群馬県のカーボンニュートラル戦略｜企業の脱炭素取り組み事例

公開日:2025.06.20 / 最終更新日: 2025.06.20

都道府県関連

群馬県は、地球温暖化対策と持続可能な地域経済の発展を目指し、カーボンニュートラルの実現に向けて積極的に取り組んでいます。県内の多くの企業が、この重要な環境課題に対して主体的な姿勢を示し、独自の方針と戦略を展開しています。本稿では、群馬県内のカーボンニュートラル宣言企業の現状と取り組みについて詳細に解説します。

1 カーボンニュートラル宣言の背景
2 群馬県の環境政策
3 群馬県でカーボンニュートラル宣言を行っている企業が多い分野
4 カーボンニュートラル宣言企業例
- 4.1 GNホールディングス株式会社
- 4.2 株式会社エスプール
5 群馬県の地域特有の課題点
6 脱炭素経営を支える「ぐんま脱炭素経営お悩み相談窓口」
7 企業がカーボンニュートラル宣言を行うための手順
8 まとめ

カーボンニュートラル宣言の背景

近年、気候変動への対応は世界的な課題となっており、日本政府も2050年までにカーボンニュートラルを実現することを宣言しています。群馬県は、この国家目標に呼応し、地域産業界と連携しながら温室効果ガス排出削減に取り組んでいます。

群馬県の環境政策

群馬県は、2050年に向けた「ぐんま5つのゼロ宣言」実現条例を2022年3月15日から掲げています。「ぐんま5つのゼロ宣言」とは、自然災害による死者「ゼロ」、温室効果ガス排出量「ゼロ」及び災害時の停電「ゼロ」を同時に実現し、合わせて、地球規模の課題でもあると同時に、群馬県の課題でもあるプラスチックごみ「ゼロ」、食品ロス「ゼロ」と５つの分野での「ゼロ」を目指す条例です。

そのほかにも、群馬県地球温暖化対策実行計画として、2021年から2030年までの個別基本計画を掲げています。

詳しい内容としては、以下の表をご覧ください。

(1) 群馬県全体の温室効果ガス排出量削減目標(区域施策編)

2030年度目標基準年度(2013年度)比で50%削減 (削減対策44%削減+森林吸収量6%削減)

(2) 再生可能エネルギー導入目標

2030年度目標 77億kWh/年(大規模水力 31億kWh/年、大規模水力以外 46億kWh)

(3)県有施設の温室効果ガス削減目標(事務事業編)

2030年度目標基準年度(2013年度)比で44%削減

引用　群馬県公式HP 地球温暖化対策実行計画の一部改定について
知事戦略部グリーンイノベーション推進課
https://www.pref.gunma.jp/uploaded/attachment/613798.pdf

群馬県でカーボンニュートラル宣言を行っている企業が多い分野

群馬県でカーボンニュートラル宣言企業が多い分野は、主に以下の3つの産業です。

自動車関連産業

群馬県は自動車産業の集積地として知られており、この分野のカーボンニュートラル宣言が最も進んでいます。具体的には

自動車部品メーカー
製造関連企業
輸送機器関連企業

特に、群馬県の主要企業である大手自動車関連メーカーが積極的に取り組んでいます。電気自動車（EV）への転換や生産プロセスの脱炭素化を推進しています。

製造業

群馬県の製造業は多様で、以下の分野で取り組みが進んでいます

金属加工業
電気機械器具製造業
食品製造業

これらの企業は、省エネ設備の導入や再生可能エネルギーの活用に注力しています。

エネルギー・環境関連産業

再生可能エネルギー事業者
電力会社の地域拠点
環境技術開発企業

メガソーラー発電所の運営や、新エネルギー技術の開発に取り組む企業が増加しています。

これらの分野で共通しているのは

技術革新への積極的な投資
持続可能な生産プロセスの追求
CO2排出削減への強いコミットメント

という点です。

カーボンニュートラル宣言企業例

GNホールディングス株式会社

GNホールディングス株式会社の自動車販売事業を通じた環境貢献の歩みは、2010年の「日産リーフ」登場以降、大きく進展しています。特に、V2H（Vehicle to Home）技術の拡販により、電力ピークシフトに貢献してきました。

2023年度は、具体的に以下の新たな取り組みを開始しています

資源循環型農業を展開する農業法人mino-lioとの事業協業
草津温泉内のホテルとのEVカーシェア事業

今後の計画は、以下に焦点を当てています。

再生可能エネルギーへの更なる転換
複数電気自動車のバッテリーを活用した高度なエネルギーマネジメントシステムの実装

地域に根ざした自動車販売会社として、環境貢献と事業成長の両立を目指しています。

参考　GNホールディングス株式会社プレスリリース「GNHDがカーボンニュートラルへ向けた取り組みを本格始動」
https://www.gnhd.co.jp/n-environment/post-788.html

株式会社エスプール

群馬県富岡市と包括的連携協定を締結し、同市の地域資源を活用したゼロカーボンシティへの取り組みを開始しています。本提携により、富岡市のゼロカーボンシティ実現に向けた推進計画策定、および実行の支援をエスプールが中長期的に行っています。具体的にはCO₂排出量算定システムの活用や削減に向けたロードマップの策定、市民及び事業者への環境活動に対する普及活動などを実施しています。

引用　株式会社エスプール　プレスリリース
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000100.000004500.html

群馬県の地域特有の課題点

群馬県におけるカーボンニュートラルな取り組みの地域特有の課題は、県の複雑な地形と産業構造に深く根ざしています。

地形面

まず、地形的な課題があります。群馬県は山岳地帯と平野部が混在する地域であり、再生可能エネルギー設備の設置が容易ではありません。山間部では太陽光パネルや風力発電設備の設置が地形的制約を受け、積雪期には発電効率が大きく低下します。平地と山間部では再生可能エネルギーの利用環境に顕著な差が生じています。

自動車産業へのモノカルチャー化

産業構造の観点からは、自動車関連産業への依存度が高いことが大きな課題となっています。多くの中小企業は大規模な設備投資が困難であり、カーボンニュートラルへの移行に必要な技術革新への対応に苦慮しています。伝統的な製造業においては、既存の生産プロセスから脱炭素技術への転換が特に難しい状況にあります。

第一次産業での課題

農業・林業の分野でも独自の課題が存在します。農地を再生可能エネルギー施設に転用することへの地域の抵抗感や、森林資源の効果的な活用方法の模索、高齢化による新技術導入の遅れなどが目立ちます。

インフラ整備においても、山間部と都市部の格差が顕著です。電気自動車の充電設備の地域間格差、再生可能エネルギーの送電網整備の遅れ、山間部でのネットワークインフラの不足が大きな課題となっています。

気候問題

さらに、群馬県特有の気候条件も大きな影響を与えています。日照時間の地域差や冬季の厳しい気候は、再生可能エネルギー設備の効率に直接的な影響を及ぼします。温度変化による設備への影響も無視できない課題です。

これらの課題は、単一の解決策では対応できない複合的な問題です。行政、企業、地域コミュニティが協力し、群馬県の地理的・産業的特性に適した独自のカーボンニュートラル戦略を練る必要があります。地域の特性を深く理解し、柔軟かつ革新的なアプローチが求められています。

脱炭素経営を支える「ぐんま脱炭素経営お悩み相談窓口」

群馬県では、「ぐんま5つのゼロ宣言」の宣言2「温室効果ガス排出量ゼロ」を実現するため、県内企業等の脱炭素経営を推進しています。

　一方で、脱炭素経営に取り組むには、幅広い知識やノウハウが必要であり、情報や専門人材の不足から取組が始められない、または、取組が停滞している状況にある企業もいることから、「ぐんま脱炭素経営お悩み相談窓口」を開設しています。

対象	県内に本社または事業所のある法人または個人事業主
相談料	無料
相談方法	相談者のご都合や相談内容に応じて、「現地訪問」「対面(個別面談形式)」「オンライン」のいずれかの方法で実施します。
本相談窓口のポイント	温室効果ガス排出量の算定、省エネ、再エネ、ZEB（Net Zero Energy Building）など、各分野の専門家がアドバイス脱炭素経営に関するお悩みの総合受け皿として、国や県の補助金等の支援策も紹介要望に応じて現地訪問し、現場を確認した上で省エネ・再エネの取組を提案オンラインで気軽に相談することも可能
相談申込・問合せ先	本相談窓口は、以下の法人に業務委託しています。一般社団法人ぐんまカーボンニュートラル推進会住所：〒370-0857 高崎市上佐野町282番地1 電話：027-388-1193(受付時間平日9時~17時) メールアドレス：[email protected]