【2024年版予測】エルニーニョ現象が今注目されている理由について解説

基礎知識

昨今、テレビやニュースでは度々”異常気象”というキーワードをお聞きになるのではないでしょうか。
皆様も、感覚的には何となく季節外れの気温や、予想外の降雨・降雪等を示しているではないかということはお分かりいただけるのではないかと思います。

しかし、実は今現在進行形で、世界では日々大きな異常気象に直面しています。
それは、2023年より続いているエルニーニョ現象です。

エルニーニョ現象に起因する世界気温へのインパクトは、通常(エルニーニョ現象の開始から)約1年後に現れると言われており、世界気象機関(WMO)の発表によると、直近では2023年にエルニーニョ現象の発生が認められています。つまり、発生からもうすぐ1年が経過する2024年の今、世界各地で今後起こり得る可能性がある環境への影響や経済的なダメージに注目が集まっています。

一方で、既に2023年6月以来記録的な陸域・海面温度も記録しており、赤道付近太平洋の中部-東部の月平均海面温度は、過去平均値よりも1℃以上高い状態が続きました。そのため、2023年に増して、2024年も更に史上最高に暑い年になることが予測されています。また、WMOのセレステ・サウロ事務局長からも「エルニーニョ現象は通常、ピークを迎えた後に世界の気温に最も大きな影響を与えるため、24年はさらに暑くなる可能性がある」との声明も発表されています。

本コンテンツでは、「エルニーニョ現象」の概要と発生の仕組みを理解し、この現象が及ぼす環境への影響、並びに経済的なダメージについて知っていただく機会となれば幸いです。

エルニーニョ現象とは

エルニーニョ現象とは、太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけて海面水温が平年より高くなり、その状態が1年程度続く現象を表しています。因みに、同じ海域で海面水温が平年より低い状態が続く現象はラニーニャ現象と呼ばれ、それぞれ数年おきに発生します。

このエルニーニョ現象の発生に際し重要になってくるのが、貿易風の状態です。貿易風とは、赤道上の海水が温められることで発生した上昇気流が、地球の自転の影響を受けて西向きの風に変わることで、一年中東側から西側へ向けて吹いている風のことを表しています。貿易風が弱まることで、エルニーニョ現象が発生すると言われています。但し、そもそも貿易風が弱まる要因については、未だ明確にそのメカニズムは解明されていません。

<エルニーニョ現象が発生する仕組み>
通常貿易風は、東側の海面近くの暖かい海水を風下の西側へと吹き寄せ、赤道近くの太平洋側に暖かい水がたまるよう巡回します。

@https://www.rd.ntt/se/media/article/0078.html

しかし、何らかの理由で貿易風が弱まると西側にたまっていた暖かい海水が東側に戻ってきます。その結果、東側の海水温は通常よりも高くなり、その上空の大気を暖めることになるのです。この現象が更に貿易風を弱めるように働き、海水の流れに影響を与える、といった現象が繰り返し続くことにより、エルニーニョ現象となっていきます。

@https://www.rd.ntt/se/media/article/0078.html

エルニーニョ現象が及ぼす環境への影響

<世界>
地域や国によって、受ける影響は様々です。

@https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-06-13/RW5YSKT0AFB401

 ・北米・南米周辺:
多くの州で高温注意報が発令されるほど気温が上がり、過去に100人以上の死者も出ています。また、長期的な大雨による洪水や土砂崩れなどの災害、干ばつや生態系への影響、日照不足による産業への悪影響が懸念されています。

・アジア周辺:
気温が上がり、降水量が減少します。農業や水力発電の分野においては、充分な水量が確保しにくくなります。一方で、台風やサイクロンの発生量が抑えられるというよい側面もあります。

・東南アジア、オセアニア周辺:
同様に降水量が減少します。そのため、被害としては、干ばつによる作物の収穫量の減少や水不足、森林火災の発生率上昇などが挙げられます

 <日本>
エルニーニョ現象発生時の日本の気候の特徴は、「冷夏・暖冬」です。
エルニーニョ現象が開始すると、西太平洋熱帯域の海面水温が低下し、西太平洋熱帯域で積乱雲の活動が不活発となります。季節ごとに及ぼされる影響は、以下のようになります。

・夏季:
太平洋高気圧の張り出しが弱くなり、気温が低く、日照時間が少なくなる傾向があります。
また、西日本日本海側では降水量が多くなる傾向があります。

・冬季:
西高東低の気圧配置が弱まり、寒波が入りにくくなるため、暖冬になりやすい傾向があります。

©https://www.data.jma.go.jp/gmd/cpd/data/elnino/learning/faq/whatiselnino3.html

このような季節性の影響以外にも、梅雨明けが全国的に平年よりも遅くなったり、秋に台風が日本付近へ近づきにくくなったりするのも、エルニーニョ現象発生時の特徴となっています。

エルニーニョ現象が及ぼす経済への影響

<世界>
世界三大科学誌の『Science』によると、2023年のエルニーニョ現象に起因し、今後数年間で3兆ドル(約414兆円)の経済損失が発生し、熱帯地域の低所得国が大きな打撃を受ける可能性があることが発表されています。また、今世紀末には、エルニーニョ現象によるGDPの累積損失額が84兆ドル(約1京1,585兆円)に到達する可能性も想定されています。

@https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-06-13/RW5YSKT0AFB401

実際のところ、過去に発生したエルニーニョ現象においても、
・1982年発生- 4兆1,000億ドル(約565兆円)
・1997年発生- 5兆7,000億ドル(約786兆円)
の世界的な経済損失があったとされており、エルニーニョ現象が収束したあとも5年以上にわたってこの影響は続いたと言われています。

また、ブルームバーグ・エコノミクスのモデルによると、過去のエルニーニョ現象においては世界のインフレ率に著しい影響を与え、非エネルギー商品価格の上昇率を3.9ポイント、原油価格については3.5ポイント押し上げています。そのため、景気縮小の中でもインフレが高止まりするスタグフレーションのリスクも懸念されており、インドやペルーにおいては、金融機関からの各種声明や気候変動や天候の影響への対策用の予算方針の策定などが個々に発表されています。

 <日本>
第一生命経済研究所の調査によると、エルニーニョ現象の発生時期と我が国の景気局面には関係があるとされており、エルニーニョ発生時の景気後退確率は 1.6 倍(*1)と算出されています。

実際に、2015-2016年に発生したエルニーニョ現象の例を取り上げた際の経済的なダメージは、以下の通りです。前章でもお伝えした「暖冬」の影響が、如実に現れる形となりました。

・2015 年 10-12 月期の平均気温:平年より約+1.2℃上昇。
・2015 年 10-12 月期の消費支出(家計調査):前年比▲3.1%に減少。
・2015 年 10-12 月期の実質国内家計最終消費支出:前年比+0.1%と伸びが急減速。
・被服・履物、特に冬物衣料関連の支出額が大幅に減少。
・冬のレジャーの低迷により、娯楽・レジャー・文化が減少。
・冬のレジャーやタクシー利用の落ち込みにより、車関連でもスタッドレスタイヤ等の冬物商材が落ち込んだことで売り上げが低迷。

@https://www.dlri.co.jp/report/macro/279896.html

@https://www.dlri.co.jp/report/macro/279896.html

@https://www.dlri.co.jp/report/macro/279896.html

(*1)根拠として、過去のエルニーニョ現象発生時期と景気後退局面の関係を見ると、90 年代以降全期間で景気後退期だった割合は 27.0%、エルニーニョ発生期間に限れば 44.4%の割合で景気後退局面に重なっていることが挙げれられています。

まとめ

WMOのターラス前事務局長(*2)は、今回のエルニーニョ現象について、人為的な活動による温室効果ガスの影響は疑う余地がないとの考えを示しています。なぜなら、世界の平均気温が当時史上最高を記録したとされる2016年においても、非常に強いエルニーニョ現象と温室効果ガスによる温暖化の現象が重なったことが主な要因として挙げられているためです。

エルニーニョ現象と温室効果ガスによる温暖化の影響の直接的な関連性は、現在は未だ明確には解明されていません(*3)。しかし、私たち事業者はこのような異常気象や環境変化に常にアンテナを張り、少しでも自社事業内に改善の余地がないか、問い続けることが求められます。

(*2)2024年1月1日より、セレステ・サウロ博士がWMOの新事務局長として就任。
(*3)気象庁の見解によると、地球温暖化の影響の可能性を指摘する調査結果がある一方、自然変動だけで十分説明できるとする調査結果もあり、必ずしも、研究者の間で意見が一致しているわけでないとされています。

本コンテンツ、並びにCO2排出量の算定に関しご質問がございましたら、弊社までお問い合わせ下さい。

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