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カテゴリ9(Scope3)は輸送、配送(下流)が対象。カテゴリ4との違いや算定方法

Scope3

スコープ3カテゴリ9(Scope3 Category9)は、輸送、配送(下流)で発生した温室効果ガスの排出量を算定するカテゴリです。カテゴリ4が上流での輸送、配送なのに対して、カテゴリ9は下流での輸送、配送を算定するカテゴリで、GHG排出量算定における上流と下流の範囲を正しく理解することが求められます。

この記事では、カテゴリ9と間違えやすいその他のカテゴリやScope1、2との違い、算定に使う計算式などを紹介しています。

カテゴリ9では、製品販売後の物流が対象

Scope1、2、3全体図

カテゴリ9クローズアップ

出典:環境省「物語でわかるサプライチェーン排出量算定」

スコープ3カテゴリ9(Scope3 Category9)は、輸送、配送(下流)です。

自社が販売した製品の消費者までの物流(輸送、荷役、保管、販売)で出た温室効果ガスが算定対象となります。

例えば、冷凍食品を製造する食品メーカーであれば、自社から問屋やスーパーマーケットなどへの配送した際に使用したトラックのガソリン、倉庫や店舗で保管、販売する際に使用した電気などのエネルギーで発生した温室効果ガスが対象となります。

ただし、消費者への配送の全てがカテゴリ9というわけではなく、他社の費用負担で自社製品の輸送、配送を行う場合はカテゴリ9ですが、配送の費用を自社で負担している場合はカテゴリ4、自社のトラックで配送を行った場合はScope1に該当します

また、カテゴリ9について輸送、配送と書かれていることが多いですが、保管や販売も含みますのでご注意ください。

ただし、自社の製品を購入した事業者が製品の加工を行う場合(例:自社が農家、購入した事業者が食品会社で、冷凍野菜に加工する場合)は、その加工作業はカテゴリ10です。自社の製品をそのまま販売する場合のみカテゴリ9で算定します。

カテゴリ9に当てはまるケース、当てはまらないケース

出典:環境省「物語でわかるサプライチェーン排出量算定」

 製品の配送でのカテゴリの違い

概要Scope・カテゴリ
購入先企業が配送料を負担し、自社の製品を配送した
購入先企業のトラックなどで、自社の製品を配送した
Scope3カテゴリ9
自社が配送料を負担し、購入先企業に製品を送付したScope3カテゴリ4
自社のトラックなどを使用して、購入先企業に製品を配送したScope1またはScope2
製品ではなく、製造の際に出た廃棄物の配送を行ったScope3カテゴリ5
購入先企業が製品を倉庫などで保管したScope3カテゴリ9
購入先企業が製品を店舗などで販売したScope3カテゴリ9

上の図解は、環境省が公表している資料に掲載されている、出荷や廃棄の物流がそれぞれどのScope、カテゴリに当てはまるか紹介しているものです。

その図解をもとに、具体例を表にまとめました。

この2つから、カテゴリ9に当てはまるケース、カテゴリ9に当てはまらないケースを、より詳しく確認していきましょう。

カテゴリ9で算定する温室効果ガス

  • 自社の製品を、購入先企業が所有しているトラックで配送した際のガソリンや電気の使用による排出
  • 自社の製品を、購入先企業が配送業者を手配して代金を支払い、配送した際のガソリンや電気の使用による排出
  • 購入先企業が、自社の製品を購入後に保管していた際に使用した電気などのエネルギーによる排出
  • 購入先企業が、自社の製品を購入後に店頭などで販売していた際に使用した電気などのエネルギーによる排出

カテゴリ9に当てはまるのは、自社の製品を配送する際に、購入先企業など他社が荷主となって配送を行うケースです。

配送に伴う費用や労力を他社が負担していれば、カテゴリ9に該当するというわけです。

また、記載しているように、購入企業が保管、販売していた際に使用したエネルギーで発生した温室効果ガスもカテゴリ9の対象となります。

製品を倉庫で保管する際、店頭で販売する際に電気などを使用しますし、製品によっては空調や冷蔵などでも電力を使用することがあるでしょう。

このような保管や販売に伴ってエネルギーを使用し、発生した温室効果ガスもカテゴリ9で算定します。

この場合、倉庫や店舗までの配送の荷主が自社だった、他社だったということは関係ありません。

カテゴリ9以外で算定する温室効果ガス

  • 自社の製品を、自社が所有するトラックで購入先企業まで配送した際のガソリンや電気(Scope1、Scope2)
  • 自社の製品を、自社が配送業者を手配して代金を支払い、購入先企業に配送した際のガソリンや電気(Scope3カテゴリ4)
  • 製品ではなく廃棄物を配送した際のガソリンや電気(Scope3カテゴリ5)

自社の製品を配送する際に、購入先企業など他社が荷主となって配送を行うケースがカテゴリ9だったのに対して、自社が荷主となって自社の運送部門などが製品を届けたり、自社が配送業者に依頼して自社負担で製品の配送を行った場合は、カテゴリ9では算定しません。

また、配送したものが製品ではなく廃棄物の場合は、廃棄物の輸送や処理に伴う温室効果ガスの排出量を算定するScope3カテゴリ5となります。

この場合、荷主が自社、他社のどちらであってもカテゴリ5です。

ただし、自社にとっては廃棄物だとしても、その廃棄物で利益を得ている場合は、カテゴリ5に該当しません(例:食品会社が加工食品を製造する段階で出た残飯を肥料として販売した等)。

利益を得ていて、他社が荷主となって配送を行っていれば、カテゴリ5ではなくカテゴリ9となります。

カテゴリ9の算定方法

名称計算式
燃料法燃料使用量×排出原単位
燃費法輸送距離 / 燃費×排出原単位
トンキロ法(トラック)輸送トンキロ×トンキロ法燃料使用原単位×排出原単位
トンキロ法(鉄道、船舶、航空)輸送トンキロ×トンキロ法輸送機関別排出原単位

カテゴリ9で温室効果ガスの排出量を算定する際に使用する計算式は上記の通りです。

基本的には、カテゴリ4と同じ計算式を使用します。

まず、燃料法、燃費法、トンキロ法(トラック)で使用する排出原単位は、「排出原単位データベース」に記載されています。

燃費法は、輸送した距離、輸送に使用したトラックや鉄道などの燃費、排出原単位から算出する方法です。

トンキロ法は、貨物輸送量から算出する方法で、トンキロは「重量(トン)×輸送距離(キロ)」の計算式を用いて算出し、たとえば、50トンの貨物を100キロ輸送する場合は、5000トンキロとなります。

「トンキロ法燃料使用原単位」と「トンキロ法輸送機関別排出原単位」は、トンキロ法で温室効果ガスの排出量を算出するために設定されている数値で、環境省が公表している資料などに数値が記載されています。

冷媒の漏えいでは別の計算式を使用

物流拠点や販売拠点での荷役、保管、販売に冷暖房や冷蔵庫などを使用したことによる冷媒の漏えいで発生する温室効果ガス排出量は、上記とは異なる計算式を使用します。

冷媒の漏えいによる温室効果ガス排出量の計算

名称計算式
冷媒の漏えいHFCの使用量×使用時排出係数×地球温暖化係数

HFCとは、ハイドロフルオロカーボンの略で、現在使われている主流の冷媒です。

使用時排出係数とは、HFCの種類別の年間漏えい率のことで、下記のように記載されています。

地球温暖化係数は、「温室効果ガス排出量算定・報告マニュアル」で確認することができます。

 

機種HFCの種類使用時排出係数
(年間漏えい率)
小型冷凍冷蔵機器(内蔵型等)R-404A、HFC-134a等2%
別置型ショーケースR-404A、R-407C等16%
中型冷凍冷蔵機器(除、別置型ショーケース)R-404A、R-407C等13~17%
大型冷凍機HFC-134a、R404A等7~12%
ビル用パッケージエアコンR-410A、R-407C等3.5%
その他業務用空調機器(除、ビル用パッケージエアコン)R-410A、R-407C等3~5%

出典:日本国温室効果ガスインベントリ報告書2017年4月 温室効果ガスインベントリオフィス編

基本の計算式で算定できない場合は輸送シナリオを作成

基本の計算式で算定するには、下流の取引先企業から輸送距離などの情報を入手する必要があります。

しかし、これらの情報を入手できないケースも多いです。

その際は、カテゴリ4の算定でも使用する輸送シナリオを使って算定することが可能です。

輸送シナリオは、取引先企業が輸送で使用したトラックなどの積載量、輸送距離、積載率を仮定して当てはめて計算する方法です。

環境省の資料には、例として以下の輸送シナリオが記載されています。

国内輸送は、10 トントラックで 500 km 片道輸送、積載率 50 %とする。

出典:サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための基本ガイドライン(Ver.2.4)

このように仮定して割り出した数値を輸送トンキロとし、トンキロ法で計算を行います。

まとめ

Scope3カテゴリ9輸送、配送(下流)についてご説明いたしました。

カテゴリ9とカテゴリ4やScope1、Scope2などとの仕分けについては、違いを正しく把握すれば難しくありません。

計算式については、取引先から情報を提供してもらえないケースが多いので、輸送シナリオを使った簡易的な計算から対応していきましょう。

また、カテゴリ4と一緒に進めていくと、効率よく算定できます。

Scope3カテゴリ4について詳しくはこちらの記事をご覧ください。

カテゴリ4(Scope3)の概要と算出方法。Scope1やカテゴリ9との違いがポイント

算定ツールを利用すれば容易に計算が可能

膨大な時間や労力がかかる上、正確さが求められる企業のGHGの算定には、「算定ツール」の利用が主流になってきています。

算定ツールを使えば、データを集めて項目ごとに入力を進めていくだけで、自社の排出した温室効果ガス量の計算が容易にできます。

現在、さまざまな種類の算定ツールがありますが、ガイドラインに準拠して作成されているため、どのツールを使用しても結果に変わりはありません。導入を検討する際には、実務的な利便性や付属する機能などを比較するのが良いでしょう。

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