サプライチェーンにおけるCO2の排出係数(排出原単位)について解説2:Scope2

CO2算定

前回、サプライチェーンにおけるCO2の排出係数(排出原単位)について解説1:Scope1のコンテンツでは、排出原単位そのものの理解を深め、排出原単位の確認から実際のCO2排出量の計算までの一連のフローについて、”自社が燃料として使用している軽油(Scope1)”を具体的な事例として取り上げました。

そこで、本コンテンツではScope2に該当する“他社から購入した電気”の使用について、を具体的な事例として取り上げ、解説していきます。Scope2で出てくるキーワードは、「ロケーション基準/マーケット基準」、「基礎排出係数/調整後排出係数」の4つのです。「基礎排出係数/調整後排出係数」については、過去の記事でもご紹介させていただきましたので、あわせてそちらもご覧下さい。

それでは、早速内容に進みましょう。
まずは、Scope2をしっかりと理解するにあたって重要になってくる「ロケーション基準/マーケット基準」から解説いたします。

ロケーション基準とマーケット基準について

まず、ロケーション基準とマーケット基準について簡単に概要を確認します。
GHGプロトコルの中では、日本は両基準の回答が求められています。

ロケーション基準:同じ系統または市場において系統平均を用いて、電力等二次エネルギーからの排出を算定。
マーケット基準:電力購入の契約に基づく排出係数を用いて算定。

また、Scope2ガイダンスでは、ロケーション基準手法とマーケット基準手法のそれぞれについて、以下のように使用する排出係数の優先順位が定められています。

表 2-1 ロケーション基準手法における排出係数の優先順位

国際的な気候変動イニシアティブへの対応に関するガイダンスを元に抜粋

表 2-2 マーケット基準手法における排出係数の優先順位

国際的な気候変動イニシアティブへの対応に関するガイダンスを元に抜粋

 

ここでポイントなのは、それぞれの基準において実際にどの排出係数を用いるべきか、という点です。

まず、ロケーション基準においては、表2-1の優先順位からもわかるように、「グリッドの範囲における」平均排出係数が優先されます。ここでいう「グリッド」とは、パソコンのグリッドのように、ネットワーク上のCPUやハードディスクなどの資源を結びつけ、一つの大規模なコンピュータシステムとして稼働させること、つまり日本全体を「グリッドの範囲」としています。したがって、ロケーション基準では、全国平均排出係数が用いられています。

一方、マーケット基準では、⼩売電気事業者のGHGプロトコル対応の排出係数が使用されています。言い換えると、事業者が実際に⼩売電気事業者と契約しているメニューとリンクしている調整後排出係数が用いられています。

また、これらの基準においては、もう一つ大きな違いがあります。
ロケーション基準では、需要家が証書等を購入していてもその効果を反映することはできません。しかし、マーケット基準では需要家が証書等を購入している場合、その効果を反映することが可能です。そのため、後者においては、「他者から調達する電気の排出係数(⼩売電気事業者のGHGプロトコル対応の排出係数)」を特定後、「需要家が調達した証書等による温室効果ガス排出量」の調整が必要となってきます。

CO2の排出原単位とその算出方法について

今回取り上げるScope2の算定においては、他社から供給された電気、熱・蒸気の使用、つまり自社が購入したこれらのエネルギーに伴う間接排出が該当します。

 

©https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/estimate.html

以下には、“他社から購入した電気”の事例を取り上げ、排出原単位の確認から実際にCO2の排出量を計算するまでのフローを見ていきましょう。

事例:
他社から購入している100 MWhの電気の排出原単位を確認し、ロケーション基準手法を用いてCO2の排出量に関して計算したい。

手順:
①まず、確認したい排出原単位がScope1、2、3のどこに該当するのかを確認します。
⇒手順①は、Scope1と同じです。「他社から購入した」電気となりますので、今回はScope2に該当します。

②次に、ロケーション基準手法に適応するにあたり、全国平均排出係数の値を確認します。
(マーケット基準手法ではないため、電気の調達先は、今回は関係ありません。)
⇒資源エネルギー庁(経済産業省)HP*より、令和3年度の全国平均係数が0.000434(t-CO2/kWh)であることがわかります。*https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denryoku_gas/seido_kento/pdf/079_s01_00.pdf

算定・報告・公表制度における算定方法・排出係数一覧を元に抜粋

 

 

③ここで、算出式の登場です。上の図表でもお示ししているように、『電気使用量×単位使用量当たりの排出量』が算定方法になります。
そのため、100MWh(=100,000kWh)×0.000434=43.4

よって、排出係数によるCO2排出係数は、43.4(t-CO2)になります。

排出原単位に関連するQ&A

ここまでは、排出原単位を用いたCO2の排出量計算について、Scope2の“他社から購入した電気”の事例を用いてご紹介させていただきました。前回のScope1に引き続き、計算に至るまでの諸々の確認作業に、改めて大変さを実感されている方も多いのではないでしょうか。次回ご紹介させていただく予定のScope3の事例に関しては、更に煩雑さが増してくるかと思います。

ここからは、皆様からいただくScope2に関連するご質問の中で数が多いものを、3つご紹介いたします。

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Q. 電気事業者別排出係数一覧には、多くの係数が記載されていますが、結局国内のScope2排出量をマーケット基準で算定する際には、どの排出係数を使用すべきでしょうか。

A. 1章でも解説したように、基本的には、事業者が実際に⼩売電気事業者と契約しているメニューとリンクしている調整後排出係数を使用します。そのため、事業者の契約形態によって使用すべき排出係数は異なります。
そこで、まずは事業者側から小売電気事業者に排出係数を確認する必要があります。但し、小売電気事業者から契約中の排出係数を確認できない場合は、暫定措置として温対法の電気事業者別調整後排出係数を用い、回答欄に注記する方法を取ることも可能となっています。

サプライチェーン排出量算定におけるよくある質問と回答集(2023年3月 改訂, 2016年3月 発行)を元に抜粋

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Q. Scope2に利用できる再エネ証書にはどのようなものがありますでしょうか。

A. 日本国内で利用可能な再エネ証書は、以下の表をご参照ください。

©https://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/kankyou_keizai/international_climatechange_initiatives.html

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Q. 賃借しているリース資産の稼働は、どのカテゴリに分類するべきなのでしょうか。例えば、リース資産である自動車を賃借して営業活動を行っていますが、この自動車の稼働に伴う排出量はScope1・2、Scope3カテゴリ8のどちらに分類すればよいのでしょうか。

A. いずれのScope・カテゴリに計上すべきかは、リース契約の種類と組織境界基準によって異なります。具体的には、以下の表のようにカテゴライズされます。

サプライチェーン排出量算定におけるよくある質問と回答集(2023年3月 改訂, 2016年3月 発行)を元に抜粋

まとめ

本コンテンツでは、Scope2の算出を想定し、具体的な排出原単位を用いてCO2の排出量計算のシミュレーションを行ってみました。サプライチェーン全体におけるCO2の排出量を減らすにあたり、各コンテンツで見てきたような計算のフローを繰り返し、自社の算定・削減検討に繋げていくイメージは湧いてきましたでしょうか。

次回は、いよいよ最難関のScope3のCO2排出量計算のシミュレーションを行います。
Scope3では、今までのような計算方法に加え”物量ベース”の排出原単位、”金額ベース”の排出原単位といった考え方が加わり、カテゴリごとに用いる排出原単位が細かく定められています。

本コンテンツ、並びにGHGの算定全体を通しご質問がございましたら、弊社までお問い合わせ下さい。

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