サステナブルビジネスとは?環境保護と経済成長を両立させる企業戦略

基礎知識

気候変動や生態系破壊などの環境問題が深刻化する中、環境保護と経済成長を両立させる企業戦略「サステナブルビジネス」が注目されています。

本記事では、サステナブルビジネスの概要やメリット、実践方法や具体事例を解説します。

サステナブルビジネスとは

サステナブルビジネスは、環境・社会の課題解決と経済的な利益を両立させる経営モデルです。SDGsの達成目標に貢献しながら、長期的な視点でビジネス成長を目指します。

省エネ、リサイクル、廃棄物削減を通じたサステナブルな企業運営は、環境問題への貢献だけでなく、従業員のモチベーション向上や顧客ロイヤリティの向上、ブランディング強化にもつながります。

企業がサステナブルビジネスを目指すメリットは大きく3つ

目標取り組み期待できる効果
環境負荷を最小限に抑える省エネ・節電の推進コストダウン
再生可能エネルギーの活用CO2排出量の削減
リサイクル型資源の活用廃棄物の削減
社会的責任を果たす従業員の健康と安全管理離職率低下
雇用拡大地域共生
責任あるサプライチェーン公平な取引関係の構築
長期的に経済的な成長が見込める顧客ロイヤリティの構築ブランド力のアップ
イノベーションの促進新規事業の創出
環境規制への対応リスクマネジメント

サステナブルビジネスには、環境保護、社会貢献、経済的成長といった大きく3つのメリットがあります。それぞれ詳しく解説します。

環境負荷を最小限に抑えられる

サステナブルビジネスを目指すことで環境負荷を最小限に抑えられます。これは企業だけでなく、消費者や社会にとっても大きなメリットといえます。

例えば、スウェーデンの家具メーカーである「イケア」は、再生可能素材の活用やリサイクルを通じて環境負荷に配慮したサステナブルビジネスに取り組んでいます。中古品や古品を取り扱う「サーキュラーマーケット」は、手頃な価格で家具が購入できるとあって、消費者から大きな支持を受けています。

参照:IKEA Tokyo-Bayのサステナブルな取り組み

社会的責任を果たせる

サステナブルビジネスを実践することで、企業は社会的責任を果たし、ステークホルダーからの信頼を高めることができます。

日用品大手の「ユニリーバ」は、フェアトレード商品の拡充に取り組んでいます。2016年に発売された「チョコレート&ナッツ」は日本初の国際フェアトレード認証商品です。サプライチェーン全体で人権尊重と環境配慮を進め、グローバル企業としての社会的責任を果たそうとしています。

参照:ユニリーバ「プラスティックへの取り組み」
参照:フェアトレードジャパン「認証ラベルについて」

長期的に経済的な成長が見込める

サステナビリティビジネスは、企業の長期的な成長戦略においても大きな役割を果たします。特に顧客ロイヤリティの構築やイノベーション促進、環境規制への対応といった取り組みを通して、ビジネスの正当性や安定性は高まります。

米国の化学・電気素材メーカー「3M」社は、製品開発の初期段階からサステナブルビジネスを重視しています。省エネ製品やリサイクル素材を活用した新製品の開発/投入で、ブランド力のアップと資源リスクの低減を図っています。

参照:3M「サステナビリティ」

企業がサステナブルビジネスを実践する方法5つ

ここでは、企業がサステナブルビジネスを実践する方法を5つご紹介します。実際に企業がサステナブルビジネスに取り組む上で、参考となる環境基準や具体例なども解説し、イメージアップを図っていただきます。

環境に配慮する

環境への配慮はサステナブルビジネスの基本理念です。具体的な取り組みとして、省エネ活動の推進、再生可能エネルギーの導入、廃棄物削減、リサイクル推進などが挙げられます。

省エネ活動の推進では、工場やオフィスの照明・空調の効率化、生産プロセスの見直しによるエネルギー消費の削減を進めていきます。節電効果による経費削減などの経済的メリットに加え、企業のイメージアップも期待できます。

再生可能エネルギー(再エネ)導入においては、太陽光発電や風力発電など自然電力を積極利用していきます。再エネ利用の拡大は、CO2の大幅削減に貢献します。

廃棄物削減とリサイクル推進では、製造工程の改善による廃棄物の削減、リサイクルの徹底を図ります。廃棄物管理の最適化は、コストパフォーマンスを向上させる上でも有効です。
環境への配慮を進めるための目標や基準は?

基準名概要
SDGs国際社会が目指すべき17の持続可能な開発目標
GRIスタンダード持続可能性報告のための国際フレームワーク
SBTi科学に基づいた気候変動対策目標を設定、認証
IPCCガイドライン温室効果ガス排出量計測ガイドライン
ISO 14001環境管理システムの枠組みを提供する国際標準
地球温暖化対策計画書制度企業の環境保全活動のガイドライン
LEED建築物の環境性能を評価
CDP気候変動、水資源管理
森林破壊への対策情報開示評価
IUCNレッドリスト絶滅危惧種の保全状況を評価
温室効果ガス(GHG)プロトコルCO2排出量と温室効果ガス排出量の計測、報告の国際標準

環境への取り組みは国境を超えたものになります。SDGsやGRIスタンダードといった国際的な取り決め、枠組みにも理解を深めていく必要があります。ISO14001は国内企業でも広く認知されるようになりました。特に製造業において、サステナブルビジネスに取り組む姿勢を示す上で大きな役割を果たしています。

社会的責任(CSR)を履行する

CSR(Corporate Social Responsibility)は、企業の社会的責任を意味します。特に、企業の環境保護や人権尊重、地域貢献などはCSR活動と呼ばれ、日本国内で認知度が高まっています。

CSR活動は企業の義務ではありません。一方で、CSR活動は地域での企業の信頼性やプレゼンスに大きな影響を与えます。企業戦略と自社リソースに合わせたCSR活動を実施することで、ビジネスチャンスの拡大が期待できます。

具体的なCSR活動
CSR活動具体的な活動説明
地域社会への貢献地元のボランティア活動や社会活動支援
教育支援プログラム学校建設、奨学金プログラムの提供
健康と福祉の向上公衆衛生プロジェクト支援、健康啓発キャンペーン
公正な労働慣行従業員との公正契約、労働環境の改善
ダイバーシティとインクルージョン職場での性別、民族、文化の多様性を促進

大規模な教育支援から地域清掃まで、様々なCSR活動が行われています。小さな活動でも社会への良い影響は大きく、企業イメージの向上につながります。社員のモチベーションアップやチームワーク強化を図る上でも、CSR活動は有効です。

サステナビリティ報告を行う

項目名具体例
主な内容● 環境面(温室効果ガス排出量、電力使用量など)
● 社会面(人権尊重、労働環境など)
● 経済面(企業統治、リスク管理など)
● ガバナンス(経営体制、目標設定など)
報告書の役割● ステークホルダーへの情報開示
● 企業価値、透明性の向上
報告書作成のポイント● GRIスタンダード等のガイドライン活用
● 事業内容やステークホルダーのニーズに合わせた内容構成
報告書を公開する適切な時期● 通常は会計年度終了後
● 年次報告書と同時期(準じた時期)

サステナビリティ報告書の作成やESG※情報の開示などにより、企業の透明性と説明責任を高めることができます。また、自社の課題が明確になることで、取り組みの改善にもつながります。

※ ESG(Environmental:環境、Social:社会、Governance:企業統治)

関係者にも持続可能性を求める

関係者求める取り組み(例)
サプライヤー● 環境に配慮した素材の使用
● エネルギー効率の高い生産プロセス
● 公正な労働条件の確保
取引先● 持続可能な製品・サービスの購入/契約促進
● エコロジーに配慮したパッケージング
● エシカルなビジネスプラクティスの採用
従業員● 環境への意識向上
● 健康と安全への配慮
● 多様性と包摂性の促進
地域社会● 地域の環境保護プロジェクト協賛
● 地元経済の循環(地産地消)
● 社会福祉活動への支援
投資家● 透明な環境・社会・ガバナンス(ESG)への理解
● 長期的な戦略の共有、支持
消費者● 環境に優しい製品の選択
● リサイクルやリユース活動への参加

企業がサステナブルビジネスを実践する上で、関係者にも持続可能性を求めることは重要です。サプライチェーン全体でのサステナビリティ向上は、企業のサステナブルビジネスを後押ししてくれます。また、ステークホルダーとの信頼関係構築にもつながり、企業ブランドの向上や長期的な競争力の確保にもつながるメリットが期待できます。

経営方針や理念として掲げる

企業名サステナビリティを含めた理念
日立製作所「優れた自主技術・製品の開発を通じて社会に貢献する」
パナソニック株式会社「幸せの、チカラに。」
パタゴニア「私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む」

サステナブルビジネスを実践するためには、持続可能性を経営理念やビジョンに取り入れていくことが大切です。例えば、米国のアウトドア用品メーカーであるパタゴニアは「私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む」という経営理念を掲げることで、環境保護を事業の中心に置くことを表明しています。

まとめ

サステナブルビジネスは、社会課題の解決と企業価値の向上を両立させる取り組みです。環境保護、商品・サービスの品質向上、人材活用など、様々な側面からサステナブルビジネスに取り組む意義は大きいといえます。

以上、サステナブルビジネスの概要やメリット、実践など解説させていただきました。本記事がサステナブルビジネスへの理解を深める上で、お役に立てれば幸いです。

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