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サステナビリティとSDGsの違いをわかりやすく解説!企業活動や日常生活への影響も紹介

サステナビリティとSDGsの違いをわかりやすく解説!企業活動や日常生活への影響も紹介
CO2削減

2024年6月17日、SDGsに関する世界最大のネットワークであるSDSN(※1)が、世界各国のSDGsの達成度を評価した「Sustainable Development Report」(持続可能な開発報告書)の2024年版を発表しました。その中で、日本のSDGsの達成度は167カ国中18位となっており、過去最低順位(166カ国中21位)であった2023年から3ランク上がる結果となりましたが、5つの目標においては「深刻な課題がある」という低い評価に終わっています。

「深刻な課題がある(Major challenges)」 5つの目標とは?
目標5ジェンダー平等を実現しよう
目標12つくる責任、つかう責任
目標13気候変動に具体的な対策を
目標14海の豊かさを守ろう
目標15陸の豊かさも守ろう

このように、サステナブルな社会の実現に向けて日本の課題感が浮き彫りとなる一方で、目標9の「産業と技術革新の基盤をつくろう」のように、高い評価を得ている目標もあります。また、少し前の時代に比べて昨今では環境保全に対する人々の関心が高く、積極的に幅広い分野で環境目標の達成に向けた取り組みが進められていることもわかります。

そこで本コンテンツでは、これらの環境トピックスやニュースで度々用いられる「サステナビリティ」と「SDGs」のの違いについて、まずは用語解説とそれぞれの用語が誕生した背景を確認していきます。その後、日本経済団体連合会(以降、経団連と記す)がこれらの2つの用語に対して、具体的にどのようなアプローチを行っているのか、「サステナビリティ」への捉え方と「SDGs」への取り組み姿勢という視点から考え、最後に、経団連会員企業による「SDGs」への取り組み実態について紹介していきます。

(※1)Sustainable Development Solutions Networkの略で、国際的な研究組織。国連事務総長の後援の下、世界中の大学、シンクタンク、国立研究所と協働し、持続可能な開発に関わる重要課題へのグローバルおよびローカルな解決策を特定することを目的として発足している。

「サステナビリティ」と「SDGs」の違いについて

まずは、用語の違いから確認していきます。サステナビリティとは、「持続可能性」を意味する用語で、環境や社会、経済などが持続的に発展することを目指す考え方や取り組みを指しています。一方で、SDGsとは、Sustainable Development Goalsの略で、「持続可能な開発目標」を意味する用語となっています。つまり、前者は考え方について、後者は具体的な目標について示しています。

用語意味概要
サステナビリティ持続可能性持続可能な発展を目指すという考え方。
SDGs持続可能な開発目標発展に際し掲げた具体的な目標。

次に、それぞれの用語が誕生した歴史的な背景を確認していきます。

サステナビリティ

①概念の起源

「サステナビリティ(Sustainability)」という言葉の概念は、18世紀のドイツにおいて森林資源の管理をめぐる議論から生まれたとされています。ハンス・カール・フォン・カロヴィッツが1713年に出版した『持続可能な森林管理について』で、「資源の利用は再生可能な範囲内で行うべき」という考え方が提示されたことが、サステナビリティ概念の起源であると考えられています。

②国際的な浸透に至るまでの経緯

20世紀の後半になると、地球規模での環境問題が深刻化し、サステナビリティに関する議題が様々な国際会議の場であがるようになりました。また、21世紀に入り企業や消費者の間でもサステナビリティが注目されるようになると、ESG投資(※1)が拡大し、サステナブルなビジネスモデルの構築が求められる時代に移行しました。

年代イベント概要
1972年ストックホルム国連人間環境会議人類と環境の調和について初めて国際的に議論され、環境保護の重要性が強調されました。
1987年ブルントラント委員会報告書『Our Common Future』この報告書で「持続可能な開発(Sustainable Development)」という言葉が登場しました。持続可能な開発は「将来世代のニーズを満たす能力を損なうことなく、現在の世代のニーズを満たす開発」と定義され、広範な支持を受けました。
1992年リオ地球サミット「アジェンダ21」が採択され、環境と経済の調和を目指す具体的な行動計画が提示されました。
2015年パリ協定地球温暖化対策としての国際的な合意が形成され、再生可能エネルギーや環境負荷低減の必要性が強調されました。

SDGs

①国際的な開発目標の変遷

SDGsの前身は、2000年に国連で採択された「MDGs(ミレニアム開発目標)」です。MDGsでは主に発展途上国の支援を目的に、8つの具体的な目標(貧困削減、教育の普及、感染症対策など)が設定されました。MDGsは2015年までの15年間に一定の成果を上げましたが、先進国・途上国双方に関わる問題が十分に網羅されていないという課題があったため、SDGsへの舵切が検討されました。

②SDGs誕生のきっかけと採択までの経緯

年代イベント概要
2012年リオ+20サミット(国連持続可能な開発会議)持続可能な開発に向けた次なる国際的枠組みの必要性が確認されたことを受けて、SDGs策定のための議論が開始されました。
2015年国連総会
『我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ』
17の持続可能な開発目標(SDGs)と169のターゲットからなるアジェンダが採択されました。これは先進国と途上国の区別なく、全世界で共有されるべき目標となりました。

③SDGsの特徴と国際社会への影響

■普遍性:MDGsが途上国支援に焦点を当てたのに対し、SDGsは先進国も含む全世界共通の目標としています。

■統合性:社会的課題と環境的課題を分断せず、経済、社会、環境課題を相互に関連づけ、包括的な目標設定を通して解決するアプローチが求められています。

■パートナーシップ:政府だけでなく、企業、NGO、地域社会など多様な関係者による協力・連携が求められています。

このように、SDGsは現在も国際的な枠組みとして多くの国や企業で採用されており、持続可能な未来を目指す重要な指針として位置づけられています。

(※1)環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の観点から企業の取り組みを評価し、投資する手法。

経団連の「サステナビリティ」への捉え方と「SDGs」への取り組み姿勢について

経団連は、持続可能な社会の実現を目指し、SDGsを企業活動の中心に据えた取り組みを進めています。その中でも特に、「Society 5.0」の実現を通じてSDGsの達成を促進することを基本方針としています。つまり、目指すべき社会の姿は「Society 5.0」、それを実現するために掲げる目標が「SDGs」、目標を達成させる上で根底にある考え方(又は、目標を達成した際に実現できる状態)が「サステナビリティ」となっています。

内閣府のHPでは、「Society 5.0」について、”サイバー空間とフィジカル(現実)空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会”と定義づけられています。ここでは、経団連による「SDGs」の達成に向けた具体的な取り組み内容について、いくつか紹介していきます。

Society 5.0で実現する社会

内閣府HP:Society 5.0とは
© https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/society5_0-1.pdf

  • 「企業行動憲章」の改定(2017年11月)/ 「企業行動憲章実行の手引き」の全面改訂(2022年12月)
    経団連は、企業倫理や社会的責任には十分配慮しつつ、それらを超えて持続可能な社会の実現を牽引する役割を担うことを明示する形で、「企業行動憲章」をSociety 5.0の実現を通じたSDGsの達成を柱としたものに改訂しています。改訂の主なポイントは、以下の5点です。

—–

■ イノベーションを発揮して、持続可能な経済成長と社会的課題の解決を図ることを新たに追加(第1条)
■  人権の尊重を新たに追加(第4条)
■  働き方の改革の実現に向けて表現を追加(第6条)
■ 多様化・複雑化する脅威に対する危機管理に対応(第9条)
■ 自社・グループ企業に加え、サプライチェーンにも行動変革を促す(第10条)

経済産業省:第6回 繊維産業のサステナビリティに関する検討会 なぜサステナビリティが求められているのか、より引用

—–

また、経団連会員企業が「企業行動憲章」の精神を自主的に実践していく上で必要と思われる取り組みや、参考になると思われる項目を例示するものとしている「企業行動憲章実行の手引き」に関しても全面改訂が行われています。改訂の背景としては、近年の世界的なパンデミックや気候変動、地政学的リスクなどの複数の危機的状況への対応が必要になったことや、SDGsの企業経営への組み込みが進み金融市場でもその重要性が高まっていることを受けて、企業の行動指針もそれらの環境に適合させる必要が生じたことなどが挙げられます。

Society 5.0とSDGsの統合

経団連は、「Society 5.0 ―ともに創造する未来―」を行動宣言として掲げ、デジタル革新と多様な人々の想像・創造力の融合によって社会の課題を解決し、価値を創造することを目指しています。そのため、従来の情報社会(Society 4.0)とは異なり、技術革新を通じて持続可能な未来を築くための取り組みが進められており、企業はデジタル技術を活用して、エネルギー効率の向上や労働生産性の向上、環境負荷の低減を図ることが求められています。例えば具体的な施策として、スマートシティの開発、再生可能エネルギーの活用、AIを活用した働き方改革などが挙げられます。

Society5.0の図解

内閣府HP:Society 5.0とは
© https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/society5_0-1.pdf

「。新成長戦略」の発表(2020年11月)

この戦略では、2030年に向けSociety 5.0を実現することで、「サステナブルな資本主義」の確立を目指すことが明示されています。ここでいう「サステナブルな資本主義」とは、短期的な利益追求ではなく、環境・社会・ガバナンス(ESG)を重視した長期的な成長戦略を指しています。つまり、企業は利益を追求するだけでなく、環境への配慮や社会的課題の解決に積極的に取り組むことで、持続可能な経済を実現することが求められており、世界的な潮流となりつつあるESG投資の拡大と日本企業の国際競争力の向上が意識され策定された成長戦略となっています。因みに、戦略名の「。」は、これまでの成長戦略の路線に一旦終止符「。」を打つ、という思いがこめられています。

このように、経団連はSDGsの達成に向けて、「企業行動憲章(実行の手引き)」の改定やSociety 5.0の推進、「。新成長戦略」を通じて、短期的な利益ではなく長期的な価値を創造する社会の実現を目指す方針を示しています。

経団連会員企業による「SDGs」への取り組み実態について

経団連は、2023年8月から9月にかけて、「第3回企業行動憲章に関するアンケート」を実施し、その結果を2024年1月16日に公表しています。 この調査は、2022年12月に全面改訂した「企業行動憲章実行の手引き」の実践状況や、「Society 5.0 for SDGs」および「ビジネスと人権」に関する取り組みや課題、事例等を把握し、企業行動憲章に対する会員企業の一層の理解促進、実践につなげることなどを目的としています。

(本調査結果は、経団連がHPで公表しているデータをもとに、以下にまとめています。)

回答結果:
<調査対象>経団連の全会員企業1,539社
<企業数> 286社
<回答率> 19%
<業種>製造業:約49%、非製造業:約51%
<従業員規模>1,000人以上の企業が全体の78%

企業行動憲章の実践状況

「企業行動憲章実行の手引き」にある51項目のうち、過去3年において最も重視した項目、また今後3年先において最も重視する予定の項目いずれも、「グリーントランスフォーメーション(GX)の推進」が最多となっており、次が「多様な人材の就労・活躍」という結果になりました。その他に、今後3年先において最重視する予定の項目としては、「人権デュー・ディリジェンス(DD)の適切な実施」や「デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進」、「従業員のキャリア形成・能力開発」などが挙げられ、気候変動問題や、人材育成および人的資本経営に関する課題、人権の問題への対応に関心が高いことが明らかになっています。

Society 5.0 for SDGsへの取り組み状況

SDGsを活用した取り組みでは、回答企業の80%以上が「優先課題の決定」、「事業活動をSDGsの目標にマッピング」、「報告とコミュニケーション」を実施しています。特に「報告とコミュニケーション」に取り組む企業は、前回調査(2020年)の31%から大幅に増加しており、金融資本市場をはじめ各ステークホルダーにおける意識の高まりを背景に、情報開示および幅広いステークホルダーとの建設的対話(企業行動憲章第3条)を重視するとともに、サステナビリティを経営に組み込む(同第10条)企業が増えていることが分かります。また、SDGsに貢献する代表的な事業で、かつ評価を実施している取り組みについて、208社から計421事例が寄せられており、各社によりSDGsへの積極的な取り組みが行われている状況です。

人権に関する取り組み状況

回答企業の76%が、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づく取り組みを進めており、前回調査(2020年)の36%から大幅に増加して、76%という結果になりました。それに加え、国内外のサプライチェーンにおける人権DDの取り組みについては、136社から計191事例が寄せられています。

これらの調査結果からも、日本企業が持続可能な社会の実現に向けて、GXやDXの推進、多様な人材の活躍促進、人権尊重の取り組みを強化していることが明らかになっています。特に、「SDGs」の目標を経営に統合し、具体的な行動を通じて社会的課題の解決に貢献する姿勢が顕著に現れ始めているのが特徴的です。

まとめ

本コンテンツでは、「サステナビリティ」と「SDGs」の違いについて、用語そのものの解説から、経団連によるこれらの捉え方や取り組み実態までを紹介してきました。

「サステナビリティ」を重要事項と捉え、イノベーションの活用や人権の尊重、働き方改革、リスク管理、サプライチェーンの行動変革などといった形で「SDGs」への取り組みを行うことは、経団連に所属するような大企業やグローバル企業に限らず、多くの企業が自社の社会的責任を果たす上で重要です。今後も引き続き、日本企業がSDGsの達成にどのように貢献し、持続可能な経済発展を実現していくのかに注目が集まります。

本コンテンツ、並びにCO2排出量の算定に関しご質問がございましたら、弊社までお問い合わせ下さい。

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