• HOME
  • 記事
  • 基礎知識
  • 脱炭素社会の実現に向けてサーキュラーエコノミーが担う役割と概要について解説

脱炭素社会の実現に向けてサーキュラーエコノミーが担う役割と概要について解説

基礎知識

2021年3月、環境省と経団連による、「循環経済パートナーシップ」が発足しました。これは、官民連携のもと、サーキュラーエコノミー(循環経済)の取組を加速化させることを目的としており、昨今の循環型社会の形成推進の一環となる3R(*1)及び循環経済への移行実績の増加と、企業の中長期的な競争力の強化にも寄与しています。

今回のテーマとなるサーキュラーエコノミーは、①資源・製品の価値の最大化、②資源消費の最小化、③廃棄物の発生抑止の3つを主に循環させていく経済活動を表しています。

このようなサーキュラーエコノミーへの移行は活発化しており、2024年1月には、企業13社における『サーキュラーエコノミーおよびカーボンニュートラルに関する共同声明』も発表されています。この共同声明は、同月の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)でも発表されました。

そこで今回はまず、サーキュラーエコノミーの概要について改めて確認していただき、脱炭素社会の実現との関係性やサーキュラーエコノミーの実態について理解を深めていただけますと幸いです。

(*1) Reduce(リデュース)、Reuse (リユース)、Recycle (リサイクル)

サーキュラーエコノミーとは

従来の3Rの取組に加え、資源投入量・消費量を抑えつつ、ストックを有効活用しながら、サービス化等を通じて付加価値を生み出す経済活動を表しています。2015年12月、欧州委員会により2030年に向けた成長戦略の核になる政策パッケージとして、大量生産・大量消費・大量廃棄が一方向に進むリニアエコノミー(線形経済)に代わり承認されました。

サーキュラーエコノミーが重要視される背景として、現在のリニアエコノミーでは、人口増加に伴う必要な資源量の確保が難しいことが明らかとなっており、持続可能な経済モデルではないことが数値化して証明されていることが挙げられます。その中で、サーキュラーエコノミーの実質的な経済効果としては、500兆円規模の経済価値(*2)が期待されており、成長市場となっています。

環境省:1 循環経済(サーキュラーエコノミー)に向けて
©https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/r03/html/hj21010202.html

また、以下にお示ししているものは、サーキュラーエコノミーの先進国として知られる、オランダ政府が提唱している概念図となります。サーキュラーエコノミーでは、リニアエコノミー、リユースエコノミーとは異なり、そもそも利用した資源を廃棄されることが前提条件として含まれていないことがお分かりいただけると思います。

 

 a linear to a circular economy
©https://www.government.nl/topics/circular-economy/from-a-linear-to-a-circular-economy

 (*2) アクセンチュアの著書『Waste to Wealth』によると、サーキュラーエコノミーがもたらす経済効果・経済価値は、2030年時点で約4兆5000億ドルと言われています。試算方法としては、従来の一方通行型の経済モデルを続けた場合の経済的損失の見込み額を参考にしています。この場合、2030年には4兆5000億ドル、2050年には25兆ドルの経済的損失の見込んでおり、サーキュラーエコノミーへの転換によって、同額の規模の経済価値が生まれるという試算が行われている状況です。
その他にも、Circular Fashion Summitが公表した2020年のCircular Fashion Reportでは、サーキュラーファッションの市場規模は5兆米ドルに拡大するとしていたり、PwCオーストラリアは、2020年に豪州におけるサーキュラーエコノミーの経済効果を1.8兆米ドルと試算するレポートを公表したりしています。

循環型社会との違いついて

サーキュラーエコノミーでは、ビジネスモデルの入口の部分を、循環型社会では、出口の部分を意識した設計になっています。具体的に、前者においては、製造予定の商品のデザインやシステムの設計段階で、資源が廃棄にならなかったり、長く使えたりするようにすることを検討します。一方で後者においては、実際に生じた廃棄物そのものを、いかにして無駄にせず、再び循環させられるかということに着目しています。

サーキュラーエコノミーの3原則であるEliminate(排除する)、Circulate(循環する)、Regenerate(再生する)に基づき、サーキュラーエコノミーの全体像を示す概念図として、通称「バタフライ・ダイアグラム」が公表されています。

元図:Circular economy butterfly diagram.png/引用:Circular Economy Hub
©https://emf.thirdlight.com/link/bxqwo5kx53lq-2syjxg/@/preview/1?o

脱炭素社会の実現に向けてサーキュラーエコノミーが担う役割とは

エレン・マッカーサー財団(*3)が2019年9月に公表したレポート”Completing the Picture: How the Circular Economy Tackles Climate Change(*4)“の中では、再生可能エネルギーへの移行による世界の温室効果ガス排出量への影響について言及されています。

例えば、脱炭素社会の実現に向けた再生可能エネルギーへの移行を通して、世界の温室効果ガス排出量の55%の削減が可能であることが述べられています。一方で、国連の気候変動目標を達成するためには、残りの45%の削減をいかにして取り組むべきかが重要となっており、セメント、プラスチック、鋼、アルミニウム、食品の5つの主要な分野に焦点があたっています。これらの廃棄物の排除、材料の有効活用、農地の再生により93億トンの温室効果ガス排出量の削減が可能であるとの見解があり、サーキュラーエコノミーへの移行が不可欠であることが指摘されているためです。

一方で、サーキュラーエコノミーを目指す上では、様々な課題もあります。具体的には、以下のような課題があります。

・旧来型の太陽光パネルや風力タービンにサーキュラーデザインが施されておらず、リサイクルが難しい。

・脱炭素社会の実現に必要なだけの太陽光パネルや風力タービンなどを製造しようとすると、これらの資源の循環利用システムが完成されていない現状では新たに大量のバージン資源の調達が必要となり、資源枯渇や生物多様性の喪失につながる。

・世界の太陽光パネル製造の7割を占めている中国では石炭火力発電による太陽光パネル生産が行われており、再エネインフラ拡大の背景に大量のCO2排出があるなど、移行期ならではのジレンマがある。

しかし、これらの課題を解決しながら、脱炭素社会の実現に向けて、サーキュラーエコノミーへの積極的な移行が重要となってきます。

(*3) 2010年に、サーキュラーエコノミーの推進を目的として設立された団体。
(*4) Completing the picture: How the circular economy tackles climate, changehttps://www.ellenmacarthurfoundation.org/completing-the-picture

サーキュラーエコノミーによるビジネスモデルの転換が行われた代表的な事例について

大手のタイヤメーカーであるミシュラン(フランス)と、建機メーカーのキャタピラー(アメリカ)の事例をご紹介します。

ミシュラン:モノ売りからの脱却、製品のサービス化
運送会社向けのサービスとして、従来のタイヤを売り切るビジネスから走行距離に応じてタイヤのリース料を請求する「サービスとしてのタイヤ(Tire as a Service: TaaS)」へ転換しました。製品としてタイヤを販売するのではなく、走行距離という”成果”で料金(タイヤのメンテナンスサービスも含む)が決定されるという新しいビジネスモデルを打ち出しました。ミシュランはタイヤの製造から廃棄までのバリューチェーン全体に責任を持つことで、利用済みタイヤの再生・再資源化に取り組んでいます。

キャタピラー:技術革新による収益獲得
先進的なプロセスと製品のイノベーションによって、摩耗・損傷したコンポーネントを新品同様に機能する状態へ再生させることに成功しました。これまでは使用不能とされていた製品の再利用を実現することでコスト削減に成功し、粗利の1.5倍の増加、30億ドル以上の収益獲得を実現しました。

まとめ

本コンテンツでは、サーキュラーエコノミーについて、その概要や実例、脱炭素社会の実現との関係性の視点から理解を深めていただきました。自社の展開するビジネスを振り返ってみた際に、サーキュラーエコノミーへの移行にむけて、改善、又は取り入れていただくことができそうポイントは思い浮かびましたでしょうか。

サーキュラーエコノミーに企業が取り組む動機については、以下のような考え方があります。

IDEAS FOR GOOD:サーキュラーエコノミー(循環経済/循環型経済)とは・意味
©https://ideasforgood.jp/glossary/circular-economy/

この図からもお分かりいただけますように、いくら成長市場にあるサーキュラーエコノミーとはいっても、「Purpose Driven(目的重視)」、「Profit Driven(利益重視)」の2軸で考えた際に、事業者によってNegativeに働く要素が存在することも事実です。

しかし、現在のリニアエコノミーでは、人口増加に伴う必要な資源量の確保が難しいことは明らかですので、持続可能な経済モデルへの転換は、各事業者に企業努力として求められる取り組みの一つになってくることが予想されます。

本コンテンツ、並びにCO2排出量の算定に関しご質問がございましたら、弊社までお問い合わせ下さい。

関連記事一覧