サステナブルビルディング(サステナブル建築)とは

基礎知識

今や80%を超える認知率(*1)となり、私たちの生活にも広く浸透しているSDGs(Sustainable Development GOALs)(*2)。株式会社ロイヤリティマーケティングが行った「サステナブルに関する調査」結果によると、SDGsで定められている17の目標のうち、調査対象者(*3)が意識して行動しているSDGs目標の上位には、3番目の「すべての人に健康と福祉を」、14番目の「海の豊かさを守ろう(22.6%)」に次いで、11番目の「住み続けられるまちづくりを(21.5%)」が挙げられています。
今回は、そのSDGsの11番目の目標として掲げられているSustainable Cities and Communitiesへの貢献が期待される、サステナブルビルディング(サステナブル建築)について解説していきます。

United Nations:Sustainable Development Goals
© https://www.un.org/sustainabledevelopment/news/communications-material/

SEARCH REPORT 公開レポート:サステナブルに関する意識調査を実施
© https://biz.loyalty.co.jp/report/112/

(*1)株式会社ロイヤリティマーケティングによる「サステナブルに関する調査」(実施期間:2023年10月6日-10月11日)の結果を元に記載。
(*2)2015年9月、国連総会にて持続可能な開発のための国際目標として採択されました。SDGsの究極的な目標には、人類が地球で繁栄を続けていくために必要な目標がテーマごとに定められており、衣食住だけでなく経済や人権問題などさまざまなトピックに関する17の目標が定められています。
(*3)調査対象は以下の通りです。
調査方法:インターネット調査 / 調査期間:2023年10月6日~10月11日 / パネル:「Pontaリサーチ」会員
調査対象:国内在住15歳以上男女 / 有効回答数:21,871名
※総務省統計局「令和2年国勢調査」の性年代別人口構成比を基にウェイトバックを実施しています
※調査結果は小数点第2位を四捨五入しています

サステナブルビルディング(サステナブル建築)とは

環境への負荷を最小限に抑えつつ、人々の健康や快適性を考慮した建築デザインのことを表しています。グリーンビルディングとも呼ばれており、2,310億ドル(約24兆853億円)規模の市場が見込まれています。そのため、省エネ関連の投資市場の中で最も大きな割合を占めているということもあり、昨今では環境分野だけではなく投資分野においても注目度が高くなっている状況です。

このように、生き物や環境への影響を配慮することを目的に、資材の無駄や廃棄物、有害物質や温室効果ガスなどによる汚染の排出を最低限に抑え、エネルギーや水などの資源の利用を効率化するように設計・建設されるサステナブルビルディングですが、具体的には、建築の設計段階において、3つの配慮項目が求められています。

1.地球の視点での環境設計配慮項目
(地球の有限性と許容限界に配慮し、「地球にとって持続可能な開発」を目指すための配慮)

2.地域の視点での環境設計配慮項目
(近隣地域の環境やネットワークに配慮し、「地域にとって持続可能な開発」を目指すための配慮)

3.生活の視点での環境設計配慮項目
(「我慢の省エネ」から「快適かつ省エネ」な生活環境を目指すための配慮)

また、このような設計から解体まで環境への配慮に加え、建築会社には5つの設計指針(建物・事業・人・社会・造り方)に対する説明責任を負うことが求められています。

一般社団法人 日本建築業連合会:サステナブル建築を実異言するための設計指針
© https://www.nikkenren.com/kenchiku/pdf/sustainable_shishin_2014.pdf

これらの配慮項目と設計指針に対する説明責任を踏まえて、国内ではサステナブルビルディングとしての優劣の評価基準には、CASBEE(建築環境総合性能評価システム)(*4)が導入されています。CASBEEは建築物のスケールによって分けられており、Sランク(素晴らしい)からCランク(劣る)までの5段階で評価されます。CASBEEによる評価の有効期限は3年であり、評価は審査ごとに変わる可能性があります。2024年3月現在、最高ランク「Sランク(素晴らしい)」と評価された建築物の例としては、以下のようなものが挙げられます。

▽CASBEEウェルネスオフィスSランク:住友生命保険相互会社東京本社
▽CASBEE不動産Sランク:新宿マインズタワー
▽CASBEE建築Sランク:フレスポ阿波座

(*4)2001年4月から国土交通省住宅局の支援のもとで設立され、現在も開発とメンテナンスを通して改良が続けられています。

日本国外のサステナブルビルディングについて

ここからは、実際に世界的にも高い評価を得ているサステナブルビルディングの事例をご紹介します。
このような建築物は数多く存在し、国際的にもサステナブルビルディングへの移行そのものに注目が集まっていることがわかります。1章では評価基準の一つとしてCASBEEについてお伝えしましたが、国際的な評価基準としては、BRE(英国建築研究所)が1990年に開発したBREEAM(Building Research Establishment)認証とよばれる環境価値評価システムが導入されています。また、アメリカを中心に用いられている基準としては、USGBC(US Green Building Council)によって開発されたLEED(Leadership in Energy and Environmental Design)認証があります。

ここでは、BREEAM認証やLEED認証で最高評価を得た建物の例として、スイスにあるオリンピックハウス、バーレーンのワールドトレードセンターをご紹介します。

【スイス】 オリンピックハウス
屋根への太陽光パネルの設置やレマン湖の水を活用したヒートポンプによってエネルギーを生み出す設計となっています。また、雨水を貯水タンクに回収し再利用することで、水道使用量を削減することにも成功しており、標準新築オフィスビルと比べて水道使用量を60%、エネルギー使用量を35%削減することに成功しています。そのほかにも、数多くの仕組みが、建築物に組み込まれています。

参照:Olympic house, https://olympics.com/ioc/olympic-house/commitment-to-sustainability

Olympic house:https://olympics.com/ioc/olympic-house/all-the-ioc-staff-under-one-roof
© IOC/Adam Mork

【バーレーン】ワールドトレードセンター
潮風が流れ込む立地を生かすために、2棟の超高層ビルの間に風力発電のタービンが3機備え付けられています。これらのタービンにより、最大でビル全体の15%ほどの電力を賄うことを想定しています。また、建築物の形状や屋根にもエネルギー効率を上げるための工夫が取り込まれています。

参照:Bahrain World Trade Center, https://bahrainwtc.com/

Bahrain World Trade Center
© https://qr.paps.jp/bzQVv

サステナブルビルディングの注目すべき点

国内でも首都圏を中心に、サステナブルビルディングへの移行が積極的に進んでいることは実感される方も多いのではないかと思いますが、まだまだ課題も山積しています。

国土交通省:第1回 グリーンインフラの市場における経済価値研究会
©https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/environment/content/001717242.pdf

 ここからは、サステナブルビルディングの普及におけるメリットとデメリットをそれぞれ解説していきます。

 【メリット】
環境への負荷の軽減
サステナブルビルディングはエネルギー効率化や再生可能エネルギーの利用により、環境への負荷を軽減します。これにより、地球温暖化や環境汚染などの問題への貢献が期待できます。

長期的な運用コストの削減
高い断熱性や効率的なエネルギーシステムを導入することにより建築物におけるエネルギー消費を削減します。これにより、建築物のランニングコストを削減することが可能になります。

居住者の健康・快適性の向上
自然を取り込んだシステムを活用することで、室内の快適性の向上が見込まれます。これにより、居住者や利用者の生活品質に直接的な影響をもたらすと考えられています。

【デメリット】
初期投資の増加
サステナブルビルディングは高性能な断熱材やエネルギー効率の高い設備など、高価な材料や技術を導入する必要があり、初期投資の増加が懸念されます。

技術やデザインの制約
エネルギー効率や環境保全を優先するシステムの観点から、活用できる技術に制約をもたらす可能性があります。さらに、地域や気候といった取り巻く環境を活かす建築設計を強いられるため、デザインにも大きな制限がかかる可能性があります。

 まとめ

本コンテンツでは、具体的な建築物の事例を通しサステナブルビルディングの担う役割について理解を深め、その有用性について確認してきました。

世界全体で省エネに向けた取り組みを行うことによって、2030年までには48%のCO2の排出量の削減が可能であると見込まれており、そのうち建設不動産からの削減可能部分が43%を占めるというデータ(*5)もあります。このようなデータからも、サステナブルビルディングが環境保護において担う役割の重要性がお分かりいただけると思います。環境に配慮したビジネスを行う上では、このような建築物の視点からも環境保護へのアプローチを検討することが必要です。

本コンテンツ、並びにCO2排出量の算定に関しご質問がございましたら、弊社までお問い合わせ下さい。

(*5)World Green Building Council, https://worldgbc.org/

関連記事一覧