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グリーン電力証書はCO2削減につながる鍵!環境貢献と企業イメージ向上を実現する方法

基礎知識

再生可能エネルギーの環境価値を証書化し、効果的なCO2削減を実現する新しい仕組みである「グリーン電力証書」。

企業の環境価値向上とカーボンニュートラル実現に向けて、グリーン電力証書が注目を集めています。

本コンテンツでは、RE100やSBT目標の達成を目指す企業の皆様に向けて、グリーン電力証書の基礎から活用方法まで詳しく解説していきます。

グリーン電力証書とは何か、非化石証書との違いから具体的な購入方法まで徹底的に解説。証書価格の相場感や発行事業者の選び方にも触れていきます。

さらに、先進企業の活用事例や投資対効果の分析を通じて、企業価値向上につながるグリーン電力証書活用のベストプラクティスをご紹介。

環境戦略における証書活用の意義とは?その課題と展望を詳しく見ていきましょう。

グリーン電力証書の基礎知識

再生可能エネルギーで発電された電力の「環境価値」を証書化して取引できる仕組みです。ここでは、その基礎知識や価格について、解説します。

グリーン電力証書の仕組みを解説

グリーン電力証書は、再生可能エネルギーで発電された電力の「環境価値」を証書化して取引できる仕組みです。

日本自然エネルギー株式会社 グリーン電力証書システムとは?

▼仕組みの本質

グリーン電力証書は、クリーンな電力が持つ「環境価値」を、誰もが取引できる形にした画期的な仕組み。

この仕組みにより、直接的な設備投資なしでも、企業は環境負荷の削減に貢献できるようになりました。

▼具体的な価値の形

環境価値の要素具体的な内容
CO2削減効果化石燃料との比較による削減量
発電源の種類太陽光、風力、バイオマスなど
証書の信頼性第三者機関による厳格な認証

この証書を購入することで、実際に再生可能エネルギーを導入しなくても、環境に優しい電力を使用したとみなすことができます。

▼証書の信頼性を支える要素

  • 発電設備の詳細な記録
  • 発電量の正確な計測データ
  • 発電期間の明確な記録
  • 第三者機関による厳格な審査
  • トレーサビリティの確保

発行された証書には、発電設備や発電量、発電期間などが記載され、第三者機関による認証を受けているため、信頼性の高い環境価値として認められています。

また、ブロックチェーン技術を活用した証書の発行や、AI による最適な証書調達の支援システムなども登場しています。

グリーン電力証書の価格

グリーン電力証書の価格は、主に発行される地域や再生可能エネルギーの種類、需要の状況によって異なります。平均的な価格帯は、1kWhあたり数円から数十円程度です。

ただし、この価格は様々な要因で変動するため、企業は慎重な検討が必要です。

▼価格を決める5つの要因

  1. 発電方式:太陽光・風力・バイオマスなど
  2. 発電地域:都市部・地方・遠隔地
  3. 取引数量:大口・中規模・小口
  4. 契約期間:短期・中期・長期
  5. 市場の需給バランス

企業が大量に購入する場合には、まとめ買い割引が適用されるケースもあります。

グリーン電力証書はなぜ高い?

グリーン電力証書の価格が高くなる理由には、主に3つの要因があります。

  • 再生可能エネルギーの発電設備の建設・維持にコストがかかる
  • 証書の発行・管理・認証にかかる手続きや人件費などの運営コストがかかる
  • 環境価値に対する需要の高まり

この費用は環境貢献や企業イメージの向上といった無形の利益を考えると、多くの企業にとって投資価値のあるものといえるでしょう。

▼割引制度の活用術

  • 大口購入する
  • 長期契約する
  • 複数の発行事業者から見積もりを取得する
  • 証書の購入時期を戦略的に選択する

最新の市場動向として、RE100企業の増加による需要拡大が価格を押し上げる一方、発電設備の増加により供給も拡大傾向にあります。

価格だけでなく、証書の信頼性や発行事業者のサポート体制にも注目して、契約をすることをおすすめします。

グリーン電力証書に期待できるメリット

グリーン電力証書には、3つの面に対してメリットが期待できます。

  • 環境面へのメリット
  • 経済面へのメリット
  • 社会的なメリット

それぞれ詳しく解説します。

環境面へのメリット

  • CO2排出量の直接的削減
  • 再生可能エネルギーの普及促進
  • 地域の環境保全への貢献
  • 環境技術の発展支援
  • 環境意識の啓発効果

グリーン電力証書を活用することで、間接的に再生可能エネルギーの普及を支援することができます。これにより、CO2排出量の削減や地球温暖化の抑制に貢献できるでしょう。

さらに、自社の環境への取り組みを数値として具体的に示せるため、環境経営の実績として活用できます。

経済面へのメリット

  • 将来の炭素税負担軽減
  • 環境規制対応コスト削減
  • エネルギーコストの最適化
  • 新規顧客獲得率
  • ブランド価値の向上

グリーン電力証書の活用は、将来的なコスト削減につながる可能性があります。

炭素税の導入や環境規制の強化が予想される中、早期に対策を講じることで、将来の追加コストを抑制できます。

また、環境配慮型の商品やサービスに対する消費者の需要が高まっており、売上増加や新規顧客の獲得にもつながります。

ESG投資の評価向上により、資金調達がしやすくなるという副次的な効果も期待できるでしょう。

社会的なメリット

  • 商品選択の重要基準に
  • SNSでの好意的評価増加
  • ロイヤルカスタマーの増加
  • サプライチェーンでの優位性
  • 共同事業の創出機会
  • 長期取引関係の強化
  • 国際評価の向上
  • 地域社会との関係強化

グリーン電力証書の導入は、企業の社会的評価を大きく向上させます。

環境に配慮した企業としてのブランドイメージが強化され、取引先や消費者からの信頼度が高まります。

また、就職活動生からの人気も上昇し、優秀な人材の確保にもプラスに働く可能性が期待できるのも魅力。

さらに、地域社会との関係性も改善され、企業の持続的な成長を支える重要な要素となっています。

SDGsへの貢献を具体的に示せることで、国際的な評価も向上するでしょう。

グリーン電力証書のデメリット

メリットの多いグリーン電力証書には、デメリットも存在します。

  • コストがかかる
  • グリーンウォッシュだと思われるリスク
  • 手続きが複雑

確認しておくべきデメリットについて、見ていきましょう。

コストがかかる

グリーン電力証書の導入には、通常の電力料金に加えて追加のコストが必要となります。

  • 再生可能エネルギーの生産コスト
  • 証書発行の手続きに関連する費用

これらが価格に含まれるため、従来の電力に比べて高額になることがあるのです。

大量の電力を使用する企業にとっては大きな負担となる可能性があるかもしれません。

特に、中小企業にとってはこの追加コストが経営を圧迫する要因となることも考えられます。

ただし、この投資は将来的な環境規制への対応や企業価値向上につながる重要な経営判断とも言えます。

グリーンウォッシュだと思われるリスク

単にグリーン電力証書を購入するだけで、実際の環境対策を行っていない場合、グリーンウォッシュ(見せかけの環境対策)として批判される可能性があります。

特に、証書の購入量が企業の電力使用量と比べて少ない場合や、その他の環境への取り組みが不十分な場合は、批判の対象となりやすいでしょう。

このリスクを避けるためには、証書の購入と併せて、実質的な省エネ活動や環境配慮の取り組みを進める必要があります。

手続きが複雑

グリーン電力証書の取得には、複数の手続きと書類の準備が必要です。

  • 発行事業者との契約
  • 証書の発行申請
  • 環境価値の移転手続き

など、各段階で専門的な知識が求められます。

また、証書の有効期限や使用条件などにも注意が必要で、適切な管理体制を整えなければいけません。

これらの手続きを適切に行うためには、担当者の育成や外部専門家への相談など、追加の人的リソースが必要となることも考慮しておく必要があるでしょう。

グリーン電力証書の購入方法

実際にグリーン電力証書を購入するときの流れについて紹介します。

  1. 購入目的を明確にする
  2. 購入企業を選ぶ
  3. 見積もりの作成
  4. 契約を交わし購入する
  5. 公表する

購入の目的を明確にする

グリーン電力証書を購入する前に、自社の目的を明確にすることが大切です。

  • RE100への加入を目指す
  • CO2削減目標を達成したい
  • 企業イメージを向上したい

目的に応じて必要な証書の量や種類が変わってくるため、事前の検討が重要です。

具体的な目標を設定することで、購入後の活用方法もスムーズになります。また、目的がはっきりしていれば、社内外での説明もしやすくなります。

購入企業を選ぶ

グリーン電力証書を発行している企業は複数あり、それぞれ特徴が異なります。

  • 発電方法(太陽光、風力、バイオマスなど)
  • 価格帯
  • 発行実績
  • 評判

発行企業の信頼性や実績も重要な選定基準となります。

複数の発行企業から見積もりを取得し、比較検討することをおすすめします。

見積もりの作成

選定した発行企業に、必要な証書の量や希望する発電方法を伝えて見積もりを依頼します。

この際、自社の年間電力使用量や削減目標などの情報を準備しておくと、より正確な見積もりを取得できるでしょう。

この段階で、契約内容や支払い条件についても確認しておくことが重要です。

契約を交わし購入する

見積もり内容に問題がなければ、正式な契約手続きに進みます。

契約書の内容をしっかりと確認し、特に証書の有効期限や利用条件について注意を払います。

契約後は、証書が適切に発行されているかを確認し、記録を保管しておきましょう。これにより、後々の報告や監査に対応しやすくなります。

グリーン電力証書を購入したことを公表する

証書購入後は、その取り組みを社内外に適切に公表することが重要です。

公表する際は、購入した証書の量やCO2削減効果を具体的な数値で示すと、より説得力が増します。

▼公表する方法

  • ウェブサイト
  • CSRレポート
  • プレスリリース

ただし、グリーンウォッシュと誤解されないよう、証書購入と併せて行っている他の環境への取り組みも合わせて紹介することをおすすめします。

具体的な活用事例や成果を発信することで、顧客や取引先からの評価も向上します。積極的に情報発信を行うことが重要です。

グリーン電力証書を活用している企業

グリーン電力証書を活用している企業・団体は、132(2024年7月現在)(参考:日本自然エネルギー(株))。 そのなかから、ここでは4つの企業について紹介します。

サントリー株式会社

サントリー株式会社は、環境保全への取り組みの一環としてグリーン電力証書を活用しています。同社は主に製造施設で使用する電力の一部を再生可能エネルギー由来のものに切り替えています。

これにより、CO2排出量の削減を実現しつつ、持続可能な製品づくりを目指しています。

  • 製造プロセス別の最適化
    •  • モルト製造工程:100%グリーン電力 
    • • 熟成工程:段階的な切り替え
    •  • 瓶詰工程:高効率化との組み合わせ
  • 地域との連携 
    • • 地元自治体との協力体制 
    • • 環境教育プログラムの実施 
    • • 地域住民との対話促進

2025年までに全製造拠点でのグリーン電力100%化を目指すなど、さらなる取り組みの強化を計画。

海外展開する工場でも同様の取り組みを進め、グローバルでの環境負荷低減を目指しています。

ESR株式会社

物流施設開発大手のESRは、全国の物流施設でグリーン電力証書を積極的に活用しています。

特に、テナント企業向けに環境配慮型の施設運営を実現するため、共用部の電力を中心に証書を導入。

  • 共用部のグリーン化
    •  • エントランス 
    • • 駐車場
    •  • 外構設備
    •  • 防災設備
  • テナント向けサービス
    •  • 個別メータリング
    •  • 環境レポート提供
    •  • コスト按分システム

この取り組みは、入居企業のRE100達成支援にもつながっており、物流業界全体の環境負荷低減に貢献しています。

▼施設別の導入実績

施設タイプグリーン化率年間CO2削減量
大規模物流施設100%約8,000トン
中規模物流施設80%約5,000トン
都市型物流施設90%約3,000トン

三菱地所株式会社

三菱地所は、丸の内エリアの主要ビルでグリーン電力証書を導入しています。

特に注目すべきは、テナント企業と協力して証書を一括購入する仕組みを構築したことです。

  • エリアマネジメント
    •  • 電力の面的利用 
    • • スマートグリッド連携
    •  • デジタルツイン活用
  • テナント協働
    •  • 共同購入プラットフォーム
    •  • コスト最適化システム
    •  • 環境価値の公平配分

この取り組みにより、証書購入コストの低減と、より効率的な環境対策を実現しています。

また、この施策は都市の脱炭素化のモデルケースとしても評価されています。

丸の内エリアを「環境価値創造都市」として進化させる革新的な取り組みを展開。

2024年現在、エリア全体で年間約10万トンのCO2削減を実現し、世界的なサステナブル都市のモデルとなっています。

小田急電鉄

小田急電鉄では、鉄道事業においてグリーン電力証書を活用しています。

  • スマート駅舎 
    • • 照明のLED化 
    • • 空調の最適制御
    •  • 自然エネルギー活用
    •  • エネルギー見える化
  • 次世代型車両基地
    •  • IoT活用監視 
    • • 省エネ設備導入
    •  • 再エネ設備連携

同社は、地域社会と共に持続可能な未来を築くための取り組みを進めており、グリーン電力証書の活用はその一環として重要な役割を果たしています。

グリーン電力証書についてよくある質問

グリーン電力証書について、よくある質問にお答えします。

グリーン電力証書と非化石証書との違いは?

【主な違い】

項目グリーン電力証書非化石証書
発行者民間認証機関国(経済産業省)
法的根拠任意の制度エネルギー供給構造高度化法
対象電源再生可能エネルギーのみ再エネ+原子力
購入者制限なし小売電気事業者のみ

グリーン電力証書は環境貢献のPRに適しており、より柔軟な活用が可能です。

一方、非化石証書は法令遵守のために使用されることが多く、より公的な性格を持っています。

両者の使い分けは、企業の目的に応じて検討するとよいでしょう。

グリーン電力証書とj・クレジットとの違いは?

【特徴の比較】

  • グリーン電力証書
    • 電力の環境価値のみを証書化
    • 手続きが比較的シンプル
    • 企業のPRに活用しやすい
  • J-クレジット
    • 省エネ設備や森林保全も対象
    • 国が認証する制度
    • より広範な用途に使用可能

使い分けのポイントは、企業が重視する環境価値の種類と、活用目的によって決めることをおすすめします。

グリーン電力証書に有効期限はある?

グリーン電力証書には、有効期限が設定されています。一般的には、発行日から1年以内に使用することが求められるケースが多いです。

▼有効期限の基本情報

  • 発行から2年間が有効期限
  • 期限切れ後は環境価値が失効
  • 長期契約の場合は発行時期の調整が可能

有効期限を考慮した計画的な購入と使用が重要です。

特に、年度末に向けて証書の価格が変動する傾向があるため、購入のタイミングにも注意しましょう。

グリーン電力証書はRE100に対応している?

グリーン電力証書は、RE100の要件を完全に満たす認証制度として認められています。ただし、発行機関の認証基準がRE100の要件(再エネ100%を証明すること)に合致しているか精査が必要です。

▼RE100対応のための条件

  1. 発電源が再生可能エネルギーであること
  2. 証書の発行元が信頼できる機関であること
  3. 二重使用がないこと
  4. 発電時期が証書発行から2年以内であること

これらの条件を満たしていれば、RE100の目標達成に活用できます。

ただし、証書の調達量は自社の電力使用量に見合った量を確保する必要があります。

まとめ

グリーン電力証書は、企業の環境戦略において重要なツールの一つ。 メリット・デメリットを理解した上で、自社の状況に合わせて導入を検討しましょう。

特に、将来的な環境規制の強化を見据えた計画的な導入が効果的です。 証書の購入と併せて、実質的な環境対策も進めることで、より大きな効果が期待できます。

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