系統用蓄電池ビジネスとは? 最新の電力系統ビジネスの現状を解説!

系統用蓄電池ビジネスとは? 最新の電力系統ビジネスの現状を解説!
基礎知識

再生可能エネルギーの導入拡大は、日本のエネルギー政策における重要な柱として位置付けられています。政府はエネルギー基本計画において、再生可能エネルギーを主力電源として最大限導入していく方針を示しています。一方で、太陽光発電や風力発電は、天候や自然条件によって出力が変動しやすく、時間帯や季節による発電量の偏りが生じるという特性を有しています。

このような変動性の高い電源が電力系統に大量に接続されることで、電力の需給バランスを常に一致させるという電力系統運用上の基本的要請への対応が難しくなることが指摘されています。資源エネルギー庁の検討会資料では、需給調整力や系統の柔軟性の確保が、再生可能エネルギーの導入拡大を進める上で不可欠であると整理されています。

こうした背景のもと、電力系統の安定的な運用を支える手段の一つとして、蓄電池の活用が政策的に位置付けられています。中でも、電力系統に直接接続され、系統全体の需給調整や安定化を目的として運用される系統用蓄電池は、再生可能エネルギーの導入拡大を下支えする基盤的な設備として、位置付けられているのです。

本コンテンツでは、その最新の系統用蓄電池ビジネスについて現状から好例まで紹介していきます。

資源エネルギー庁 エネルギー基本計画PDF
https://www.enecho.meti.go.jp/category/others/basic_plan/

系統用蓄電池とは?

系統用蓄電池とは、太陽光発電などに直接つなぐ蓄電池とは違い、電力網(系統)全体に接続される蓄電池です。特定の発電所の変動だけでなく、電力システム全体のバランスを取るために使われます。

系統用蓄電池の定義

系統用蓄電池は、電力系統に直接接続され、電力の充放電を行うことで、系統全体の需給バランス調整や安定化に寄与する蓄電設備として整理されています。これは、特定の需要家の電力使用を目的とする家庭用蓄電池や事業所用蓄電池とは異なり、電力系統全体を対象として機能する点に特徴があります。

また、再生可能エネルギー発電設備に併設される蓄電池については、発電設備と一体的に運用される場合が多い一方で、系統用蓄電池は独立した設備として系統に接続されることが前提とされています。資源エネルギー庁や補助事業の公募要領では、系統用蓄電池を「電力系統に直接接続される電力貯蔵設備」として定義し、その接続形態や運用条件を明確に整理しています。

このように、系統用蓄電池は、用途や制度上の位置付けにおいて他の蓄電池と区別され、公的制度の中で明確に定義された概念として扱われています。定義の明確化は、支援制度や市場制度との整合性を確保する上でも重要な要素とされています。

一般社団法人環境共創イニシアチブ
令和7年度再生可能エネルギー導入拡大・系統用蓄電池等電力貯蔵システム導入支援事業費補助金募集要項 より参照
https://sii.or.jp/chikudenchi07/uploads/R7kess_kouboyouryou.pdf

資源エネルギー庁 系統用蓄電池の現状と課題を元に筆者作成

系統用蓄電池の基本的な役割

系統用蓄電池の基本的な役割は、電力需給の変動に対応し、電力系統の安定的な運用を支えることにあります。実は電力は需要と供給を常に一致させる必要があり、需給の不一致が生じた場合には、系統の安定性に影響を及ぼすおそれがあります。資源エネルギー庁の検討会資料では、再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、こうした需給調整の重要性が一層高まっていると述べられています。

系統用蓄電池は、電力の供給が需要を上回る時間帯に充電を行い、需要が供給を上回る時間帯に放電を行うことで、需給バランスの偏りを緩和する機能を担います。これにより、短時間の出力変動や日内の需給変動への対応が可能となり、電力系統の運用を補完する役割を果たします。

また、公的文書では、系統用蓄電池が再生可能エネルギーの出力抑制の回避や、電力系統全体の柔軟性向上に資する設備として位置付けられています。このように、系統用蓄電池は電力システムの安定性確保に寄与する重要な役割を担うものとして整理されています。

資源エネルギー庁 系統用蓄電池の現状と課題 より参照
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/pdf/062_05_00.pdf

法制度上の位置付け

系統用蓄電池は、電気事業法をはじめとする制度の中で、その位置付けが整理されています。従来、蓄電池は主として需要側設備として扱われることが多く、制度上の位置付けが必ずしも明確ではありませんでした。

しかし、再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、蓄電池が電力系統全体に与える影響が大きくなったことから、制度的な整理が進められてきました。電気事業法の改正により、一定規模以上の蓄電池については、放電時の行為が発電として整理されることとなりました。

これにより、系統用蓄電池は、電力を供給する主体として発電事業の枠組みの中に位置付けられています。資源エネルギー庁の制度説明資料では、蓄電池が電力市場に参加し、卸電力市場や需給調整に関わることが可能となる点が示されています。

このような制度整理により、系統用蓄電池は単なる補助的設備ではなく、電力システムの一部を構成する設備として法制度上明確に位置付けられています。

資源エネルギー庁 系統用蓄電池の現状と課題 より参照
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/pdf/062_05_00.pdf

電力貯蔵装置(蓄電池)・蓄電所を設置する場合の手引き
https://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/sangyo/electric/detail/denryokucyozousouchi.html

系統用蓄電池ビジネスの主な収益化モデル

系統用蓄電池ビジネスの主な収益化モデルは、以下の3つの電力取引市場を活用したものです。蓄電事業者は、これら複数の市場を組み合わせることで収益の最大化を図ります。

卸電力市場(JEPX)における「値差取引(アービトラージ)」

卸電力市場は、実際に発電された「電力(kWh)」を売買する市場です。

  • 収益の仕組み
    電力需要が低く価格が安い時間帯に電力を購入して充電し、需要が高まり価格が上がった時間帯に放電(売電)することで、その価格差(値差)から利益を得ます。
  • 特徴
    最も一般的な取引ですが、収益を最大化するには電力価格や需要を予測する高度な運用技術が求められます。

需給調整市場における「調整力(ΔkW)の提供」

需給調整市場は、電力の周波数を一定に保つなど、需給バランスを一致させるための「調整力」を取引する市場です。

  • 収益の仕組み
    一般送配電事業者の要請に応じて電力を供給できる状態を維持する対価(待機報酬・容量報酬)と、実際に発動指令を受けて放電した際の対価(応動報酬)の2つを得ることができます。
  • 特徴
    蓄電池は瞬時に充放電を切り替えられるため、応動時間の短い「一次調整力」などの商品に適しており、高い稼働率で収益を上げることが可能です。

容量市場における「供給力(kW)の提供」

容量市場は、将来(原則4年後)の電力供給力をあらかじめ確保しておくための市場です。

  • 収益の仕組み
    蓄電池の出力を「発電できる能力(kW価値)」として提供し、その対価(固定的な報酬)を得ることで、中長期的な収益を確保します。
  • 長期脱炭素電源オークション
    新規投資を促す仕組みとして、落札した事業者が原則20年間にわたり安定的な容量収入を得られる制度も開始されています。

これらの市場で収益を最大化するためには、AI技術を活用した充放電の最適制御や、市場価格を予測するエネルギーマネジメントシステム(EMS)の活用が極めて重要となります。多くの場合、アグリゲーターと呼ばれる専門事業者が運用を代行することで、複雑な市場取引への対応を行っています。さらに系統用蓄電池の運用においては、アグリゲーターによってサービスや運用支援の内容が大きく異なります。具体的には以下のような違いがあります。

  • 取引する電力市場の種類(容量市場、需給調整市場、卸電力市場など)
  • 運用戦略やアルゴリズムの最適化能力
  • リアルタイム監視・制御システムの精度
  • 収益予測や分析レポートの質
  • サポート体制やノウハウの蓄積度

適切なアグリゲーター選びが収益を左右することになります。

系統用蓄電池の収益性は、アグリゲーターの運用能力に大きく左右されます。経験豊富なアグリゲーターは、市場価格の変動を予測し、最適なタイミングで充放電を行うことで、収益を最大化できます。

逆に、ノウハウの乏しいアグリゲーターを選んでしまうと、せっかくの設備投資が十分な収益につながらない可能性もあります。

アグリゲーター選定のポイント

  • 技術力と運用システムの先進性
  • 対応PCS/EMS範囲
  • O&M事業者との連携
  • サポート体制の充実度
  • 電力市場での取引実績と運用年数

適切なアグリゲーターを選定することが、系統用蓄電池で安定した収益を得るための大切な第一歩となります。

Sustechでは、豊富な運用経験のもと、お客さまのご状況やご要望に合わせて適切なご提案をさせていただきます。まずは収益シミュレーションからでもお気軽にご依頼ください。

蓄電池アグリゲーション

公的支援制度の概要

系統用蓄電池の導入を促進するため、国は補助金制度を通じた支援を実施しています。代表的な制度として、一般社団法人環境共創イニシアチブが執行する系統用蓄電池等導入支援事業があり、電力系統に直接接続される蓄電池設備が補助対象として整理されています。

公募要領では、対象となる設備の要件や接続形態、出力規模などが明確に示されており、系統安定化や需給調整への貢献が求められています。また、補助制度は、系統用蓄電池の初期投資負担を軽減することを目的として位置付けられています。

このような公的支援制度は、政策目標である再生可能エネルギーの導入拡大と電力系統の安定化を同時に進めるための手段として整理されています。補助制度の設計においては、公的文書に基づき、設備の役割や位置付けが明確に示されています。

一般社団法人環境共創イニシアチブ
令和7年度再生可能エネルギー導入拡大・系統用蓄電池等電力貯蔵システム導入支援事業費補助金募集要項 より参照
https://sii.or.jp/chikudenchi07/uploads/R7kess_kouboyouryou.pdf

系統用蓄電池を巡る市場環境

政府発行の資料では、再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、電力システムにおける需給調整力の重要性が高まっていることが繰り返し指摘されています。太陽光発電や風力発電は出力変動が大きく、導入量の増加に応じて、電力系統の柔軟性を確保する必要性が顕在化しています。こうした背景のもと、系統用蓄電池は、電力系統に直接接続され、需給バランスの調整や系統安定化に寄与する設備として、公的検討会や政策文書の中で位置付けられています。

また、電力市場制度の整備が進む中で、卸電力市場や需給調整市場など、複数の市場において調整力が取引される仕組みが構築されてきました。公的文書では、系統用蓄電池がこれらの市場に関与し得る設備として整理されており、電力システムの一部を構成する存在として制度的な位置付けが明確化されつつあります。このように、市場環境の変化と制度整備の進展が、系統用蓄電池を取り巻く状況を大きく変化させています。

資源エネルギー庁 エネルギー基本計画PDF
https://www.enecho.meti.go.jp/category/others/basic_plan/

資源エネルギー庁 定置用蓄電システム普及拡大検討会資料第1回検討会資料4
https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/storage_system/2025_001.html

資源エネルギー庁 第4回定置用蓄電システム普及拡大検討会 収益性・市場制度の整理 資料3-1/3-2
https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/storage_system/2024_004.html

第4回検討会「収益性・市場制度の整理」資料3-1/3-2
https://sii.or.jp/chikudenchi07/public.htm

系統用蓄電池の接続検討受付と接続契約の出力容量

自然エネルギー財団 系統用蓄電池事業の可能性現状と課題
https://www.renewable-ei.org/pdfdownload/activities/REI_Grid-ScaleBatteryStorage_2507.pdf

系統用蓄電池事業の運開状況と事例

2023年から系統用蓄電池事業は次々と運開しています。蓄電所を所有する事業者は、大手電力会社、自然エネルギー発電事業者、新電力、これらを手がけるエネルギー企業や商社など多岐にわたります。1社単独で事業の全ての機能を担う例は少なく、市場運用はアグリゲーターに、EPC(設計・調達・建設)はEPC事業者に委託する例が多くなっています。

これはリスク分散やノウハウの補完のためと思われますが、所有者が複数の例もあります。蓄電池のメーカーは国内メーカーではGSユアサとパワーXが多く見られます。地域的には、出力抑制率が高い九州電力管内や系統連系の要件とされてきた北海道電力管内が多くなりましたが、2024年以降は東北電力管内や東京電力管内も増えています。

なお、伝統的なエネルギー貯蔵の手段である揚水の落札容量は361MWでした。

福岡県の田川蓄電所

NTTアノードエナジー、九州電力、三菱商事の3社が所有者です。令和3年度補正予算「再生可能エネルギー導入加速化に向けた系統用蓄電池等導入支援事業」から1億1,705万円の補助金交付を受けており、遠隔地にある太陽光発電所との同期運転も行なっているため、自然エネルギー併設型に近い性質を持っています。EPCはエクシオグループ、リチウムイオン電池はGSユアサ製です。

和歌山県の紀ノ川蓄電所

大規模な事例としては、和歌山県の紀ノ川蓄電所が知られています。関西電力とオリックスの合弁事業であり、48MW/113MWhは国内最大級です。関西電力子会社のアグリゲーターであるe-flowが市場運用を行い、オリックスはO&M(運転・管理)を担当しています。本件も、再生可能エネルギー導入加速化に向けた系統用蓄電池等導入支援事業から25億円の補助金交付を受けています。

北海道の北豊富変電所

特に大規模なものとして、北海道の北豊富変電所の240MWが目を引きます。これは、道北の風力発電のために建設された北海道北部風力送電線に付随する蓄電所であり、経産省の実証事業となっています。元々は北海道電力ネットワークの出力変動緩和要件に基づいて設置されましたが、同要件は廃止されたことから、系統用蓄電池としての事業展開が望まれます。

自然エネルギー財団 系統用蓄電池事業の可能性現状と課題
https://www.renewable-ei.org/pdfdownload/activities/REI_Grid-ScaleBatteryStorage_2507.pdf

現状の課題と今後の方向性

公的な検討会では、系統用蓄電池の導入拡大に向け、複数の課題が整理されています。
主な課題として、まず系統用蓄電池の事業性の確立が挙げられています。具体的には、初期投資を中心とした導入コストの大きさや、卸電力市場や需給調整市場など既存の市場制度との関係性について、継続的な検討が必要とされています。

次に、市場制度との整合性が課題として指摘されています。系統用蓄電池は、卸電力市場、需給調整市場など複数の市場に関与する可能性があることから、各市場のルールが相互に矛盾せず、適切に機能するよう制度設計を行う必要性が示されています。

さらに、系統接続に関する手続きやルールについても課題が整理されています。接続申込みや技術要件に関する手続きが複雑である点が指摘されており、導入を円滑に進める観点から、手続きや運用ルールの改善が求められています。

今後の方向性としては、これらの課題を踏まえ、制度面および市場環境の整備を段階的に進めることが示されています。政府は、電力制度検討会などの場を通じて、系統用蓄電池が電力システムの中で安定的に機能するよう、引き続き制度の見直しや検討を行う方針を示しています。

経済産業省 2024年度第4回 定置用蓄電システム普及拡大検討会 資料3-1,2
https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/storage_system/2024_004.html

2024年度第2回 定置用蓄電システム普及拡大検討会(開催資料一覧)資料3
https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/storage_system/2024_002.html

2025年度第1回 定置用蓄電システム普及拡大検討会(開催資料一覧)資料4
https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/storage_system/2025_001.html

まとめ

系統用蓄電池は、再生可能エネルギーの主力電源化を支える重要なインフラとして明確に位置付けられています。再生可能エネルギーの導入拡大に伴う需給調整や系統安定化といった課題に対し、系統用蓄電池は有効な対応手段の一つとして政策的に整理されています。
また、法制度や支援制度の整備が進められる中で、系統用蓄電池は電力市場に参加する設備としての位置付けも明確になってきました。これにより、電力システム全体の中で果たす役割が制度的にも整理されています。
今後のエネルギー政策においては、送配電網の整備とあわせて、系統用蓄電池の活用が重要な施策として位置付けられ、引き続き検討と導入が進められていくでしょう。

Sustechでは、豊富な運用経験のもと、お客さまのご状況やご要望に合わせて適切なご提案をさせていただきます。まずは収益シミュレーションからでもお気軽にご依頼ください。

蓄電池アグリゲーション

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