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ファストファッションがもたらす環境問題とは?課題と解決策を徹底解説

CO2削減

私たちの日常に溶け込んでいるファストファッション。手頃な価格で最新トレンドを楽しめる一方で、深刻な環境問題を引き起こしていることをご存知でしょうか。

ファッション産業は、CO₂排出量が多く環境負荷の高い産業です。

大量生産・大量消費のビジネスモデルは、水資源の枯渇や有害化学物質による環境汚染、そして膨大な廃棄物を生み出しています。

しかし、この課題に立ち向かうため、サステナブルファッションへの移行や環境に優しい素材の開発など、新たな取り組みが始まっています。

本コンテンツでは、ファストファッションの環境への影響から、私たち一人一人ができる具体的な解決策まで、専門家の知見を交えながら詳しく解説していきます。

ファストファッションの環境問題の実態

さまざまな業界で環境問題への対策が取られている現在。ファッション業界で問題視されているのがファストファッションが環境に与える影響です。

ファストファッションとは

最新のトレンドを取り入れた衣服を、素早く大量生産して低価格で提供するビジネスモデルがファストファッションです。

大手アパレルブランドが主導するこの業態は、1990年代から急速に広がりました。

消費者にとって手頃な価格で最新のデザインを楽しめる一方で、「使い捨てファッション」とも呼ばれる問題をはらんでいます。

主な特徴は以下の3つです。

  • 低価格:大量生産による製造コストの削減
  • 短いサイクル:企画から店頭に並ぶまでが約2週間
  • トレンド重視:最新のファッショントレンドを即座に商品化

ファストファッションがもたらす環境問題とは

ファストファッションは、深刻な環境負荷を引き起こしています。

まず、製造過程での大量の水使用が挙げられます。一枚のTシャツを作るために、約2,700リットルもの水が必要とされています(ライフサイクル全体の水使用量)。

また、染色工程での有害化学物質の使用は、河川や土壌の汚染につながっています。

経済産業省の報告書によると年間約9,200万トンものテキスタイル廃棄物が発生し、その多くが埋立地や焼却処分されることで、温室効果ガスの排出を助長しています。

以下が主な環境問題です。

問題概要
大量の水資源消費・綿花栽培での灌漑
・染色工程での使用
化学物質による汚染・合成繊維の製造
・染料や加工剤の使用
CO2排出・製造過程でのエネルギー消費
・輸送時の排出
・廃棄処分時の排出

このように、ファストファッションの環境負荷は、製造から廃棄まで、サプライチェーン全体に及んでいます。

ファストファッションが抱える環境問題

ファストファッションは、手軽に流行を楽しめる反面、環境や社会に大きな負荷をかけています。
ここでは、特に深刻な4つの問題について詳しく解説します。

CO2排出による環境負荷

あなたの手元にある一枚のTシャツには、想像を超える環境負荷が隠されています。

なんと、一枚のTシャツの製造から廃棄までのライフサイクルで排出されるCO2は、約6kgにも及びます(Higg Materials Sustainability Index)。これは、車を約40km走らせるのと同じ量です。

ファッション産業全体では、年間約23億トンものCO2を排出しており(Global Fashion Agendaの報告書)、これはインドの年間排出量に匹敵する驚くべき数字です。

この膨大な排出量の内訳は以下の通りです。

工程内容
製造工程・紡績・織布での電力使用
・高温での染色処理裁断
・縫製工程の機械稼働
原材料生産・化学繊維の製造
・綿花栽培での機械使用
・農薬・肥料の製造
物流網・国際間の空輸
・海運・国内配送網
・保管施設の空調
小売・消費者使用・店舗の照明
・空調・家庭での洗濯
・乾燥・廃棄処理

 環境省 ファッションと環境

特に深刻なのは、この排出量が年々増加傾向にあること。

私たちの「安さ」と「手軽さ」への欲求が、実は地球環境への大きな負担となっているのです。

合成繊維による海洋汚染

ファストファッションで多く使われるポリエステルやナイロンなどの合成繊維は、洗濯するたびにマイクロプラスチックを放出します。
これらの微細なプラスチックは下水を通じて海に流れ込み、海洋生態系を脅かしています。

また、合成繊維は自然分解しにくく、廃棄された服が埋め立て地や海に流れ込むことで、さらに汚染が拡大します。
これが、海洋生物だけでなく、最終的には人間の健康にも悪影響を及ぼす可能性があります。

農薬や有害物質が与える影響

綿(コットン)の栽培には、大量の農薬や化学肥料が使用されることが一般的です。
これにより、土壌や水質が汚染され、地域の生態系が破壊されることがあります。

▼農薬や有害物質の問題点

  • 土壌の劣化
  • 地下水の汚染
  • 生物多様性の損失
  • 農作業者の健康被害

染料や防水加工に使われる化学物質も、製造過程で河川に流れ込むことで有害な影響を及ぼします。
これらの汚染物質は、人々の飲み水や農作物にも影響を与え、健康リスクを引き起こします。

見過ごせない労働環境問題

環境問題だけでなく、ファストファッションは労働環境の面でも課題を抱えています。
低賃金で長時間労働を強いられる労働者や、安全性が確保されていない環境で働く工場が多いのが現状です。

問題内容
賃金問題・最低賃金以下の給与
・長時間労働
・残業代未払い
安全衛生・危険な作業環境
・不適切な換気
・有害物質への曝露
人権問題・児童労働
・強制労働
・ハラスメント

特に発展途上国では、児童労働や強制労働の問題が指摘されています。
これらの労働環境の改善が進まない限り、消費者が安価に購入できるファッションの裏側には大きな代償が伴っています。

衣料廃棄物による環境破壊の現状

ファストファッションの大量生産・大量消費により、世界中で衣料廃棄物が急増しています。 その影響は環境にとって深刻であり、持続可能な未来に向けた大きな課題となっています。以下では、その現状や可能性について詳しく解説します。

年間廃棄量から見る深刻な実態

世界では毎年約9200万トンもの衣料品が廃棄されています。 これは地球全体の衣料生産量の約85%に相当し、その多くが埋め立て地や焼却処分されているのが現状です(Ellen MacArthur Foundation)。

日本国内でも、家庭からの衣料廃棄物は年間約50万トンを超えると言われており、環境への負荷が大きくなっています。

  • ファストファッションの普及
  • 短期間でのトレンドサイクル
  • 衣料品の単価の低下
  • 低品質な素材の使用

特に合成繊維を含む衣料品は、分解に数十年から数百年かかるため、環境への長期的な負荷が避けられません。 さらに、埋め立てや焼却に伴い、温室効果ガスの排出や有害物質の発生も問題視されています。

リサイクル技術の最新動向と課題

近年、衣類のリサイクル技術が進化しつつあります。
例えば、化学リサイクル技術では、衣類を化学的に分解し、新しい繊維として再利用することが可能です。この技術は、従来リサイクルできなかったポリエステルや複合素材の衣類にも対応しています。

しかし、現時点では以下の課題があります。

  • コストが高い:化学処理には高額な設備投資が必要。
  • 分別が難しい:多くの衣類が複数素材で構成されている。
  • 消費者の協力不足:リサイクルへの意識が十分でない。

この課題を克服するためには、政府や企業によるリサイクル促進キャンペーンや消費者教育が求められます。

アップサイクルがもたらす可能性

アップサイクルは、不要になった衣服を新たな価値を持つ製品に変える手法です。
例えば、古いデニムを再加工してバッグやインテリア商品を作ることが挙げられます。これにより、衣服廃棄量を削減しつつ、ユニークな製品を生み出すことができます。

特に若い世代を中心に、アップサイクル製品への関心が高まっており、新たなビジネスチャンスとしても注目されています。

▼アップサイクルのメリット

  1. 廃棄物削減:衣類がゴミになるのを防ぐ。
  2. 新たな経済価値:創造的な製品で市場を活性化。
  3. 消費者のエコ意識向上:持続可能な選択肢を提供。

さらに、個人で取り組めるDIYアップサイクルも人気が高まっています。YouTubeなどで簡単な方法が紹介されており、自宅で気軽に挑戦可能です。

ファストファッションブランドによる環境問題に対する取り組み

ファストファッション業界では、環境問題に対応するための取り組みが進んでいます。 特に業界大手であるZARA(ザラ)やUNIQLO(ユニクロ)は、サステナビリティを意識したさまざまな施策を実施しています。以下、それぞれの取り組みを詳しく見ていきましょう。

ZARA(ザラ)

ZARAを運営するインディテックス(Inditex)は、ファッション業界での環境負荷軽減に向けた取り組みを積極的に行っています。

  • リサイクル素材の使用
     2023年までに全商品を持続可能な素材で作るという目標を掲げ、オーガニックコットンやリサイクルポリエステルの使用を増やしています。
  • リサイクルプログラム
     世界中の店舗で衣料回収プログラムを展開。不要になった服を収集し、再利用やリサイクルへとつなげています。
  • 再生可能エネルギーの活用
     店舗や倉庫で再生可能エネルギーを使用し、二酸化炭素排出の削減にも貢献しています。

これらの取り組みを通じて、ZARAは環境問題への意識を高めるブランドとして注目されています。

UNIQLO(ユニクロ)

ユニクロを展開するファーストリテイリングも、サステナビリティに向けた積極的な対策を進めています。

  • 服のリサイクル活動
     「RE.UNIQLO」というリサイクルプログラムを実施。消費者から回収した服を再利用し、新たな製品として生まれ変わらせています。
  • 素材へのこだわり
     再生ポリエステルやオーガニックコットンを採用することで、環境負荷の少ない商品を提供。さらに、撥水加工や染色工程で使用する水の削減にも取り組んでいます。
  • 省エネ型店舗
     エネルギー消費量を抑えた店舗運営を行い、CO2削減を実現。2021年には、全世界の店舗で再生可能エネルギーの活用を拡大する目標を発表しました。

これらの活動により、ユニクロは環境に配慮したファッションブランドとして消費者の信頼を得ています。

ファッション業界による環境問題に対する取り組み

ファストファッションは手頃な価格でトレンドを楽しめる一方で、大量生産と廃棄が深刻な環境問題を引き起こしています。
しかし、近年、業界全体で環境への影響を軽減する動きが加速しています。以下では、具体的な取り組みについて解説します。

サステナブルファッションへの転換

サステナブルファッションとは、環境負荷を最小限に抑えた製品や生産プロセスで、従来の大量生産・大量消費型のビジネスモデルからの脱却を目指しています。

▼サステナブルファッションに向けての活動

  • オーガニック素材の使用拡大
  • 生産工程での水使用量削減
  • 環境負荷の少ない染色技術の採用

また、リサイクル可能な衣料品の提供や、古着を回収して新しい製品に再利用する試みも進んでいます。 消費者も、長く使える高品質なアイテムを選ぶことで、この動きを後押しできます。

ファッション協定

ファッション協定(The Fashion Pact)は、2019年8月、フランスのビアリッツで行われたG7サミットにおいて発表された取り組みで、ファッションやテキスタイル業界の企業が連携して環境保護を推進するものです。

▼ファッション協定に加盟する主なブランド

  • ケリング(Kering):グッチやサンローランなどを擁するフランスのラグジュアリーグループ
  • シャネル(Chanel):フランスの高級ファッションブランド
  • ナイキ(Nike):アメリカのスポーツ用品メーカー
  • アディダス(Adidas):ドイツのスポーツ用品メーカー
  • H&M:スウェーデンのファストファッションブランド
  • インディテックス(Inditex):ザラ(Zara)を擁するスペインのファッション企業
  • アシックス(ASICS):2020年12月に日本企業として初めて加盟したスポーツ用品メーカー
  • バリュエンス(Valuence):2022年10月に日本のリユース企業として初めて加盟

この協定では、気候変動対策、生物多様性の保全、海洋環境の保護という3つの分野を中心に、持続可能な目標を策定し、その実現に向けて行動することを目指しています。

主な取り組みには、2050年までにカーボンニュートラルを達成することや、エコフレンドリーな素材の活用促進、プラスチック包装の廃止などが含まれています。

現在、この協定には世界各地の多くの企業が参加しており、業界全体で環境負荷を軽減する取り組みが進行中です。

スローファッション

スローファッションとは、流行に追随するファストファッションとは対照的に、環境や社会、倫理に配慮した持続可能なファッションスタイルを指します。

代表的なブランド

  • Patagonia(パタゴニア)
  • EILEEN FISHER(アイリーン・フィッシャー)
  • WASABI(ワサビ)
  • Sara Mall Johansen(サラマルヨハンセン)
  • Reformation(リフォーメーション)
  • Everlane(エバーレーン)

製品の品質や生産過程に重点を置き、長く愛用できるアイテムを選ぶことで、廃棄や資源の浪費を抑えることを目指します。

スローファッションの特徴

特徴内容
持続可能な素材オーガニックコットンやリネン、リサイクル素材など、環境に優しい素材を使用。
化学薬品や過剰な水使用を抑えた生産が重視。
地元生産・小規模生産大量生産ではなく、地元や小規模の工場で製造されることが多く、品質管理が徹底されている。
公平な労働条件従業員の労働環境や賃金にも配慮し、公平で安全な職場環境を提供することを目指す。
長く使えるデザイントレンドに左右されず、タイムレスなデザインや高品質な作りで、長く愛用できる製品が主流。
リペアやリユースの推奨服の修理や再利用を提案し、製品のライフサイクルを延ばすことを重要視している。

スローファッションのメリット

  • 環境負荷の軽減
     素材や生産過程に配慮することで、温室効果ガス排出や廃棄物を削減できます。
  • 消費者意識の向上
     購入者が商品の背景に目を向けることで、より責任ある消費が広がります。
  • 個性やストーリーを楽しめる
     製品ごとの背景やこだわりを知ることで、愛着を持って使用できます。

スローファッションは「必要なものを厳選して購入し、長く大切に使う」というライフスタイルを提案しています。環境にも人にも優しい選択肢として、注目が集まっています。

消費者にできる具体的な行動

ファストファッションがもたらす環境問題を軽減するためには、消費者一人ひとりが意識を変えることが大切です。
日々の選択や行動を工夫することで、環境負荷を減らすことができます。以下では、具体的な方法を解説します。

持っている服を大切に着る

今持っている服をできるだけ長く使うことは、最も簡単に始められるサステナブルな行動の一つです。

ポイント行動
洗濯・表示に従った水温設定
・適切な洗剤を選ぶ
・裏返して洗濯する
収納・型崩れを防ぐハンガーを選ぶ
・畳み方を工夫する
・防虫や防カビ対策をする
メンテナンス・小さな修繕はすぐに対応する
・プロのケアサービスを活用する
・定期的に衣替えする

服を適切に洗濯し、シワやほつれを直して手入れをすることで、寿命を延ばすことができます。
また、不要になった服を捨てる前に、寄付やリサイクルの方法を検討するのも効果的です。

「買い換えるのではなく手入れする」という考え方を持つだけで、資源の無駄を大幅に減らせます。

長く着られる服を選ぶ

購入時に「長く着られるかどうか」を基準に服を選ぶことも重要です。

▼長く切られる服を選ぶポイント

  • 丁寧な縫製
  • 素材の品質
  • シンプルで合わせやすいデザイン
  • サイズが合っている

シンプルでタイムレスなデザインや、高品質な素材を選ぶと、トレンドに左右されることなく長期間使用できます。
また、購入前に商品の耐久性やメーカーのサステナビリティ方針を確認するのもおすすめです。

値段だけでなく、長期的な価値を考慮することで、環境にもお財布にも優しい選択ができます。

レンタル・シェアリングサービスを活用する

必要なときだけ服をレンタルしたり、他の人とシェアするサービスを利用するのも効果的です。

特に、パーティーや特別なイベントでしか着ない服を買うより、レンタルするほうが経済的で環境にも優しい選択です。
最近では、ファッションレンタルサービスやシェアリングプラットフォームが増え、多くの選択肢があります。

新しい服を買う代わりに、これらのサービスを活用することで、服の大量生産を抑える一助となります。

まとめ

身近なファッションにも、環境に関するさまざまな課題が存在していることに驚いた方もいるかもしれません。
ファッションは私たちの生活に欠かせない存在だからこそ、一人ひとりの意識が大きな影響につながります。

また、企業にとってもファッション業界に関わる機会は少なくないでしょう。

 ファッション産業が抱える環境問題を正面から捉え、解決に向けて協力することは、未来の地球環境を守る重要な一歩となります。

環境問題に目を向けながら、実現可能なことから始めることで、企業としての環境への貢献度や価値をさらに高めていきましょう。

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