノ島 | 2021年3月~(2年11ヶ月) |
東京湾UIMプロジェクト | 国交省・NPO法人海辺つくり研究会 | 横浜市海の公園 | 2011年6月~(12年8ヶ月) |
阪南セブンの海の森 | 阪南市・NPO法人大阪湾沿岸域環境創造研究センター | 阪南市 | 2018年6月~(5年8ヶ月) |
○「セブンの森・セブンの海の森」では、地域住民やNPO、行政と連携し、地域に親しまれ、愛され次世代に繋げる地域一体型の森づくりを継続し、脱炭素社会の実現と生物多様性の保全に貢献できるよう取り組んでいます。
○授賞理由:全国的な規模で自然を守り、育てる活動を実施し、全国で行われている様々な活動を幅広く支援をしている点がブルーインフラを全国に拡大する国の取組を後押しすることにつながっているため。
まとめ
ブルーインフラは、水の持続可能な管理と保全を目的とした、自然または人工の水系を利用したインフラです。今後も様々な企業や団体が実施、拡大していくことが期待されています。
気候変動への適応:ブルーインフラは、気候変動による極端な天候、特に洪水や干ばつへの対策として有効です。例えば、洪水対策としての湿地の復元や、都市部での雨水の再利用システムなどが挙げられます。
水質の改善:自然の水系を利用することで、水質の浄化を助けることができます。湿地や人工湿地は、水中の汚染物質を取り除くフィルターの役割を果たし、水質を改善します。
生物多様性の保護:ブルーインフラは、水辺の生態系を保護し、生物多様性の維持に寄与します。水生生物や水辺に生息する生物の生息地を提供し、絶滅の危機に瀕している種の保護にもつながります。
経済的価値:ブルーインフラは、観光やレクリエーションなど、経済活動の促進にも寄与します。清潔で美しい水辺は、地域の魅力を高め、地域経済にも好影響を与えます。
都市環境の改善:都市部におけるブルーインフラの導入は、都市の緑化を促進し、暑さの軽減、空気の質の改善に貢献します。また、市民の健康や福祉の向上にも繋がります。
持続可能な水資源の管理:ブルーインフラは、水循環の一部として水資源の再生と利用を促進します。これにより、持続可能な水資源の管理が可能になり、将来の水不足のリスクを軽減できます。
これらの理由から、ブルーインフラの全国的な拡大は、環境保全、経済活動の促進、社会の持続可能な発展に寄与すると注目、期待されています。実施するにはハードルが高いですが、自社事業とのシナジーや関わり方を模索してみるのも良いかもしれません。