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カテゴリ7(Scope3)。従業員が通勤する際の温室効果ガスを計算する方法

Scope3

従業員が電車やバスなどで通勤をする際、その交通機関も温室効果ガスを排出しています。その排出量を算定するのがスコープ3カテゴリ7(Scope3 Category7)です。

電車やバスの走行距離や乗客数、もしくは従業員に支給している交通費の合計金額を用いて算定していきます。

このページでは、Scope3カテゴリ7「従業員の通勤」について、算定する計算式などをお伝えしています。

カテゴリ7では、従業員が通勤で使う電車や自動車の温室効果ガス排出量を算定

Scope1、2、3全体図

カテゴリ7クローズアップ

出典:環境省ホームページ「物語でわかるサプライチェーン排出量算定」

 

スコープ3カテゴリ7(Scope3 Category7)は、雇用者の通勤(従業員が通勤する際の移動に伴う排出)です。

どの企業でも電車、バスなどで通勤する従業員が多いと思いますが、それらの公共交通機関の運行でも温室効果ガスが排出されています。

そのため、事業者は、製品の運送と同じように従業員の通勤に伴う温室効果ガスも算定する必要があります。

自家用車で通勤している従業員についても同様です。

テレワークの場合は任意算定対象

近年はテレワークを導入している企業も多いですが、テレワークの温室効果ガス排出量を算定するには、従業員が自宅等で仕事をした際の温室効果ガス排出量を算定する必要があります。

ただし、2023年1月現在では、テレワークの場合の温室効果ガスの排出は任意算定対象となっているため、算定しなくても問題ありません。

なお、算定する場合は、Scope1、Scope2を算定する際と同じ考えで、ガスなどを使用した際の温室効果ガスと、使用した電気が製造された際の温室効果ガスを、従業員一人一人算定することになります。

出張に伴う移動はカテゴリ6

従業員の移動は、通勤の他に出張がありますが、出張で電車や飛行機を使用した際に排出される温室効果ガスはカテゴリ7ではなく、カテゴリ6で算出をします。

費用などのデータはどちらも社内の経理部や経理担当者が管理していることが多いと思いますので、カテゴリ6とカテゴリ7の算定を一緒に行うと効率が上がります。

カテゴリ7の算定方法

基本

鉄道、自動車など公共交通機関
(輸送モード別)
旅客人キロ(旅客数×旅客移動距離)×排出原単位
自動車(燃料法)燃料使用量×排出原単位
自動車(燃費法)移動距離÷燃費×排出原単位

簡易

移動手段別交通費支給額×排出原単位

上の表は、Scope3カテゴリ7で温室効果ガスの排出量を算定する際に使用する計算式です。

基本と書かれている表の中に記載している3つの計算式で算出すると、より確度の高い算定をすることができ、電車通勤であれば一番上の輸送モード別、自家用車での出勤であれば燃料法または燃費法の計算式を使用します(バスやタクシーはどちらの計算式でも計算可能)。

しかし、旅客数や燃料使用量は、鉄道会社などから情報収集しないとわからない情報で、把握できない、もしくは把握に大きな労力を必要とする場合があります。

そのような場合は、簡易の計算式で算定して問題ありません。

簡易は、社内で取得できるデータで算出することが可能で、支給している交通費の合計金額と排出源単位を用いて、電車やバスなどの移動手段別で計算をします。

排出原単位とは、活動量あたりのCO2排出量のことで、環境省の「排出原単位データベース」や、「IDEAv2.3(サプライチェーン温室効果ガス排出量算定用)」で確認できます(IDEAv2.3で確認するには申請が必要です)。

下記は、環境省の「排出原単位データベース」に掲載されている、「交通費支給額×排出原単位」の計算式で使用する排出原単位です。

 

交通区分排出原単位(kgCO2/円)
旅客航空機(国内線)0.00525
旅客航空機(国際線)0.00710
旅客鉄道0.00185
旅客船舶0.05019
自動車
(バス(営業用乗合))
0.00471
自動車
(タクシー・ハイヤー)
0.00331

出典:環境省「排出原単位データーベース」

温室効果ガス排出量の計算例

簡易の計算式と上記の排出原単位を用いて、Scope3カテゴリ7の温室効果ガス排出量を交通手段別に計算してみましょう。

交通費支給額の合計は、それぞれ下記のとおりとします。

  • 電車通勤の交通費支給額:1800万円
  • バスの交通費支給額:700万円
  • タクシーの交通費支給額:300万円

電車通勤の温室効果ガス排出量

18000000円×0.00185kgCO2=33300kgCO2

バス通勤の温室効果ガス排出量

7000000円×0.00471kgCO2=32970kgCO2

タクシー通勤の温室効果ガス排出量

3000000円×0.00331kgCO2=9930kgCO2

電車、バス、タクシーの合計

33300+32970+9930=76200kgCO2

ルートのCO2排出量を確認できるサービスも活用できる

目的地までのルート検索ができるYahoo!のサービス「Yahoo!乗換案内」「Yahoo!マップ」「Yahoo!カーナビ」では、2023年から、検索したルートを採用した場合のCO2排出量が表示される仕様になりました。

こちらを活用すれば、従業員ひとりひとりの通勤ルートでの排出量を簡単に調べられるため、より正確な算定が可能となります。

それだけでなく、ルートを検索すると「最も排出量が少ないルート」が分かるので、算定後に排出削減を行う際にも活用できます。

まとめ

Scope3カテゴリ7雇用者の通勤で算出する温室効果ガスの排出量についてご説明いたしました。

通勤に関する温室効果ガスの排出量であるカテゴリ7は、ほぼ全ての事業者が算定する必要がある項目です。

自社のデータだけで算定できる簡易的な計算方法もありますし、移動距離や交通費支給額などの必要なデータを関連部署から入手できれば、算定が難しいカテゴリではありません。

また、従業員の出張に伴う温室効果ガスの排出量を算定するカテゴリ6と一緒に算定を進めると、効率よく作業ができます。

まずは簡易で算定することからはじめ、確度を上げたい、排出量を削減する効果を確認したいなどの事情に合わせ、基本の計算式で算定していけるようにしていきましょう。

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