グリーン水素とは?脱炭素化戦略に活躍が期待される新エネルギー
2050年カーボンニュートラル実現に向けて、グリーン水素が注目を集めています。
再生可能エネルギーを用いて生成される次世代のクリーンエネルギー源であるグリーン水素。
その可能性と課題について、本記事では詳しく解説していきます。
グリーン水素とは何か、その作り方から産業利用まで、エネルギー専門家の視点で徹底的に深掘り。ブルー水素との違いやコスト比較、日本企業の取り組みにも触れていきます。
さらに自動車産業や製造業における活用事例などから、グリーン水素が拓く未来の可能性を考察。
脱炭素化戦略におけるグリーン水素の役割とは?その課題と展望を、簡潔かつ分かりやすく解説していきます。
グリーン水素とは?話題の新エネルギーに注目!
地球温暖化対策の切り札として、注目を集めるグリーン水素。
この新エネルギーは、環境にやさしく、多様な用途に活用できる可能性を秘めています。
グリーン水素について簡単に解説
グリーン水素とは、再生可能エネルギーを使って水を電気分解して作る水素のことです。
太陽光や風力などのクリーンな電力を使うので、製造過程で二酸化炭素を一切排出しません。
水素は燃やしても水しか出ないため使用時にも環境への負荷がなく、「究極のクリーンエネルギー」と呼ばれています。
つまり、グリーン水素は製造から使用まで完全にクリーンなエネルギーとして注目されているのです。
クリーン水素とグリーン水素の違い
「クリーン水素」と「グリーン水素」、似ているけど違う言葉です。
グリーン水素 | クリーン水素 |
再生可能エネルギーだけを使って作る水素 | 製造過程で二酸化炭素をほとんど出さない水素の総称 |
つまり、クリーン水素のなかでも特にクリーンなのがグリーン水素なのです。
そのほか、化石燃料を化石燃料を分解して作るグレー水素や原子力発電を使って水を電気分解するイエロー水素などがあります。
経済産業省 資源エネルギー庁:次世代エネルギー「水素」、そもそもどうやってつくる?
グリーン水素の作り方を紹介
グリーン水素の製造方法は、意外とシンプルです。
- 太陽光や風力で電気を作る
- その電気を使って水を電気分解する
- 水素と酸素に分離
- 水素を回収・精製・貯蔵
ポイントは、使う電気が100%再生可能エネルギー由来である点です。
これにより、製造過程で二酸化炭素を一切出さないのです。
グリーン水素の可能性と課題
グリーン水素は、脱炭素社会の実現に向けた重要な鍵となる可能性を秘めています。
しかし、その普及には乗り越えるべき課題もあります。
ここでは、グリーン水素の可能性と直面する課題について詳しく見ていきましょう。
将来のエネルギー革命の姿が見えてくるかもしれません。
グリーン水素は何に使うのか
グリーン水素の活用範囲は驚くほど広く、さまざまな用途で活躍しています。
活用法 | |
交通・運輸 | ・燃料電池車の燃料 ・トラックや船舶の動力源 |
産業 | ・製鉄プロセスにおける還元剤 ・化学製品の原料 |
発電 | ・家庭用燃料電池 ・水素発電所での利用 |
エネルギー貯蔵 | ・再生可能エネルギーの余剰電力を水素に変換して貯蔵 |
つまり、グリーン水素は私たちの生活のあらゆる場面で活躍する可能性があるのです。
特に、これまで脱炭素化が難しいとされてきた分野での活用が期待されています。
グリーン水素のデメリットと課題
グリーン水素には大きな可能性がありますが、課題もあります。
デメリットと課題 | |
高コスト | ・従来の水素製造と比較して割高 ・設備投資や技術開発にコストがかかる |
エネルギー効率 | ・エネルギー損失や製造効率を向上させる工夫が必要 |
インフラ整備 | ・製造、輸送、貯蔵のためのインフラ整備 |
技術的課題 | ・大量生産技術の確立 ・長期貯蔵技術の開発 |
これらの課題を克服するには、継続的な技術革新と政策支援が不可欠です。
しかし、多くの専門家は、これらの問題は時間とともに解決されると考えています。
グリーン水素の価格と経済性
現在、グリーン水素は従来の水素よりも高価です。
- グリーン水素:約3~8ドル/kg
- 従来の水素:約1~2ドル/kg
つまり、現時点ではグリーン水素は従来の水素の2~3倍のコストがかかっています。
しかし専門家は以下の理由を元に、将来的な価格低下を予測しています。
- 再生可能エネルギーのコスト低下
- 電解装置の技術革新
- 大規模生産による経済効果
実際、2030年頃にはグリーン水素のコストが従来の水素と同程度になるという予測もあります。
コストが下がれば、グリーン水素の普及が一気に加速するかもしれません。
グリーン水素vs他の水素エネルギー
水素エネルギーにはいくつかの種類があります。
その中でも、よく比較されるのが「グリーン水素」と「ブルー水素」です。
両者にはどんな違いがあるのでしょうか?
ここでは、グリーン水素と他の水素エネルギーを比較してみましょう。
グリーン水素とブルー水素の違い
グリーン水素とブルー水素、似て非なる二つの水素エネルギーの違いをご紹介します。
特徴 | グリーン水素 | ブルー水素 |
製造方法 | 再生可能エネルギーで水を電気分解 | 天然ガスから製造、CO2を回収・貯留 |
CO2排出量 | ゼロ | 少量 |
環境負荷 | 極めて低い | 比較的低い |
コスト | 現時点では高い | 比較的安価 |
技術成熟度 | 発展途上 | 確立済み |
将来性 | 長期的に有望 | 中期的な橋渡し役 |
ブルー水素は既存のインフラを活用できるため、短期的には導入しやすいのが魅力です。
一方、グリーン水素は技術発展とコスト低下により、将来的には主流になると期待されています。
両者には一長一短があり、状況に応じた使い分けが重要です。
グリーン水素とブルー水素のコスト比較
グリーン水素とブルー水素、どちらが経済的なのでしょうか?現在と将来の予測を見てみましょう。
現在のコスト
- グリーン水素:約3~8ドル/kg
- ブルー水素:約1~2ドル/kg
つまり、現時点ではグリーン水素はブルー水素の約2倍のコストがかかっているのです。
しかし、将来的には状況が変わると予測されています。
- グリーン水素のコスト低下要因
- 再生可能エネルギーの発電コスト低下
- 電解装置の技術革新
- 大規模生産による経済効果
- ブルー水素のコスト上昇要因
- 天然ガス価格の上昇リスク
- CO2回収・貯留技術のコスト増加
専門家の予測では、2030年頃にはグリーン水素とブルー水素のコストが逆転する可能性があるとされています。
グリーン水素の産業利用と展望
グリーン水素は、単なる研究段階のエネルギーではありません。
すでに世界中で実用化が始まっており、様々な産業で活用されています。
日本企業も積極的に取り組んでいます。
ここでは、グリーン水素の産業利用の現状と将来の展望について見ていきましょう。
日本企業のグリーン水素への取り組み
日本企業も、グリーン水素の開発と実用化に力を入れています。主な取り組みを紹介します。
東芝 | ・大規模水素製造システムの開発 ・再エネ利用の水素製造実証実験 |
三菱パワー | ・水素ガスタービン発電システムの開発 ・アンモニア混焼発電技術の実用化 |
川崎重工業 | ・液化水素運搬船の開発 ・水素サプライチェーンの構築 |
トヨタ自動車 | ・燃料電池車の開発・販売 ・水素ステーションの整備支援 |
これらの企業は、産学官連携や国際協力を通じて、技術開発と実用化を加速させています。
日本は、グリーン水素技術で世界をリードすることを目指しているのです。
グリーン水素の産業利用事例
多くの可能性が期待できるグリーン水素は、すでに生産が始まっています。どのような産業に利用されているのか、実例を見ていきましょう。
福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)
福島県浪江町の水素製造施設「福島水素エネルギー研究フィールド」では、グリーン水素の製造を行っています。
こちらの施設では、太陽光発電で得られた電力を使って水を電気分解し、水素を製造。水素需要予測システムを活用して、需要に合わせた量を貯蔵し供給しています。
やまなしモデルP2Gシステム
新たな水電解技術を採用し、グリーン水素の実用化を目指すのが「やまなしモデルP2Gシステム」です。
10社の民間企業と山梨県が協力して、グリーン水素の製造と利用を進めています。
グリーン水素と脱炭素化戦略
グリーン水素は、世界各国の脱炭素化戦略の中で重要な位置を占めており、多くの国がグリーン水素の普及に向けて、積極的な政策支援を行っています。
ここでは、グリーン水素に関する政策支援の現状と、グリーン水素が実現する脱炭素社会について見ていきましょう。
私たちの未来がどう変わるのか、イメージが湧いてくるかもしれません。
グリーン水素の政策支援の現状
世界各国で、グリーン水素の普及に向けた政策支援が行われています。
EU | ・2030年までに90〜100GW分の水電解装置を設置 |
ドイツ | ・国家水素戦略を策定 ・国内の水素生産能力の向上と国外からの輸入を計画 |
日本 | ・水素基本戦略を策定 ・水素・燃料電池戦略ロードマップを更新 |
オーストラリア | ・国家水素基本戦略を発表 ・水素輸出ハブの整備を支援 |
これらの政策支援は、主に以下の点に焦点を当てています。
- 研究開発への資金提供
- インフラ整備の支援
- 規制緩和と標準化の推進
- 国際協力の促進
政策支援により、グリーン水素の技術開発と普及が加速することが期待されています。
グリーン水素で実現する脱炭素社会
グリーン水素は、脱炭素社会の実現に大きく貢献する可能性があります。
- 再生可能エネルギーの安定供給
- 火力発電所の水素転換
- 化石燃料に代わることによるCO2削減
- 燃料電池車の普及
- 家庭用燃料電池としての活用
グリーン水素の普及により、これまで脱炭素化が難しいとされてきた分野でも、CO2排出量の大幅な削減が可能になるでしょう。
技術革新と政策支援の継続により、グリーン水素を軸とした持続可能な社会の実現が期待されています。
まとめ
製造から使用まで二酸化炭素を排出しないグリーン水素は、再生可能エネルギーで作る究極のクリーンエネルギーです。
これからは、交通・産業・発電など幅広い分野での活用が期待されています。
現状ではコストが高いですが、技術革新で将来的には従来の水素と同程度になると見込まれており、日本企業も積極的に開発に取り組んでいる新エネルギー。
もちろん、世界からも注目を集めているので多くの国が政策支援を行っています。
グリーン水素は脱炭素社会実現の鍵として、今後ますます活躍の場を広げていくでしょう。