データセンターの再エネ化が求められる現代、 その背景と市場について解説!

今、私たちはデジタルトランスフォーメーション(DX)と生成AIの爆発的な普及により、データ量の増大と処理能力の進化という未曾有の時代を迎えています。このデジタル基盤を支えるデータセンターは、その市場規模を急速に拡大させる一方で、その心臓部たる電力消費量も飛躍的に増加しています。
この莫大なエネルギー需要が、地球規模での気候変動対策と真正面から向き合う、新たな課題を突きつけています。そこで求められているのがデータセンターの再エネ化です。データセンターの運営を持続可能にするため、なぜこれほどまでに再生可能エネルギー(再エネ)の利活用が喫緊の課題とされているのでしょうか。
本コンテンツでは、この問いの背景にある投資家や顧客からの脱炭素圧力、そして国家戦略としてのグリーン化目標を掘り下げ、データセンターが直面する構造的な課題と、その戦略的な変革の必要性を明らかにします。このグリーンな変革こそが、未来のデジタル社会の競争力を決定づける鍵となるでしょう。
目次
データセンターの再エネ化が求められる背景
データセンターは今後、取り巻く環境の変化から、再エネ利活用の促進がデータセンター事業者自身にとって重要となっていくと予想されています。再エネ化を求めると考えられる環境の要因は以下の二点です。
事業環境上の 必要性
- 投資家からの、各事業者のカーボンニュートラル対応に関する圧力は年々強まる
- データセンター顧客側でのScope3排出量把握の取組みが進展、今後プレゼンスを増すと考えられるデータセンターでのGHG排出対策が顧客視点からも重要に
政策面との親和性
- データセンターの省エネ化、再エネ利活用が令和3年6月に閣議決定された「成長戦 略実行計画」における「デジタル社会の共通基盤の整備」の一部として取りあげられる
- データセンターの消費電力増加に伴い、再エネの利活用促進と同時に自給率向上に 関する取り組みを進めることで、国内全体の再エネ率目標達成に寄与する
環境省 データセンターによる再エネ利活用の促進に関する アニュアルレポート
「令和6年度データセンターにおける再エネ活用促進に係る調査検討委託業務」より
https://www.env.go.jp/content/000146667.pdf
データセンターの市場予測
日本国内における各種産業のデジタル化は投資額の視点からも加速度的に進んでいます。デジタル化の基盤たるデータセンターの市場規模も当然伸長し、2019年-2026年で約1.5倍の成長が予想されている状況です。

環境省 データセンターによる再エネ利活用の促進に関する アニュアルレポート
「令和6年度データセンターにおける再エネ活用促進に係る調査検討委託業務」より
https://www.env.go.jp/content/000146667.pdf
国内トラフィックの上昇に加え、国外からの需要も
- 新規の国際海底ケーブル敷設による欧米との接続によるアジアのハブ機能としての期待がある
- 個人情報や金融関連情報等、国外への移転を法的に規制することも議論されている
- このようにデータセンター需要は政治的に後押しされており、デジタル化の進展以上の市場成長の可能性がある
急速な生成AIの利用拡大による、データセンターの演算処理能力需要
- ChatGPTに代表されるような、生成AIの利用が急速に拡大しており、各社による関連サービスの発表が相次いでいる
- 生成AIは、膨大なデータを用いてトレーニングされた基盤モデルを必要とし、サービス提供には多くの計算資源の投入が必 要となることから、需要に対応する形で、各社の関連データセンターへの投資が進んでいる ※将来的なデータ処理需要への対応は、電気代等のコストが安い他国へ流れる可能性もある
- 電力消費による環境負荷を考慮し、一部では再エネ資源の豊富な地方部での投資も見られる状況
データセンターの再エネ化における政策
データセンターの需要がより一層高まると予想される現代において、政府はどのように再エネ化、省エネ化を進めようとしているのでしょうか。
「データセンター需要地までの送電網強化」及び「再エネ賦存地へのデータセンター誘致」
地熱・風力のポテンシャルは、三大都市圏から離れた地域において高くなっている (環境省の”REPOS”脚注10で再エネごとのポテンシャルマップが確認可能)
“需要地までの送電網強化”、”需要家であるデータセンターの地方誘致”がそれぞれ再エネポテンシャルの有効活用につながる
「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」「地球温暖化対策計画」(温対計画)にてデータセンターの省エネ・再エネ化を目標に。
令和3年10月22日閣議決定の「地球温暖化対策計画」(温対計画)において、データセンターの省エネ・再エネ化が目標 として設定されており、そこに紐づいた施策が実施されています。
さらに産業別の取組み記載の「半導体・情報通信産業」において、「次世代パワー半導体やグリーンデータセンター等の研究開発 支援等を通して、半導体・情報通信産業の2040年のカーボンニュートラル実現を目指す」と記載 。「データセンターの国内立地・最適配置を推進する(地方新規拠点整備・アジア拠点化)」ことも合わせて記載されています。
再エネ電源の確保
国内のデータセンターによる再エネ利用は、現状、証書によるものが中心。
主要イニシアチブにおいて、証書にも「追加性」を求められるようになっており、今後は競争により適格な証書の需給が逼迫する可能性もある。 データセンターが自ら再エネを確保する動きも求められます。
地域再生可能エネルギーを活用したデータセンターの最新事例
アップロードされた資料に基づき、地域再生可能エネルギー(再エネ)を活用したデータセンターの具体的な取り組み事例を、電源の特性と活用方法に焦点を当ててご紹介します。
発電量に変動のある電源(太陽光)の利活用事例
太陽光発電は発電量が変動するため、蓄電池を組み合わせることで安定した電力供給と再エネ率の向上を図っています。
1. 既存データセンターでの再エネ最大活用:株式会社インターネットイニシアティブ
株式会社インターネットイニシアティブは、屋根置き太陽光発電と蓄電池(Tesla Powerpack)を組み合わせることで、既存のデータセンターにおける再エネ利用を促進しています。
- 取り組みの核
新たな土地開発が不要な屋根置き太陽光発電を利用し、再エネ導入ポテンシャルを追求。
- 安定化技術
リチウムイオン蓄電池(Tesla Powerpack)を導入し、ピークシフトを含むエネルギーマネジメントに活用。
- 目標
2030年度における自社保有データセンターの再エネ利用率100%を目指しています。
- 設置場所
白井データセンターキャンパス(千葉県白井市)。
2. 大規模太陽光と蓄電池による効率利用:株式会社アガタ
株式会社アガタは、データセンターの消費電力(300kW)を上回る大規模太陽光発電設備(最大発電時620kW)と蓄電池を組み合わせ、地域企業のデータ管理需要に対応しています。
- 取り組みの核
オンサイト(敷地内)の太陽光発電を導入し、蓄電池で発電の不安定さを吸収することで、効率的な再エネ利用を実現。
- コスト効率の工夫
蓄電池はコストが高いため、非常用電源との共用化や、昼夜の電力価格差を利用したピークカットなど、コスト面での工夫を凝らしています。
- 立地戦略
富岡市(群馬県)にデータセンターを設置し、地域や自治体のデータ管理需要に対応することで、データセンターの地方分散立地を目指しています。
- 再エネ率
自然エネルギー(太陽光)の再エネ率33%を達成(PUE 1.36)。
安定した電源(水力・地熱)の利活用事例
水力発電や地熱発電など、比較的安定した電源を利用することで、高率の再エネ利用と地域特性の活用を実現しています。
3. 水力発電を軸とした超高再エネ率の実現:Ungleich.ch(スイス)
スイスのUngleich.chは、自社のデータセンター(Data Center Light)に水力発電所を構内に持つことで、100%再エネでの稼働を実現しています。
- 再エネ電源
年間発電量8GWhのうち、99.9%を水力発電、残り0.1%を太陽光発電で供給。
- 環境への徹底配慮
工場跡地や残った建物の利用、リユース機材の活用など、徹底した環境性を追求しつつ、コストダウンも実現。
- 立地のアピール
スイスのアルプス山岳地帯という災害リスクの低い高所に位置し、かつ政治的に中立な国家である点を、セキュリティ・安全性の面から利用者にアピールしています。
- 消費電力
2.2 MWh/年(小規模)。
これらの事例から、地域再エネを活用したデータセンターは、太陽光のように変動する電源の場合は蓄電池との組み合わせが不可欠である一方、水力や地熱のような安定電源は高い再エネ率と地域の強みを活かした立地戦略に繋がっていることが分かります。
まとめ
本稿ではデジタル経済とAIの爆発的成長が、データセンターの市場規模と電力消費を急激に押し上げていることがわかりました。この環境負荷増大は、投資家や顧客からの脱炭素圧力と相まって、データセンター事業者にとって、もはや避けられない戦略的な変革課題となっています。
政府はこれに対し、国内の豊富な再エネ資源(地熱・風力)のポテンシャルを最大限に活かす政策を推進。データセンターの地方分散誘致と、需要地までの電力網強化を両輪で進めています。これは、国の再エネ目標達成と、地域創生、そしてデジタルインフラのレジリエンス強化を同時に実現する、国家プロジェクトといえるでしょう。
民間企業も、太陽光に蓄電池を組み合わせる技術革新や、水力・地熱を活かした100%再エネ立地戦略でこれに応えるひつようがあります。データセンターのグリーン化は、日本の持続的なデジタル競争力を確立するために、今まさに最も取り組むべきフロンティアと言えます。




