なぜCO2を削減?基本的な知識から具体的な手順、利用できる補助金などまでを徹底解説!
近年、地球温暖化の進行を抑えるためのCO2削減が世界的な課題となっています。そのため、様々な分野の企業がCO2削減を求められるようになりました。本記事では、CO2削減の基本知識から企業が実践すべき手順、国内外の成功事例、さらには関連する補助金や税制優遇措置に至るまで、CO2を削減するための知識を網羅的に解説します。企業が果たすべき役割とアクションプランについても触れ、未来を見据えた環境経営戦略の展望を提供します。それでは、地球環境を守るための一歩を踏み出しましょう。
なぜCO2を削減?地球環境へどんな影響があるのか
温室効果ガスとしてのCO2の役割
地球の気候システムにおいて、CO2(二酸化炭素)は重要な役割を担っています。CO2は、太陽からの熱を地表面で吸収し、それを宇宙空間に放出する前に一時的に保持することで、地球を温室のように暖かく保つ「温室効果ガス」の一種です。しかし、産業革命以降、化石燃料の大量燃焼などにより排出されるCO2が増加し、自然界のバランスを崩し温室効果を強めることで、地球温暖化の主要な原因となっています。
気候変動への影響とそのリスク
地球温暖化の進行は、気候変動に繋がります。気候変動は、異常気象による干ばつや洪水などの災害、海面上昇、生態系の変化など、多岐にわたる影響を及ぼします。これらの影響は、人間の生活環境や経済活動に直接的な打撃を与え、食料安全保障や健康問題のリスクを増大させることが懸念されています。CO2削減は、これらのリスクを軽減し、持続可能な地球環境を守るために不可欠です。
CO2削減に向けた動き
経済界でのCO2削減の動き
現在、CO2削減を訴えているのは政府の環境省や専門家だけではありません。経済界までもが様々なリスクに備えCO2を削減するよう呼びかけています。地球温暖化が深刻な問題として広く認識されるようになったのは、1980年代後半であり、当初地球温暖化対策に取り組んでいたのは環境問題に関する国際機関や先進国政府、NGOなどだけでした。日本の一般企業に関しては初期投資がかかることもあり、CO2削減に向けた動きは一部に留まっていましたが、最近は温暖化による経済界へのリスクも指摘されるようになりました。異常気象によるサプライチェーンの寸断や、化石燃料の枯渇などにより、経済活動が継続できなくなる事態も考えられます。そのため環境面や社会的、政治的な要素を考慮したESG投資も活発になってきているのです。今では、広い分野の企業がCO2削減を目指すことが求められています。
国際社会でのCO2削減目標
国際社会では、パリ協定をはじめとする多国間の合意により、CO2を含む温室効果ガスの排出削減目標が設定されています。これにより、各国は国内法や政策を通じて削渲目標達成に向けて動いており、企業にもそれに沿った行動が求められているのです。
パリ協定
2015年12月に、パリで開催された気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)で採択され、翌2016年に発効しました。主な内容は以下の通りです。
【地球温暖化の抑制目標】
産業革命以前からの世界の平均気温上昇を2℃を十分に下回るよう抑える
更に1.5℃に抑える努力を追求する
【各国の排出削減目標(国別目標)】
すべての国が5年ごとに排出削減目標を提出・更新する義務
先進国は引き続き主導的な役割を果たす責務
【排出量の定期報告と5年ごとの見直し】
各国は排出量などを報告し、専門家による評価を受ける
5年ごとに世界全体の進捗を確認し、必要に応じて目標を引き上げる
【途上国への支援】
先進国は気候変動対策に必要な資金援助などの支援を行う
パリ協定は、現在195か国と欧州連合(EU)が批准しています。米国は世界2位の排出国でありますが、トランプ政権になった2017年、パリ協定からの離脱を表明し、2020年には離脱が実現しました。バイデン政権になった2021にはパリ協定へ復帰しましたが、主要国の政治が世界全体の環境問題に影響することが懸念されるきっかけとなった出来事でした。
日本が掲げる目標
もちろん日本もパリ協定に批准していて、その中で以下の目標を掲げています。
【2030年度目標】
・2013年度比で46%削減
【2050年目標】
・2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、つまり「2050年カーボンニュートラル」の実現を目指す。
2030年度目標の46%削減は、当初の2013年度比26%削減から大幅に引き上げられた目標です。産業・運輸・民生(業務・家庭)などの全ての分野で対策を講じる計画です。
2050年カーボンニュートラルに向けては、再生可能エネルギーやアンモニア・水素などの新たなエネルギー源の活用、CO2の回収・利用・貯留(CCUS)、原子力の活用などの対策を組み合わせる方針です。
企業が実践すべきCO2削減のステップ
現状分析と目標設定
企業がCO2削減に取り組む際には、まず現状の排出量を把握し、科学的根拠に基づいた目標を設定することが重要です。これにより、効果的な削減策を計画し、環境へのコミットメントを明確にすることができます。GHGプロトコル(温室効果ガス排出量の算定・報告に関する国際的な基準)に基づいてCO2を削減するためには、サプライチェーン上で発生する温室効果ガスをScope1、Scope2、Scope3に分けて排出量を算定する必要があります。Scope3に関しては製品やサービスを消費者が利用した際の排出や、従業員の通勤の際の自動車利用による排出なども含まれるため、算定がかなり難しいものとなります。現在では、これを容易に算定し削減に繋げられる脱炭素化サービスが展開されているので、企業がそれぞれに合ったものを利用することが一番の近道となるでしょう。
エネルギー効率の改善と省エネ対策
エネルギーの使用効率を上げることは、CO2削減に直結します。省エネ設備の導入や運用の最適化、従業員の意識改革を通じて、無駄なエネルギー消費を削減することが可能です。エネルギー効率を高めるための主な取り組みは以下のようなものがあります。
省エネ機器・設備の導入
- 高効率の産業機器、照明、空調設備などを導入する
- 未利用エネルギーを回収する仕組み(コージェネレーションなど)を設ける
生産プロセスの改善
- 工程の見直しや最適化によりエネルギー使用量を低減する
- 製品の軽量化によりエネルギー消費を抑える
建物の断熱性能向上
- 高断熱窓、断熱材の使用により、暖房・冷房負荷を低減
エネルギーマネジメントシステムの構築
- energy management systemを導入し、エネルギー使用量を可視化・改善
エネルギー効率が高まれば、同じ活動からの排出量が低減できます。生産性や経済性の向上にもつながるため、企業の経営的メリットも大きくなります。自治体によっては、エネルギー効率向上を支援する施策を打ち出しているところもあるため、初期費用を抑えつつエネルギー効率の良いサプライチェーンへと移行することもできるでしょう。
再生可能エネルギーへの移行
化石燃料に代わる再生可能エネルギーへの移行は、長期的なCO2削減において不可欠です。太陽光発電や風力発電などのクリーンエネルギー源への投資計画を立て、段階的に移行を進めることが重要です。さらに、自家発電をすれば一部を売却し収益化することも可能になります。そのほかにも、電力会社から再生可能エネルギー由来の電力メニューを選択して購入したり、複数企業でコンソーシアムを組み、再生可能エネルギー発電所から電力を共同調達するという選択肢もあります。設備導入に対する政府の補助金制度を利用し、再生エネルギーへ転換することで企業のESG経営やサステナビリティ戦略にも役立てていきましょう。
ステークホルダーへの報告と連携
CO2排出量の報告は、ステークホルダーへの情報開示としても重要です。GHGプロトコルに則った報告を行うことで、企業の透明性が高まり、信頼性のあるデータに基づいた環境戦略が立てられます。さらに、取引先や顧客、地域社会などのステークホルダーと連携することで、より大きなCO2削減を実現できます。共同プロジェクトや情報共有を通じて、相乗効果を生み出しましょう。
継続的なモニタリングとレビューのプロセス
CO2削減は一度きりの取り組みではなく、継続的なモニタリングとレビューが必要です。定期的なデータ分析を通じて、目標に対する進捗状況を把握し、必要に応じて削減計画を見直すことが大切です。以下のような方法をとれば、PDCAサイクルが確立し、継続的な改善につなげることができるでしょう。
1.温室効果ガス排出量算定・報告システムの構築
- GHGプロトコルに基づいた算定・報告の基準やツールを導入する
- 排出データを一元的に収集・管理できる体制を整備する
2.内部監査の実施
- 各事業所や部門から報告されるデータの正確性を確認
- データ収集プロセスや算定方法の適切性を定期的に監査する
3.第三者機関による検証
- 信頼性を高めるため、外部の専門家や認証機関による検証を受ける
- データの透明性と説明責任を果たす
4.エネルギーマネジメントシステムの活用
- ISO 50001(エネルギーマネジメントシステムに関する国際規格)に基づくエネルギー消費量の継続的な測定・記録
- 省エネ活動の実施とPDCAサイクルでの改善
5.AIやIoTを活用した自動計測
- 生産ラインや設備からリアルタイムでデータを収集
- デジタル技術の活用により、高い精度と効率化を実現
6.サプライチェーン全体への拡大
- Scope3に相当する間接排出もバリューチェーン全体でカバー
- サプライヤーとのエンゲージメントを通じて算定範囲を広げる
従業員への環境教育と意識向上
企業内部でのCO2削減を推進するためには、従業員一人ひとりの環境意識を高めることも効果的です。そのためには、環境教育プログラムを実施し、環境活動への理解を促していく必要があります。さらに環境関連資格の取得支援、環境貢献度に応じた報奨金や表彰制度を設けることで環境活動に対する従業員の自発的な行動を促進できるでしょう。
CO2削減の実例を紹介
国内企業による削減施策
日本の企業では、既に以下の企業を始めとする多くの企業が独自の技術開発やイノベーションを通じて、効果的なCO2削減を実現しています
【製造業】
- トヨタ自動車…ハイブリッド車の開発推進、工場での徹底した省エネと再生可能エネルギー導入
- パナソニック…家電製品の省エネ性能向上、リユース・リサイクル活動の強化
- 日立製作所…高効率インダストリー製品の開発、CO2排出量の把握・分析体制構築
【電力・エネルギー業界】
- 東京電力…火力発電所の高効率化、再生可能エネルギー事業への参入
- 出光興産…バイオ燃料製造、CO2回収・貯留(CCS)の研究開発
【食品業界】
- 日本コカ・コーラ…工場のCO2排出削減、再生PETボトルの利用拡大
- サントリー…自社工場での再生可能エネルギー100%化、バイオマス発電の活用
【小売業】
- イオン…店舗の省エネ改修、再生可能エネルギー電力への切り替え
- セブン&アイ…店舗のLED照明化、食品ロス削減による間接排出抑制
中小企業は資金的制約や人的リソースの不足、サプライチェーンでの立場の弱さから、CO2の削減に乗り出すことが大企業より難しいとされていますが、補助金や無料の相談会、セミナーを上手く利用し、カーボンニュートラルへの取り組みを地道に進めていくことが必要となっています。
海外企業の革新的アプローチ
海外では、サステナビリティをビジネスモデルの中核に据え、CO2削減を推進する企業が増えています。さらに、政府による環境規制が先行して導入されており、企業への圧力が強いことや、CO2排出量取引制度が確立し、削減インセンティブが機能していることから、CO2排出削減への取り組みはかなり広範囲に進んでいるようです。革新的な取り組み先進的に取り組む企業を一部紹介します。
【米国】
・アップル…自社運営施設での100%再生可能エネルギー活用、サプライチェーン全体の排出削減推進
・マイクロソフト…データセンターでの再生可能エネルギー100%化、炭素除去技術への投資
・ゼネラル・エレクトリック(GE) …風力発電や水力発電事業への参入、高効率ガスタービンの開発
【欧州】
・フォルクスワーゲン(VW) … 電動車の開発加速、バッテリーリサイクル事業の立ち上げ
・ユンカース…航空機の軽量化や高効率化、代替航空燃料への転換を目指す
・ユニリーバ…製品ライフサイクル全体の排出削減、植物由来原料への切り替え
【中国】
・アリババグループ…データセンターの再生可能エネルギー電力100%化
・小米…スマートホームで省エネを実現、電気自動車の開発計画
ただし近年、日本政府も2050年カーボンニュートラル実現に向けて施策を強化しており、企業の動きも活発化しつつあります。気候変動対策への取り組みは、日本も遅れを取り戻す契機になるとみられています。
CO2削減に関連する支援制度
2024年度(令和6年度)の補助金事業と執行団体一覧
二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金等に係る補助事業の実施にあたり、事業を行う法人(間接補助金の執行団体)について、政府は公募を行い、31の補助事業者(執行団体)を採択しました。
https://www.env.go.jp/page_01352.html
それぞれの企業への用途にあった補助金事業が、企業がCO2削減に取り組む大きなサポートとなるでしょう。
税制上のインセンティブとその活用方法
税制優遇措置も、企業がCO2削減に関連する設備投資や研究開発を行う際の大きなメリットです。以下のような制度を理解し、企業の環境戦略に組み込むことが重要です。
【法人税の特別償却・税額控除】
- 省エネ機器や再生可能エネルギー発電設備を取得した場合に、特別償却(初年度の償却割増し)が認められる
- 再エネ設備の取得額の一定割合を、法人税額から控除できる
【固定資産税の特例措置】
- 省エネ改修を行った建物について、一定期間固定資産税が軽減される
- 再エネ発電設備を設置した場合も、固定資産税が3年間免除される
【エネルギー環境対策特別税制】
- 事業者がリース方式で省エネ設備やCO2排出抑制設備を導入した際、導入費用の一部が軽減される
【税制特例による課税の特例控除】
- 工場や設備について、エネルギー需給構造改革に資する省エネ設備等の改修を行った場合に、所得税や法人税の課税がされない
【地球温暖化対策税の控除】
- CO2排出抑制のための取り組みに対し、地球温暖化対策税を控除できる制度がある
まとめ
企業は単なる利益追求の主体ではなく、社会的責任を果たすべき存在です。環境へのコミットメントを明確にし、持続可能な地球環境の実現に向けて積極的に行動を起こすことが求められます。CO2削減に向けた具体的なアクションプランを策定し、それを実行に移すことから始めていきましょう。そして、補助金などの支援を受けながら、目標設定から実施、モニタリングまでの一連の流れを管理し、環境目標の達成への努力を開示することで消費者の満足度も高まるはずです。