グリーン・マーケット+(プラス)とはなにか?取り組みや施策の種類を解説!
グリーン・マーケット+(プラス)とは、市場のグリーン化に向けた施策のことです。この場合のグリーンとは、商品やサービスに対して環境配慮されているかを指します。
環境省では、「地球規模の環境問題は、今日の生産と消費の構造に根ざしており、解決には、経済社会の在り方そのものを持続的発展が可能なものに変革していくことが不可欠」と、2011年にグリーン・マーケット+研究会を開催しました。市場のグリーン化は着実に進んでおり、将来的にさらに拡大する可能性があります。企業として市場のグリーン化が自社にどう関わるのか知っておくことは重要と言えます。
今回はグリーン・マーケット+について、どのような仕組みで、どのような施策をあるのかをわかりやすく解説していきます。企業の環境配慮として取り組みやすいカーボンオフセットについても解説していますので、ぜひ参考にしてください。
目次
グリーン・マーケット+とは、市場のグリーン化を進める取り組みのこと
環境省は、グリーン・マーケット+研究会というかたちで、持続可能な経済社会の実現に向けて市場のグリーン化を進めるためのさまざまな取り組みを実施しています。
グリーン・マーケット+の施策は、消費者向けのものと供給する事業者向けのものと大きく2つに分けることができます。それぞれ詳しく解説していきましょう。
消費者向けのグリーン・マーケット+の施策
ここからは消費者向けのグリーン・マーケット+の施策を、次の5つの項目に分けて、わかりやすく解説していきます。
1.見える化
2.グリーン購入・グリーン契約
3.環境ラベル
4.家電エコポイント
5.エコ・アクション・ポイント
見える化
消費者向けのグリーン・マーケット+の施策の大きな目的は、市場のグリーン化をわかりやすく「見える化」することです。製品やサービスの製造や利用に伴って排出されるCO2排出量を可視化する取り組みが「見える化」です。ポイント制度やラベル制度は、企業がどれだけ環境に配慮したかを、消費者に分かりやすい形で明確に伝えることが可能です。
グリーン購入・グリーン契約
グリーン購入とは、製品やサービスを購入する際に環境を考慮して、必要性をよく考え、環境への負荷ができるだけ少ないものを選んで購入するための施策です。2000年度には、国等による環境物品等の調達の推進等に関する法である「グリーン購入法」が制定されました。
グリーン購入は、消費生活など購入者自身の環境配慮を促し、供給側の企業に対しては環境負荷がかからない製品の開発を促すことが目的で、以下のような対象商品があります。
紙類・文具類・オフィス家具類・OA機器・移動電話 家電製品 エアコンディ ショナー等 温水器等 照明・自動車・消火器 制服・作業 服 インテリア・寝装 寝具他
グリーン契約とは、価格以外にも環境性能を含めて評価した上で、物品・サービスの調達契約を行うことです。経済を停滞させることなくグリーン化を進めることが目標で、グリーン契約においては、国及び独立行政法人等における温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進に関する法律「環境配慮契約法」が2007年に成立しています。
環境ラベル
環境ラベルとは、消費者に対して商品の持つ環境情報をラベルなどにして表示する手法のことをいいます。製品そのものにラベルを貼ったり、HP上で商品に対する説明や広告を出したりして消費者に伝える方法です。
環境ラベルには大きく分けて次の3つのタイプがあり、さらに特徴や用途はそれぞれです。表にまとめましたので参考にご覧ください。
【タイプ1】ISO14024 | |
ラベルタイプ | 特徴 |
・エコマーク(日本) ・ブルーエンジェル(ドイツ) ・ノルディックスワン(北欧諸国) 等 | ・環境基準に対して第三者検証機関が判定 ・基準に合格した製品やサービスが認証を受ける |
【タイプ2】ISO14021 | |
ラベルタイプ | 特徴 |
・各事業者による自己宣言 | ・第三者判定はなし ・各事業者による独自の環境主張 ・宣伝広告にも適用される |
【タイプ3】ISO14025 | |
ラベルタイプ | 特徴 |
・エコリーフ (日本) ・EPD (スウェーデン) ・EDP (韓国)等 | ・基準に対する判断はなし 合格不合格の判断はしない。 ・定量的環境負荷データを公表し消費者に判断をゆだねる |
家電エコポイント
家電エコポイントとは、エコポイントの活用によるグリーン家電普及促進事業です。省エネ型のテレビ、電気冷蔵庫、エアコンなどを購入した消費者に対し、様々な商品やサービスと交換可能な家電エコポイントを付与します。CO2排出量削減にもつながる省エネ家電を、積極的に消費者に購入してもらうための施策です。
省エネ法による「トップランナー方式」や、省エネラベリング制度に基づいた「省エネラベル」、省エネ家電情報表示の「統一省エネラベル」など、国が制度化して実施しています。
エコ・アクション・ポイント
エコ・アクション・ポイントとは、環境にやさしい商品の購入、サービスの利用といったエコアクションを推進するための全国共通のポイントプログラムになります。エコアクションによりポイントがもらえると様々な商品等に交換できるため、多くの消費者や、全国の業種・業態の事業者が参加しています。具体的なエコ・アクション・ポイントとしては、森を育てるための農業製品にポイントを付与する、カーボンオフセットされた商品の購入にポイントが付与されるなどの取り組み事例があります。
事業者向けのグリーン・マーケット+の施策
ここからは事業者向けのグリーン・マーケット+の施策を5つご紹介していきます。
1.エコアクション21
2.環境報告・環境会計ガイドライン
3.日本版環境金融行動原則
4.カーボンオフセット
5.エコ・ファースト制度
エコアクション21
エコアクションは、ISO14001規格に基づき、広く中小企業などへの普及を促すために環境省が考案した環境マネジメントシステム(EMS)です。エコアクション21は、環境マネジメントシステムと環境パフォーマンスの評価及び環境報告をひとつに統合しているため、中小事業者でも自主的・積極的な環境配慮に対する取組が展開できるというメリットがあります。取組結果を「環境経営レポート」として取りまとめて公表できるため、企業の環境価値向上にも役立ちます。さらにエコアクションに取り組む企業は、「エコアクション21認証・登録事業者への金融機関の低利融資制度」を受けることが可能です。
環境報告・環境会計ガイドライン
環境会計とは、企業が持続可能な発展を目指して、事業活動における環境保全のためのコストとその活動により得られた効果を認識し、定量的に評価する方法です。そのための環境会計ガイドラインが環境省により定められています。環境会計は企業が環境報告を行うために役立つ施策です。
日本版環境金融行動原則
日本版環境金融行動原則は「21世紀金融行動原則」とも呼ばれ、日本版環境金融行動原則起草委員会(起草委員会)の議論をもとに、2011年度に「持続可能な社会の形成に向けた金融行動原則(日本版環境金融行動原則)」としてまとめられました。銀行や保険・証券会社などの金融機関が、持続可能な社会の形成のために必要な責任と役割を果たしていく上での行動指針であり、以下の7つの原則に基づく取組みを実践します。
【7つの原則】
1.基本姿勢
2.持続可能なグローバル社会への貢献
3.持続可能な地域社会形成への貢献
4.環境や社会の問題に対する自社の人材育成と意識向上
5.多様なステークホルダーとの連携
6.持続可能なサプライチェーン構築
7.情報開示
カーボンオフセット
カーボンオフセット(carbon offset)とは、直訳するとカーボンは“炭素”、オフセットは“相殺・埋め合わせ”。つまり排出される“炭素を埋めあわせる”という意味です。人間は日常生活や経済活動において多くのCO2を含む温室効果ガス(カーボン)を排出しています。特に企業の事業活動による排出量は莫大です。
それらの温室効果ガスをできるかぎり削減する努力を行いながら、やむを得ず排出される温室効果ガスについては、排出量に見合った削減活動に対してクレジット売買等による取引を実施します。それにより排出される分を埋め合わせる(オフセット)方法がカーボンオフセットであり、環境活動を通して資金調達を可能とします。
エコ・ファースト制度
エコ・ファースト制度とは、企業が環境大臣に対して気候変動対策や廃棄物・リサイクル対策など、自社の環境保全に関する取組みを約束する制度です。そして該当する企業が、環境分野において「先進的、独自的でかつ業界をリードする事業活動」を行っている場合は、環境大臣が「業界における環境先進企業」であることを認定します。認定を受けた企業はエコ・ファースト・マークを使用することができます。
経済界の環境配慮を促進し、各業界における環境を先進する企業を生み出していくことが目的です。
新たな取り組みであるグリーン成長戦略
市場のグリーン化には脱炭素の促進も重要です。国は温室効果ガス排出量を実質的にゼロにするカーボンニュートラル実現のために、2020年度新たに「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を打ち出しました。グリーン成長戦略の最大のポイントは、経済と環境活動をばらばらに考えるのではなく、融合することで強固な循環型経済を築くことを目指していることです。そのため、グリーン成長戦略を成功に導くために、2兆円のグリーンイノベーション基金が設置されました。これにより、カーボンニュートラルを含む環境活動に取り組む企業や組織を支援する計画です。グリーン成長戦略が推進されることで市場のグリーン化はますます加速するでしょう。
以下にグリーン成長戦略の重点項目になっている14分野をご紹介します。
産業分野 | 具体的分野 |
エネルギー関連産業(4分野) | 1.洋上風力・太陽光・地熱 2.水素・燃料アンモニア 3.次世代熱エネルギー 4.原子力 |
輸送・製造関連産業(7分野) | 1.自動車・蓄電池 2.半導体・情報通信 3.船舶 4.物流・人流・土木インフラ 5.食料・農林水産業 6.航空機 7.カーボンリサイクル・マテリアル |
家庭・オフィス関連産業(3分野) | 1.住宅・建築物・次世代電力マネジメント 2.資源循環関連 3.ライフスタイル関連 |
企業で取り組みやすいのはカーボンオフセット
これまで、グリーン・マーケット+に係るあらゆる取り組みや施策を紹介してきました。いかに市場から環境配慮を行うことが重要か、理解されたのではないでしょうか。持続可能な社会のために環境に優しい商品の開発を行うことは企業の義務と言えます。
しかし、実際に新たな商品開発となるとコストが掛かりハードルは高くなります。そのような場合は、CO2の排出量削減に取り組むという方法もあります。
カーボンオフセットなら、CO2排出削減を他の方法で埋め合わせながら環境貢献につながるため、企業としては取り組みやすい施策のひとつです。
まずは自社のCO2排出量を知ることから!
CO2排出削減を行う場合は、まずは自社のCO2排出量を知ることから始めることが重要です。しかし、実際にCO2排出量を算定すると言っても、専門的過ぎて自社単独で行うことは困難でしょう。
そこで以下のような算定ツールを使用して自社の現状を把握することからはじめるのがおすすめです。
まとめ
グリーン・マーケット+について、意味や取り組み方施策の種類を具体的に解説しました。国連が提唱するSDGs目標をはじめとして、世界は持続可能な社会の実現に向けて努力をしていかなくてはなりません。
市場をグリーン化することは、企業と消費者が手を取り合い実践することが何より重要です。次の世代に確かな未来を残すためにも、今後もグリーン・マーケット+の拡大を推進していく必要があります。