エコドライブとは?企業における効果と実践方法を徹底解説

企業の環境対策において、エコドライブの推進は重要な取り組みの一つとなっています。これは単なる環境負荷の低減だけでなく、燃料費の削減による経費節減、安全運転の促進、そして企業イメージの向上にもつながる効果的な施策です。パリ協定以降、企業の環境対策への要請は一層高まっており、エコドライブは比較的低コストで即効性のある対策として、多くの企業で注目を集めています。
目次
エコドライブとは?
エコドライブとは、燃料の効率的な消費とCO₂排出量削減を目指した運転方法を指します。運転中の無駄なエネルギー消費を抑え、燃費を向上させることで、環境保全と経済性の両立を実現します。エコドライブは、個人ドライバーから企業の車両運行管理まで幅広く活用され、交通事故の削減にも寄与しています。
環境省による「エコドライブ10のすすめ」
警察庁、経済産業省、国土交通省及び環境省で構成するエコドライブ普及連絡会では、エコドライブの普及・推進において統一的に用いられるエコドライブ10のすすめを策定しており、2020年に最新の10のすすめに見直しました。
- 自分の燃費を把握しよう
– 燃費計、エコドライブナビゲーション、インターネットでの燃費管理など、エコドライブ支援機能を使用し、日々の燃費記録による運転改善を図る
– 継続的なモニタリングの実施
- ふんわりアクセル「eスタート」
– 最初の5秒で時速20kmが目安
– 燃費改善効果は約10%
- 車間距離にゆとりをもって、加速・減速の少ない運転
– 交通状況に応じた速度変化の抑制 (車間距離が短くなることで、市街地では2%、郊外では6%も燃費が悪化)
– 安全性と燃費の両立しよう
- 減速時は早めにアクセルを離そう
– アクセルを早めに離し、エンジンブレーキを活用する
– 余分な燃料消費の抑制
- エアコンの使用は適切に
– 車内エアコンは冷却・除湿する機能のものであるため、暖房のみ必要な時はエアコンスイッチをオフにする
– 設定温度は控えめに
– 不必要な使用を避ける
- ムダなアイドリングはやめよう
– 必要以上の駐停車時のエンジン停止(エアコンをOFFにした車でも10分間のアイドリングで、130cc程度の燃料を消費)
– 無駄な燃料消費の削減
- 渋滞を避け、余裕をもって出発しよう
– 道路交通情報の活用(1時間のドライブで道に迷い、10分間余計に走行すると17%程度燃料消費量が増加)
– 時間に余裕を持った計画的な運転
- タイヤの空気圧から始める点検・整備
– 定期的な点検の実施
– 適切な整備による性能維持(タイヤの空気圧が適正値より不足すると、市街地で2%程度、郊外で4%程度燃費が悪化)
- 不要な荷物はおろそう
– 車両の軽量化
– 必要最小限の荷物での運転(100kgの荷物で3%程度燃費が低下)
- 走行の妨げとなる駐車はやめよう
– 迷惑駐車の防止
– 交通流の円滑化
エコドライブの主な効果
環境面での効果
エコドライブを実践することで、自動車から排出されるCO2を大幅に削減することができます。特にふんわりアクセル「eスタート」の実践だけでも、10%程度の燃費改善効果が期待できます。また、急発進・急加速を控えることで、排気ガスに含まれる有害物質の排出も抑制され、都市部の大気環境改善にも貢献します。さらに、穏やかな発進・停止により、エンジン音やタイヤ音が低減され、特に住宅地での騒音問題の改善にもつながります。
経済面での効果
企業にとって、エコドライブの導入は大きな経済的メリットをもたらします。まず、燃料消費量の削減により、直接的な燃料費の低減が実現できます。一般的に、エコドライブの実践により15-20%程度の燃費向上が期待できるとされています。また、急発進・急ブレーキを控えることで、タイヤやブレーキパッドの摩耗が抑制され、部品の交換頻度が低下します。これにより、車両の維持費用も大幅に削減することができます。長期的には車両自体の寿命延長にもつながり、資産の有効活用が可能となります。
安全面での効果
エコドライブは、安全運転と非常に密接な関係があります。十分な車間距離を保ち、交通状況を先読みした運転を心がけることで、交通事故のリスクを大きく低減できます。また、急な運転操作を控えることで、乗客の快適性も向上し、ドライバー自身の疲労やストレスも軽減されます。さらに、日々の運転状況を把握・記録することで、ドライバーの安全意識が高まり、企業全体の安全文化の醸成にも寄与します。特に、運送業や営業車両を多く保有する企業にとって、この安全面での効果は事故防止と保険料の削減にもつながる重要な要素となっています。
エコドライブが注目される背景と重要性
環境保全への貢献
近年、気候変動への対策が世界的に求められる中、エコドライブは交通部門におけるCO₂削減の有効な手段として注目されています。日本では、交通部門が全体のCO₂排出量の約18%を占めており、その削減がカーボンニュートラル実現の鍵となっています。
燃料コストの高騰
燃料価格の上昇が続く中で、エコドライブを実践することで、燃費効率を向上させ、ガソリンやディーゼル燃料の使用量を削減できます。
交通安全の向上
エコドライブの実践は、スムーズな運転を促し、急加速・急ブレーキを抑えることで事故のリスクを低減します。
社内での効果的な推進方法
企業全体でエコドライブを推進するためには、体系的なアプローチと継続的な取り組みが不可欠です。まず重要となるのが、経営層による明確な方針の提示と推進体制の確立です。環境負荷低減と安全運転の両面から、エコドライブの重要性を全社に向けて発信し、具体的な目標値を設定することで、取り組みの方向性を示すことができます。
運転者への教育・研修プログラム
効果的な推進の基盤となるのが、充実した教育・研修プログラムです。
- ドライブレコーダーやテレマティクスデータを活用した個別指導
各ドライバーの運転特性に応じた具体的な改善ポイントを示すことができ、高い教育効果が期待できます。
- 外部の専門家による講習会の開催
新しい視点や最新の知見を取り入れる良い機会となります。
モニタリングと評価の仕組み
継続的な改善を実現するためには、適切なモニタリングと評価の仕組みが必要です。
- デジタル式の燃費計やテレマティクスシステムの導入
運転データをリアルタイムで収集・分析することが可能に。収集したデータは、個人やチームの目標達成度の評価に活用するだけでなく、具体的な改善ポイントの特定にも役立ちます。
- 定期的なレポーティング
取り組みの成果を可視化し、全社で共有することで、モチベーションの維持・向上にもつながります。
インセンティブ制度の活用
社員の積極的な参加を促すため、インセンティブ制度の導入も効果的です。
- 燃費改善率や安全運転スコアに応じた表彰制度
取り組みへの意欲を高めることができます。ただし、過度な競争意識を煽ることは避け、チーム単位での評価や、改善度合いに応じた段階的な報奨制度など、建設的な取り組みを促す仕組みづくりが重要です。金銭的なインセンティブだけでなく、優秀な取り組みを社内報で紹介するなど、認知・評価の機会を設けることも効果的です。
継続的な改善活動の推進
エコドライブの取り組みを一過性のものとしないためには、PDCAサイクルに基づく継続的な改善活動が重要です。
- 定期的な推進会議を開催
現状の課題や改善策について議論する機会を設けることで、取り組みの質を高めていくことができます。
- 部門横断的なワーキンググループを設置
現場の声を施策に反映させる仕組みを作ることで、より実効性の高い取り組みが可能となります。さらに、他社の優良事例やベストプラクティスを研究し、自社の取り組みに取り入れていくことも、継続的な改善につながります。
エコドライブの取り組み事例
エコドライブコンクール
公益財団法人 交通エコロジー・モビリティ財団は、1997年に設立された「エコドライブ普及推進協議会」の事務局として活動しており、2011年度からは「エコドライブ活動コンクール」を開催しています。このコンクールは、優れた取り組みを行う事業者を表彰し、その内容を広く紹介することで、エコドライブの普及と運輸事業部門の脱炭素化を促進することを目的としています。
現在、このコンクールは業態別に3部門で応募を受け付けており、最優秀の取り組みには事業部門で国土交通大臣賞、一般部門で環境大臣賞が授与されます。事業者から一般団体まで、幅広い参加を募集しています。
事業部門(主に緑ナンバー) | 自社の車両を保有(リース含む)する、 トラック、バス、タクシーなどの運輸事業者。 |
一般部門(主に白ナンバー) | 移動などの業務上で車両を使用している事業者。 自社の製品等を運搬している場合を含む。 |
支援ビジネス・ユニーク部門 | ◆支援ビジネス・ユニーク部門◆ 【対象例】 ・メーカー等の企業によるエコドライブを支援する機器やサービス ・運輸事業部門での脱炭素やカーボンニュートラルに向けた実施策など ・さまざまな主体が実施するエコドライブに関する独自の取組み 【取組例】 ・自社が提供するテレマティクスサービスでエコドライブコンテストを実施 ・荷主や輸送事業者における非化石エネルギーへの転換に向けた取組みなど ・SDGsとコラボレーションしたエコドライブの取組みなど ※詳しくは事務局までお問い合わせください。 ※事業部門、一般部門との重複応募も可能です。 |
一般部門参加事業者
製造業(自動車以外)
- 株式会社中井電機製作所 株式会社 中井電機製作所 本社
通信業
- 有限会社ミト・ワークス
サービス業
- 株式会社想ひ 本社事業所
廃棄物処理業
- 株式会社利根川産業 本社
- 株式会社ビクトリー
行政機関
- さいたま市役所 さいたま市役所本庁舎
その他
- 沖縄トヨタ自動車株式会社
引用 2025年度エコドライブ活動コンクール公式HP
https://www.ecodrive-activity-concours.jp/entry-list/general/
海外企業のエコドライブ活動事例
欧州での取り組み
欧州では、EUの厳格な環境規制を背景に、多くの企業が先進的なエコドライブプログラムを展開しています。特にドイツのDHL社は、「GoGreen」プログラムの一環として、世界中の従業員に対してエコドライブトレーニングを実施しています。このプログラムでは、テレマティクスシステムを活用したリアルタイムの運転データ分析と、運転者へのフィードバックを組み合わせることで、燃料消費量の大幅な削減を実現しています。
北米での取り組み
米国では、UPS社が包括的な持続可能性戦略の一環として、エコドライブを推進しています。同社は独自の配送ルート最適化システム「ORION」と組み合わせることで、効率的な配送と環境負荷低減を両立させています。また、運転者に対して右左折を最小限に抑えるルート設計を行い、アイドリング時間の削減も徹底しています。
フェデックス社も、「Reduce, Replace, Revolutionize」戦略の下、エコドライブを含む環境負荷低減策を積極的に導入しています。特に、運転者の行動分析に基づいた効率的な運転方法の指導と、電気自動車の導入を組み合わせた総合的なアプローチを取っています。
エコドライブの未来と展望
デジタル技術の活用
AIやIoT技術を活用したエコドライブ支援システムが普及することで、さらに効率的な運転が可能に。
具体的には:
- リアルタイムモニタリング
運転中の燃費データや速度を解析し、最適な運転を支援。
- 自動運転技術との融合
エコドライブの原則を取り入れた自動運転車が普及。
燃料以外の視点
電気自動車や燃料電池車の普及に伴い、エコドライブの焦点は「エネルギー効率の最適化」にシフトしていくと考えられます。
グローバルな普及
国際機関や企業連携を通じて、エコドライブの実践が標準化され、世界規模でのCO₂排出削減が期待されています。
まとめ
エコドライブは、環境保全と経済性、安全性を同時に実現する運転技術です。個人から企業、自治体まで幅広い層が取り組むことで、CO₂排出量削減や交通安全の向上に寄与します。
今後、デジタル技術の活用や次世代車両との連携により、エコドライブの可能性はさらに広がり、持続可能な社会の実現に貢献するでしょう。

