イタリア共和国・トリノで、G7気候・エネルギー・環境大臣会合が2024年4月28日~30日に開催されました
2024年4月28日から30日にかけてトリノで開催されたG7気候・エネルギー・環境相会合が行われました。G7は、2050年までに温室効果ガスのネットゼロを実現することを目指し、1.5°Cの温暖化限界を維持するために必要な行動を強調しています。エネルギー変換、資源効率の向上、持続可能なインフラの構築など、具体的な行動計画についても言及し、再生可能エネルギーの積極的な導入とエネルギー効率の向上が重要であると強調され、これには大規模な投資と国際的な協力が必要であるとされています。
目次
気候変動・生物多様性の喪失・環境汚染という「3重のグローバル危機」
気候変動、生物多様性の喪失、環境汚染という「3重のグローバル危機」について、それらが相互に影響し合い、持続可能な発展への脅威を形成していると言及しています。これらに対処するための国際的な協力と各国の具体的な政策実施が求められており、それによって地球規模での持続可能な発展が促進されることが期待されています。G7のリーダーシップのもと、諸施策についてコミットメントを列挙しながら意見交換を行い、個別分野における協力などの意見交換がされました。具体的に3分野について解説していきます。
気候変動
地球温暖化による気候変動は、極端な気象イベントの増加、海面上昇、気温の上昇などを引き起こしています。これにより、農業、水資源、生態系に悪影響を及ぼし、人間の健康や生活環境にも危険をもたらしています。
生物多様性の喪失
自然環境の破壊、過剰な資源利用、汚染、気候変動などによって、多くの生物種が絶滅の危機に瀕しています。生物多様性の喪失は、食料安全保障、医薬品へのアクセス、生態系サービスの低下といった人間社会にも直接的な影響を与えます。
環境汚染
大気汚染、水質汚染、土壌汚染など、環境への人間活動による負の影響が顕著です。これらの汚染は、人の健康を直接的に脅かすだけでなく、動植物の生存環境を破壊し、生物多様性のさらなる低下を招いています。
G7国が気候変動、エネルギー、環境問題に対する行動計画
G7は、2050年までに温室効果ガス排出量をネットゼロに達成するという野心的な目標を掲げています。この目標に向けて、2030年までに2019年比で43%の排出削減を達成するという中間目標も設定しています。さらに、2030年までに再生可能エネルギーの設備容量を現状の3倍に増やす計画を進めており、これには太陽光発電や風力発電などへの投資拡大が含まれています。また、エネルギー効率を向上させるため、2030年までに年平均のエネルギー効率改善率を倍増させることも目指しています。
国際協力においては、グローバルな気候行動を推進するための多国間協力を強化し、開発途上国との連携を深めることで、持続可能な開発目標(SDGs)とパリ協定の達成を目指します。この取り組みに加えて、炭素市場の整備と炭素価格の導入を進めることで、温室効果ガスの削減をさらに効果的に促進する計画です。
気候変動対策において、ジェンダーとLGBTQIA+の公平性を核心に置き、全社会が参加する公平な移行を目指します。先住民族や若者を含むすべての集団が気候変動対策に積極的に参加することが、極めて重要であると認識しています。
これらの行動計画は、G7が気候変動に立ち向かう上で国際社会におけるリーダーシップを発揮し、環境政策の新たな方向性を示すものです。
日本国内で影響が大きいのは、エネルギーの転換と化石燃料の段階的削減
再生可能エネルギーへの移行
日本が再生可能エネルギーの設備容量を拡大することにより、国内のエネルギー産業に大きな変化が起こります。特に太陽光発電や風力発電の拡張は、新しいビジネスチャンスを生み出し、雇用の創出にも寄与する可能性が高いです。再生可能エネルギーへの大規模な投資は、エネルギーコストの削減とエネルギー安全保障の向上にも繋がると期待されています。
こうした動きは、従来の化石燃料に依存するシステムからの脱却を意味し、クリーンエネルギーへのシフトによって、環境への負担が軽減されるだけでなく、エネルギー供給の安定性が向上することから、経済全体の持続可能性が高まります。再生可能エネルギー技術の進展と普及は、新たな産業としての成長潜在力を秘めており、国内外の市場においても競争力を持つ産業へと成長することが期待されています。
化石燃料の使用減少
化石燃料の使用を減らす政策は、石油や石炭などの従来のエネルギー資源に依存している企業や地域経済に大きな経済的な影響を与える可能性があります。特に日本のように、石炭や液化天然ガス(LNG)に依存している部分が大きい国では、これらの政策変更が直接的な雇用や収入の減少を引き起こす懸念があります。これは、エネルギーセクターが国内経済の重要な支柱であり、特定地域の雇用に大きく依存しているためです。
一方で、化石燃料への補助金を削減または段階的に廃止することは、再生可能エネルギーや他のクリーンエネルギー源への移行を加速させる効果が期待されます。これにより、新たな技術やエネルギー源への投資が促され、長期的にはされる可能性があります。これは、日本がエネルギー自給率を高め、持続可能なエネルギー源を強化する上で重要だと考えれます。
炭素市場と炭素価格の導入
炭素市場と炭素価格の導入は、企業に対して温室効果ガスの排出を減らすために必要になると考えられています。具体的には、炭素排出にコストがかかるようにすることで、企業が環境に優しい技術やサービスを開発していくことになりますが、炭素排出量が多い産業にとってはコストの増加を意味し、ビジネスモデルの見直しやイノベーションが求められるでしょう。
日本がこのようなシステムを導入する必要があるのは、国際的な気候変動対策への取り組みに適応し、環境への負担を減らすためです。日本は大きな経済力を持つ国でありながら、エネルギー消費からのCO2排出も大きいため、国際社会では日本に対する排出削減の期待が高まっています。さらに、国際的な炭素市場に参加することで、が広がります。
炭素価格を導入することで増加する企業のコストは、新しい市場の創出や競争力の強化という形で、経済全体の持続可能な成長につながる可能性があります。日本の企業が世界市場で環境技術のリーダーとして競争するためには、早期からこれらの政策に適応し、技術革新を推進することが重要です。
まとめ
今回は、G7気候・エネルギー・環境大臣会合の状況についてご紹介しました。日本はG7の一員としてリーダーシップを示すべく積極的に議論に参加しています。しかしながら石炭火力の在り方など、まだまだ課題が山積しています。気候変動対策は、着実に進んでいます。国策として行うだけでなく、企業や団体、個人が気候変動について興味をもち、具体的な行動を起こすことで目標達成に近づいていくでしょう。