グリーンビルディングとは?持続可能な建築物の特徴とメリット

基礎知識

グリーンビルディングとは

グリーンビルディング(Green Building)は環境負荷の低減を目指して設計された建築物です。自然エネルギーの活用、リサイクル素材の使用、そして緑化推進などの環境性能を高める工夫がされています。

参照:Green Building Japan
参照:LEED (Leadership in Energy and Environmental Design)

グリーンビルディングが増えている背景

●環境課題の顕著化
●企業の社会的責任
●投資効果への期待

グリーンビルディングが増えている背景には、環境課題の顕著化、企業の社会的責任に対する注目、投資効果への期待があります。環境問題が深刻化する中、省エネルギーや再生可能エネルギーにより建物の環境負荷を低減することが求められています。

また、グリーンビルディングは光熱費の削減などコスト面でもメリットがあり、投資効果も期待できます。今後もグリーンビルディングを採用する企業は、増えていくと予想されます。

参照:外務省「国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)」
参照:財務省「ESG投資について-投資家のESG指向」

日本ではグリーンビルディングの認知度は低い?

グリーンビルディングへの取り組みは1980年代後半に米国とイギリスで始まりました。その後、西ヨーロッパや北米などに広がり、2000年代に入ると日本でもグリーンビルディングの評価システム※1が設けられます。

2024年時点でグリーンビルディングへの認知度は一般的に高いものではありません。しかし、実際は一般住宅や商業施設、教育機関の建物などで導入が進んでいます。

気候変動や資源枯渇などの環境問題がメディアで報じられることも多くなってきました。環境問題に対するソリューションの一つとして、グリーンビルディングの認知度は高まりつつあります。

※1 グリーンビルディングを認定する評価基準は「4.日本で取得できるグリーンビルディングの認証3つ」で詳しく解説します。
参照:AECB(Association for Environment Conscious Building)

グリーンビルディングの主な特徴5つ

●環境への影響の少ない土地を選定している
●持続可能な建設材料を使用している
●自然環境と調和している
●エネルギー効率が高くなる設備や機器を使用している
●持続可能な水の利用ができる

グリーンビルディングの主な特徴は5つあります。グリーンビルディングの特徴をしっかりと押さえたうえで、導入を検討することが大切です。

環境への影響が少ない土地を選定している

グリーンビルディングの建設地具体的効果
既に開発された土地新たな環境破壊を防ぐ
既存のインフラを活用し資源を節約
生態系への影響が低い地域希少動植物の保護
自然生態系の維持
土壌や水脈に配慮できる土地地下水質の保全
土壌侵食や汚染のリスク低減

グリーンビルディングでは、環境への影響を最小限に抑えるために適切な土地の選定が重視されています。再開発地区や生態系への影響が少ない地域、土壌や水脈への配慮が可能な土地を優先的に選びます。

持続可能な建設材料を使用している

材料分類具体例期待できる効果
リサイクル材・廃材解体現場のコンクリート
製材工場の木材
廃瓶のガラス
天然資源の採掘削減
廃棄物量の削減
地元産財地域産の木材、石材、土砂地域経済の活性化
地域の文化保全
再生可能素材

コルク
石油依存度の低減
CO2排出量の削減
健康に優しい室内環境
環境性能の高い素材高性能断熱材
低VOC※2塗料、シーランド
エネルギー効率の向上
室内環境の改善
健康リスクの低減
バイオベース素材植物由来のバイオプラスチック
バクテリア製コンクリート
石油依存度の低減
CO2排出量の削減
温室効果ガス排出抑制

グリーンビルディングでは、環境に配慮した持続可能な建設材料が使用されます。リサイクル材や地元産材、再生可能素材の活用は天然資源の採掘削減を図るうえで有効です。高性能な断熱材や低VOC塗料は、エネルギー効率の向上や室内環境の改善が期待できます。

バイオベースの素材にも注目です。植物由来のプラスチックやバクテリアを用いたコンクリートなどは、CO2排出量の削減に大きく貢献します。

※2 VOC(Volatile Organic Compounds:揮発性有機化合物)
参照:環境省「揮発性有機化合物(VOC)の排出抑制」
参照:政府広報オンライン「自ら修復するコンクリート」

自然環境と調和している

地域の自然環境と建築物の調和は、グリーンビルディングの重要な特徴の一つです。このアプローチでは、単に建物のデザインを周辺環境に調和させるだけでなく、周辺住民の生活環境や地域の文化にも配慮する必要があります。

周囲の建造物の高さや大きさを考慮した設計をすることで、地域の景観への圧迫感を回避できます。夜間の照明調節も大切です。自然環境への影響を最小限に抑えつつ、夜間の都市景観を向上させる取り組みになります。

エネルギー効率が高くなる設備や機器を使用している

設備/機器名具体例主な効果
高効率な空調設備省エネエアコン
空調制御システム
冷暖房エネルギー大幅削減
効率的な空調制御
高効率な照明LED照明
人感センサー
照明エネルギー大幅削減
耐久性向上
高断熱性能高性能窓ガラス
断熱性外壁
建物の熱損失大幅削減
建物全体の断熱性向上
再生可能エネルギー太陽光発電パネル
風力発電/地熱発電
エネルギー自給率向上
CO2排出量削減
BEMS※3リアルタイム監視装置
エネルギー消費分析ツール
エネルギー使用の常時監視
省エネ対策の効果測定

グリーンビルディングでは効率的な空調設備やLED照明、断熱材を使用しています。この取り組みは、建物全体のエネルギー消費を削減するうえで重要です。

高効率な空調設備はエネルギーの無駄遣いを抑えます。LED照明は省電力の他、長寿命であるため維持コストを下げることができます。屋上や敷地に太陽光パネルを設置する場合もあります。エネルギーを自給するだけでなく、CO2削減にも有効です。

※3 BEMS(Building and Energy Management System:ビル・エネルギー管理システム)
参照:環境省「ビル・エネルギー管理システム(BEMS)の導入 – 対策 概要」

持続可能な水の利用ができる

グリーンビルディングでは、水も効率的に使用されています。節水設備の導入や水再利用システム、透水性舗装などを活用して、建物全体で持続可能な給水システムを実現しています。

日常的な水使用量の削減には、節水型のトイレやシャワーヘッドが役立ちます。また、雨水タンクを設置して非飲用水として再利用する取り組みにも注目です。季節によっては、雨水の再利用は大きな節水効果が期待できます。

透水性舗装を用いることで雨水を地下に浸透させる技術もあります。雨水を地下に浸透させ、地下水の涵養や河川の負荷軽減につなげます。

企業の社屋や工場がグリーンビルディングであることのメリット

企業の社屋や工場がグリーンビルディングを採用することで、経済的メリットだけでなく、従業員の健康面やモチベーション向上といったメリットが期待できます。詳しく見ていきましょう。

メリット①長期的に見れば事業コストを節約できる

節約項目取り組み期待できる効果
エネルギーコスト再生可能エネルギーシステム運用
省エネ設備導入
光熱費の低下
CO2削減
メンテナンスコスト高耐久資材/設備導入
BEMS運用
建物の劣化・故障リスク低減
メンテナンスコスト削減

グリーンビルディングへの移行は初期投資が必要ですが、長期的に見れば大きな経済的リターンが期待できます。

高効率の設備や耐久性の高い建材を用いることで、エネルギーコスト削減やメンテナンス費用の低減が可能です。LED電球やバクテリア製コンクリートは高寿命であるため、節約効果は長期間に渡って期待できます。

また、グリーンビルディングは不動産価値の維持や向上にも寄与します。また、環境負荷の取り組みには補助金も活用できるため、ROI※4は高いレベルのものになるでしょう。

※4 ROI(Return On Investment:投資利益率)
参照:環境省「補助金制度・支援制度」

メリット②環境への負荷を抑えられる

グリーンビルディングは再生可能エネルギーの使用、高効率のエネルギーシステムなどを通じて、企業活動が自然環境に与える影響を最小限に抑えます。

特に製造業などのエネルギー消費が多いビジネスにおいて、グリーンビルディングの施策はコスト削減に大きく貢献します。エネルギー効率の向上は運用コストを低減させるだけでなく、環境規制への対応や市場での競争力向上にも繋がります。

メリット③企業の信頼性向上につながる

グリーンビルディングを採用することで、環境に優しい建物をアピールし、企業イメージを向上させることが可能です。また、投資家からの評価も高まり、ESG投資の観点から支持を受けやすくなります。環境への取り組みは、地域社会との良好な関係を築くうえでも効果的です。

メリット④従業員の生産性や健康にもつながる

グリーンビルディングは従業員の生産性や健康を後押しします。優れた換気システムは室内の空気品質を改善し、従業員に快適さをもたらします。また、自然光を取り入れる設計は従業員の気分を高め、ストレスを軽減するのに効果的です。

従業員がより健康的で生産的な環境で働くことによって、結果として企業のパフォーマンスも向上します。

日本で取得できるグリーンビルディングの認証3つ

ここでは日本で取得できる代表的なグリーンビルディング認証制度を3つ紹介します。それぞれの制度の特徴をしっかりと押さえ、自社に最適なものを選択していきましょう。

DBJ Green Building

認証制度DBJ Green Building認証
評価システム5段階(1つ星~5つ星)
施行年2011年
管理運用日本政策投資銀行
一般財団法人 日本不動産研究所
公式サイトhttps://igb.jp/

DBJ Green Buildingは、日本政策投資銀行(DBJ:Development Bank of Japan Inc.)によって2011年に創設された不動産認証制度です。オフィスビルや商業施設などの不動産に対して、環境性能だけでなく、社会性や経済性も総合的に評価し、1つ星から5つ星までのレベルで評価/認証します。DBJ Green Building認証を受けた有名な建物には、東京都の「日比谷パークフロント」や大阪府の「あべのハルカス」があります。

CASBEE(建築環境総合性能評価システム)

認証制度CASBEE
(Comprehensive Assessment System for Built Environment Efficiency)
評価システム5段階(C~S)
施行年2001年
管理運用国土交通省主導
一般財団法人住宅・建築SDGs推進センター
公式サイトhttp://www.ibec.or.jp/CASBEE/

CASBEE(建築環境総合性能評価システム)は、建築物の環境性能を総合的に評価するシステムです。2001年に国土交通省の支援で策定と整備が進められました。エネルギー消費、資源利用、室内環境、地域社会への影響などを含む多角的な視点から建物を評価し、環境への配慮が優れている建物には高い評価を与えます。CASBEE認定を受けた代表的な建築物としては、京都の5つ星ラグジュアリーホテル「HOTEL THE MITSUI KYOTO」、宮城県仙台市の「仙台市役所本庁舎」が挙げられます。

BELS

認証制度BELS
(Building-Housing Energy-efficiency Labeling System)
評価システム5段階(1つ星~5つ星)
施行年2016年
管理運用一般社団法人住宅性能評価・表示協会
公式サイトhttps://www.hyoukakyoukai.or.jp/bels/bels.html

BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)は、2016年に一般社団法人住宅性能評価・表示協会が運用を開始した建築物評価制度です。新築および既存の建築物の省エネルギー性能を第三者評価機関※5がチェックし、1つ星から5つ星で評価します。BELS認定を受けた建物としては鳥取県の「鳥取県立美術館」、福岡県の「福岡大学病院」があります。

※5 一般財団法人「日本建築センター」や一般財団法人「熊本建築審査センター」などが挙げられます。

まとめ

以上、グリーンビルディングの概要や特徴、導入メリット、日本で取得できるグリーンビルディング認証制度について解説させていただきました。

グリーンビルディングは、環境性能と経済性を両立させた持続可能な建築物です。企業のサステナブルビジネスを進めるうえでも、グリーンビルディングへの移行は重要な取り組みとなります。

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