排ガス規制Euro7(ユーロ7)はいつから?日本車に与える影響とは
Euro7(ユーロ7)は、自動車業界に大きな変革をもたらそうとしています。
これまでのEuro6から大きく変わるのは、排ガス規制の強化だけでなく、ブレーキダストやタイヤの粉じんまでが規制対象になることです。
この新しい規制は、トヨタ、マツダ、ホンダといった日本の自動車メーカーにも重要な影響を与えます。
対象となるのは乗用車から商用車、さらにはバイクまで。
技術開発やコスト面での課題に直面する中、規制の延期を求める声も出ています。
本コンテンツでは、Euro7の具体的な規制内容から、日本車への影響、さらには日本国内での対応まで、最新動向をわかりやすく解説。
自動車業界の未来を左右する可能性を秘めたEuro7について、その全容に迫ります。
目次
Euro7規制の基本と適用範囲
Euro7は、私たちの健康と環境を守るための画期的な自動車排出ガス規制です。 ここではEuro7規制の基本について解説します。
Euro7(ユーロ7)とは
Euro7(ユーロ7)は、欧州連合(EU)が定める排ガス規制の最新基準です。
自動車から排出される有害物質をさらに削減することを目的としており、健康被害や環境負荷を軽減するための厳しい基準が設定されています。
以下の項目が新しく規制対象となります。
- 粒子状物質(PM)の厳格化
- 窒素酸化物(NOx)の基準強化
- ブレーキダストの規制(世界初)
- タイヤの粉塵排出規制
対象車両
- すべての小型乗用車
- 大型車
乗用車から商用車、バイクまで幅広い車両が対象です。
ヨーロッパで始まる規制ですが、主に欧州市場向けの規制であり、他地域に直接の強制力はありません。ただし、規制対応車の輸出や生産戦略に影響を与えることが予想されます。
実施時期は2025年とされていましたが、EU加盟国や自動車業界からの指摘により後ろ倒しになり、2028年を予定しています。
日本の自動車メーカーも、Euro7対応の技術開発を進めており、より環境にやさしい車づくりが加速することでしょう。
私たちの暮らしにも、よりクリーンな大気という形で、その恩恵が広がっていくことが期待されます。
規制対象となる国と地域の全容
Euro7(ユーロ7)規制は、欧州連合(EU)加盟国全域で適用される自動車の排出ガス規制です。具体的には、以下の国々が対象となります。
- EU加盟国
- オーストリア
- ベルギー
- ブルガリア
- クロアチア
- キプロス
- チェコ
- デンマーク
- エストニア
- フィンランド
- フランス
- ドイツ
- ギリシャ
- ハンガリー
- アイルランド
- イタリア
- ラトビア
- リトアニア
- ルクセンブルク
- マルタ
- オランダ
- ポーランド
- ポルトガル
- ルーマニア
- スロバキア
- スロベニア
- スペイン
- スウェーデン
さらに、EU加盟国ではないものの、EUの排出ガス規制を採用している国や地域もあります。
たとえば、ノルウェーやスイスなどがこれに該当します。これらの国々ではEuro7基準の一部が採用される可能性があります。
したがって、EU加盟国およびEU基準を採用している非加盟国で車両を販売・使用する場合、Euro7規制への適合が求められます。
日本の自動車メーカーも、これらの市場での販売を継続するためには、Euro7規制に対応した車両の開発・提供が必要となります。
Euro6からEuro7への変更点
Euro6からEuro7への変更点は、従来の排出ガス規制をさらに強化し、環境保護の観点から新たな基準や技術的な要件が加えられています。
排出ガス基準の強化
物質 | Euro6基準値 | Euro7基準値 |
窒素酸化物(NOx) | 80 mg/km | 60 mg/km |
微粒子状物質(PM) | 4.5 mg/km | 2.5 mg/km |
※2024年時点の提案値
- NOx(窒素酸化物): 排出許容量が削減され、大気中の汚染物質をさらに抑制。
- PM(粒子状物質): 粒子数や質量の基準が強化。
新たな規制対象の追加
- 亜酸化窒素(N2O): 新たに規制対象に追加
- メタン(CH4): 温室効果ガスの削減目的で基準を導入
- タイヤ粉塵: 摩耗による粒子の発生が規制対象
- ブレーキダスト: ブレーキパッドの摩耗による粉塵が規制される
耐久性基準の延長
- 現行基準(Euro6): 車両の耐久性基準は走行距離16万kmまたは8年間
- Euro7: 耐久性基準が走行距離20万kmまたは10年間に延長(大型車向け)
長期間にわたり車両の環境性能を維持することを目的に取り入れられます。
測定条件の拡大
実路走行試験(RDE: Real Driving Emissions)がさらに拡張され、以下の条件で試験が行われます。
- 極寒や猛暑など、気温-10°Cから45°Cまで
- 短距離の通勤用途やアイドリング条件も試験対象
車載技術の義務化
- 車載センサーによる排出量モニタリング: 車両内に排ガス測定用センサーを搭載し、リアルタイムで排出量を監視可能
- デジタル車検への対応: データ記録を通じた簡易的な規制遵守確認
電動車両(EV、PHEV)への拡張
従来、排ガスが発生しない電動車は対象外とされていましたが、ブレーキやタイヤ摩耗など非排気ガスの汚染が新たな規制対象に追加されました。
規制の対象範囲の拡大
乗用車や商用車だけでなく、二輪車(バイク)や大型車も対象。
特に、バイクへの規制強化はメーカーにとって大きな課題となります。
新技術への対応促進
NOxやPMの削減のため、改良型エンジンや浄化システムの導入が必須です。
そのため、低摩耗タイヤや新素材ブレーキパッドの開発が期待されています。
規制延期の可能性を検証
Euro7規制については、自動車業界からは技術面・コスト面での反発があります。
特に、電動化への対応が求められる中での新たな規制は、自動車メーカーにとって大きな負担です。
環境保護を優先する声も強く、確定は慎重に見守る必要があるでしょう。
規制延期の可能性を検証
Euro7規制の開始時期が延期されたのは、自動車メーカーからの技術的な準備時間とコスト面での課題についての指摘が理由です。
課題の種類 | 具体的な内容 | メーカーの要望 |
技術面 | 新規制対応の開発期間不足 | 開発期間の延長 |
コスト面 | 車両価格の上昇(約20万円) | 段階的な導入 |
電動化との両立 | 開発リソースの分散 | 優先順位の整理 |
さらに以下の要因も延期を後押ししています。
- コロナ禍による開発遅延
- 半導体不足の影響
- 電動化への投資優先
- 消費者への価格転嫁の懸念
EUでは一部の議論が続いており、実際に開始される時期は未定の状態です。 環境保護を優先する声も強く、確定は慎重に見守る必要があります。
Euro7の規制項目
Euro7ではどのような項目が規制されているのでしょうか。「排ガス」「ブレーキダスト」「タイヤ粉塵」の3つについて解説します。
排ガスについて
Euro7では、私たちの健康に直接影響する従来のNOxやCOに加え、微細な粒子状物質(PM)にも厳しい基準が導入されます。
都市部での空気の質を改善し、大気汚染による健康被害を減らすのが大きな目的です。
<対象物質>
- 窒素酸化物(NOx)
- 一酸化炭素(CO)
- 粒子状物質(PM)
- 新たに規制対象となった亜酸化窒素(N2O)
- メタン(CH4)
<Euro7で追加される規制項目>
- NOx排出基準値のさらなる引き下げ
- 微粒子状物質(PM)の粒子数や質量の規制強化
- 実際の走行環境を模した「リアルドライビングエミッション(RDE)」での測定を拡充
特に子どもやお年寄りにとって、よりクリーンな空気は大切です。
この新しい規制は、私たちの生活に良い変化をもたらすでしょう。
ブレーキダストの規制基準を解説
Euro7では、排ガスだけでなくブレーキダストにも規制が設けられます。
実は、車からの有害物質は排気ガスだけではなく、ブレーキを踏むたびに発生する目に見えない粉じんが、私たちの健康に影響を与えているのです。
項目 | 内容 | 対策技術 |
発生源 | ブレーキパッドの摩耗 | 新素材開発 |
健康影響 | 呼吸器への悪影響 | 集じんフィルター |
環境影響 | 道路周辺の大気汚染 | 電動ブレーキ採用 |
<Euro7で追加される規制項目>
- パッドの表面加工による粉じん低減
- 回生ブレーキの活用
- 粉じん回収システム
- 空気の流れを制御する新設計
この規制により、街なかの空気がさらにきれいになることが期待できます。
特に、交差点や信号の多い都市部では、大きな改善が見込まれます。
ブレーキダスト対策は、次世代の車選びの新しいポイントになるかもしれません。
タイヤ粉塵に関する新基準とは
タイヤの摩耗によって発生する粉塵もEuro7で規制対象に加えられました。
これにより、タイヤメーカーと車両メーカー双方に負担が増しています。
- 新素材の開発:低摩耗性のタイヤゴムが必要。
- 車両設計の見直し:摩擦を減らす車両軽量化も求められます。
タイヤ粉塵に関する新基準とは
タイヤの摩耗によって発生する粉塵もEuro7で規制対象に加えられました。
実は、海や川に流れ込むタイヤの粉塵はマイクロプラスチックとなる可能性があり、生態系に悪影響を与える影響源のひとつと考えられているのです。
対策分野 | 現状の課題 | 新しい解決策 |
材料開発 | 摩耗しやすい | 長持ちする新素材 |
構造設計 | 重量が重い | 軽量化技術 |
性能測定 | 基準がない | 新試験方法導入 |
<Euro7のために新たに行われている取り組み>
- 植物由来の新しいゴム材料
- タイヤの溝デザインの見直し
- 空気圧管理システムの標準化
- 路面との接地面積の最適化
この規制により、以下の変化が期待できます。
- タイヤの寿命が延びて交換頻度が減る
- 環境にやさしい新素材の登場
- 燃費の向上
- 走行音の低減
タイヤの見直しは維持費の節約にもつながるため、消費者にとってもメリットがあります。
Euro7が自動車メーカーへ与える影響と対応
日本の自動車メーカー各社は、Euro7対応を強みに変えようとしています。
もちろん厳しい規制は大きな課題ですが、新しい技術開発のチャンスでもあるからです。
ここからは「トヨタ」「マツダ」「ホンダ」のEuro7に対する対応について見ていきます。
トヨタのユーロ7への対応
トヨタは、長年培ってきた環境技術を活かしてEuro7規制に対応しようとしています。
技術分野 | 現在の状況 | 今後の展開 |
ハイブリッド | 世界シェア1位 | さらなる効率向上 |
燃料電池 | MIRAI発売中 | 大型車への展開 |
排ガス浄化 | 独自触媒開発 | 新素材採用予定 |
トヨタは25年以上のハイブリッド開発経験があり、世界で最も環境技術の進んだ自動車メーカーのひとつ。 Euro7に向けては、エンジン車の排ガス低減技術のさらなる改良を進めています。
<注目の開発項目>
- 新型ハイブリッドシステム
- 高効率エンジン
- 先進的な排ガス処理
- AIを活用した制御技術
マツダのユーロ7への対応
マツダは、独自の道を歩み続け、Euro7にも独創的なアプローチで挑もうとしています。
技術名 | 特徴 | 環境への効果 |
SKYACTIV-X | ガソリンとディーゼルの利点を融合 | 20%燃費向上 |
M HYBRID | 軽量・コンパクトな電動化 | 低コストで高効率 |
MX-30 | 小容量バッテリーEV | ライフサイクルCO2削減 |
「走る喜び」と「環境性能」の両立を目指すマツダは、独自の「スカイアクティブ技術」を強化しています。
内燃機関の効率改善に加え、電動化モデルの展開も加速中です。
<注目の開発事項>
- 圧縮着火ガソリンエンジン
- 48Vマイルドハイブリッド
- 軽量化技術
- 空力性能の追求
ホンダのユーロ7への対応
ホンダは、二輪車から四輪車まで、全ての乗り物で電動化を進めています。
2050年までにカーボンニュートラルを実現するため、早い段階からの対応を取り入れているのです。
車種区分 | 現在の対応 | 2030年目標 |
乗用車 | e:N シリーズ発売 | EV比率40% |
商用車 | 小型EVトラック開発中 | 全車種電動化 |
バイク | 電動スクーター展開 | 主力モデル電動化 |
ホンダは電動化戦略に注力し、ハイブリッド車やEVのラインナップを強化。
特に、バイクの分野でも対応策が進められています。
<注目の開発項目>
- 全固体電池の採用
- モーターの小型化
- バッテリー交換システム
- ワイヤレス充電技術
Euro7に向けて車種別の具体的な影響
Euro7規制の影響は車種によって異なります。自動車業界への具体的な影響について見ていきましょう。
対応が必要な車種カテゴリー
Euro7規制は、すべての車種に対して影響を与えますが、特に以下の車種が重点的な対応を求められます。
- 大型車両
排ガスの量が多いため、NOxやPMの低減装置の改良が必須です。さらに、車両の寿命中の耐久性を保証する新技術が必要になります。 - 商用車
低コストが求められるカテゴリーで、環境対応技術を実装することで価格競争力が落ちるリスクがあります。 - ハイブリッド車
従来は排ガス量が低いとされてきましたが、Euro7では新基準をクリアするために電動化率のさらなる向上が必要です。
特に日本車メーカーは、これらの課題に対処しながら市場競争力を維持することが求められます。
バイクへの規制適用について
Euro7では、バイクも規制対象に含まれるため、業界全体に大きな影響があります。
具体的な課題として、エンジンの小型化と同時に排出ガスを削減する必要があります。バイクは構造上、排気量が少なくても高出力を求められるため、低コストで環境性能を向上させる技術革新が不可欠です。
解決策として考えられる技術
- 燃料噴射技術の高度化
- 電動バイクの普及促進
ホンダなどの大手バイクメーカーは、これに対応するため、既に電動化や新型エンジンの開発を進めています。
小型車への影響と対策
小型車は、低価格と手軽さが魅力ですが、Euro7規制ではコスト増が避けられません。特に、新技術の導入により価格が上昇しやすい車種です。
主な影響
- 排ガス削減装置の設置コスト
- 軽量化と燃費向上を両立する技術の必要性
小型車の需要を維持するために、日本車メーカーは次のような対策を進めています。
- エンジン効率のさらなる改善
- 簡易的なハイブリッドシステムの採用
- 製造プロセスの見直しによるコスト削減
これらの取り組みにより、環境基準をクリアしつつ、消費者にとって魅力的な価格を維持する戦略が進められています。
日本の排ガス規制の制度は?
Euro7はヨーロッパで施行される制度です。では、日本の排ガス規制制度にはどのようなものがあるのでしょうか。
微小粒子状物質についての対策
日本は、世界でもトップクラスの厳しい微小粒子(PM2.5)対策を進めています。
きれいな空気は、私たちの健康に直接関わる大切な問題であるため、さまざまな対策が取られているのです。
対策項目 | 現在の基準 | 2025年目標 | 期待される効果 |
PM2.5濃度 | 15μg/m³ | 10μg/m³ | 呼吸器疾患の減少 |
車検基準 | 目視確認 | 数値測定 | 正確な管理 |
浄化装置 | 一部必須 | 全車必須 | 排出量の大幅削減 |
<重点的な取り組み>
- 新型フィルターの採用
- センサー技術の向上
- 定期点検の強化
- データ管理の徹底
タイヤ、ブレーキ粉塵についての対策
日本ではタイヤやブレーキ粉塵についての規制はまだ検討段階であり、具体的な施行計画や基準設定は進行中に留まります。
対象部品 | 現状の課題 | 新たな対策 | 効果 |
タイヤ | 摩耗粉の飛散 | 低摩耗素材採用 | 粉じん50%減 |
ブレーキ | 制動時の粉じん | 集じん装置搭載 | 飛散80%減 |
ホイール | 粉じんの巻き上げ | 空気の流れ制御 | 拡散防止 |
<重点的な取り組み>
- 新素材の開発促進
- 定期点検項目の追加
- 測定方法の確立
- 基準値の設定
燃料蒸発ガスについての対策
実は、止まっている車からも有害なガスが出ています。
これを「燃料蒸発ガス」と呼び、日本は世界でもトップクラスの対策を行っています。
対策場所 | 問題点 | 新しい対策 | 期待効果 |
給油キャップ | ガス漏れ | 自動密閉式 | 90%削減 |
燃料タンク | 温度上昇 | 二重構造化 | 80%削減 |
配管系統 | 接合部漏れ | 一体成形 | 95%削減 |
<重点的な取り組み>
- 新型フィルターの標準装備
- タンク材質の改良
- 燃料系統の密閉性向上
- 警告システムの導入
まとめ
Euro7規制は、環境保護と技術革新を求める重要な指針であり、地球環境保護と健康被害軽減の観点で非常に重要です。
一方で、自動車メーカーには技術面・コスト面での大きな挑戦をもたらします。
日本車メーカーもヨーロッパの新たな規制に対応するために、電動化や排ガス削減技術の強化を進めています。
一方で、日本国内の基準も国際基準に近づきつつあり、これにより、国内外での競争力を高めることが可能です。
こうした背景を理解した上で、次世代の環境対応車に注目してみてはいかがでしょうか?