地球温暖化対策に重要な基準Verified Carbon Standard(VCS)とは?概要や認証方法を解説
Verified Carbon Standardとは、国際的なボランタリークレジット認証機関である「Verra(ベラ)」が、運営している温室効果ガス削減プロジェクトから発生するクレジットの品質を保証するための基準です。
さまざまな方法論でクレジットを創出することが可能なため、現在世界で最も取引されているカーボンクレジットでもあります。
今回は、企業が地球温暖化対策を実施するうえで、非常に有益で重要な認証基準であるVerified Carbon Standardについてわかりやすく解説します。
目次
Verified Carbon Standardは、企業がどれだけCO2を減らせたかを評価する基準をつくるプログラムのこと
それでは早速Verified Carbon Standardについて学んでいきましょう。ここではVerified Carbon Standardの概要と運営組織、地球温暖化対策における必要性を解説します。
Verified Carbon Standard概要
Verified Carbon Standardは「VCS」と略されて表記されることもあります。ここでも以下はVCSと呼んでいきます。VCSは「Verra」という組織が提供しているプログラムのひとつで、企業が環境活動を行うことで削減できたCO2の量を評価・確認するための基準です。
「WBCSD(World Business Council For Sustainable Development)」や「IETA(International)「Emissions Trading Association)」などの民間企業が参加している団体が、2005年に設立しました。森林や土地利用に関連するプロジェクト(REDD+を含む)や湿地保全による排出削減など、多義にわたって温室効果ガス削減プロジェクトを支援しています。
Verified Carbon Standardの管理運営は「Verra(ベラ)」
運営絵組織「Verra」は米国に拠点に、自主的なカーボンクレジット市場を推進する非営利団体として、投資アドバイザーの「Climate Wedge社」とパートナー企業の「Cheyne Capital」が設立しました。
カーボンクレジットへの取り組みをメインとしつつ、環境サービスの発行・取引における透明性、信頼性、および品質を確保するための基準を提供しています。特に気候変動対策における企業やプロジェクトの貢献を評価する活動に関しては世界から高い信頼を得ている機関です。
Verified Carbon Standardは地球温暖化対策において必要
地球温暖化は年々深刻さを増しており、温暖化による気温上昇や気候変動は世界にさまざまな異常気象を招き、多大な被害を及ぼしています。次世代に持続可能な社会を残していくためにも、地球温暖化対策は急務です。
VCSは、世界で最も広く使用されている温室効果ガス削減のための基準・評価であり、活動プログラムです。地球温暖化を防ぐためにはCO2の削減が必要で、どれだけCO2を削減できたかを計算し、証明するためのルールを設定しています。これまでのVCS プロジェクトにより、大気中から 10 億トン以上の炭素およびその他の温室効果ガス排出量を削減、除去しました。
個人や企業が温室効果ガスを削減するのには、コスト面でも期間面でも限界があります。しかし、自主的な炭素市場でクレジットを購入することで、現時点では避けられない排出量をすぐに相殺することが可能です。VCS プロジェクトを行うことによって、地球温暖化抑止に貢献ができます。
Verified Carbon Standardによる評価はカーボンクレジットの発行に活用されている
VCSは「Verra」が発行しているカーボンクレジットであり、種類としてはボランタリークレジットになります。ここではカーボンクレジットと、ボランタリークレジットについて解説しましょう。
カーボンクレジットとはCO2削減量を証明する証券のようなもの
カーボンクレジットとは、簡単に言うと「温室効果ガスの削減量をクレジット(排出権)として発行し、証明する証券のようなもの」であり、それらを取り引きすることを「排出権取引」と言います。温室効果ガスのメインはCO2のため、カーボンクレジットは主にCO2の排出量を換算しクレジットとして発行しています。炭素クレジットとも呼ばれています。
具体的にいうと次のようになります。
1.企業がCO2の削減活動を進める上で、努力しても削減不可能な量が発生した
2.その削減できなかった分を「カーボンクレジット(排出許可証)」として購入し、間接的にCO2削減を実施する
3.反対に削減した分を「カーボンクレジット(排出削減証書)」として販売も可能
4.このような形でCO2排出量を金銭的に取引し、資金調達等の手立てとする
VCSはボランタリークレジット
カーボンクレジット発行には国や企業が「ベースラインの排出量と実際の排出量の差分を取引可能にしたもの」である「ベースライン&クレジット方式」と、公的機関が企業や事業者に対して「CO2の排出枠を一定量割り当てる」の「キャップ&トレード方式」があります。さらにクレジットを取り引きする炭素市場には、国や自治体が主導するコンプライアンス(義務)市場と、民間やNGOが主導するボランタリー(任意)市場の2タイプがあります。
VCSは民間の非営利組織が発行するクレジットのため、ボランタリークレジットです。
カーボンクレジットの種類
以下にカーボンクレジットの種類を参考に表にまとめました。
自然ベース | |
排出回避/削減 | 固定吸収/貯留 |
REDD+ その他の自然保護等 | 植林・再植林 耕作地管理 泥炭地修復 沿岸域修復 森林管理 草地保全 等 |
技術ベース | |
排出回避/削減 | 固定吸収/貯留 |
再生可能エネルギー 設備効率の改善 燃料転換 輸送効率改善 廃棄物管理 等 | Direct Air Carbon Capture and Storage(DACCS) Bioenergy crops with Carbon Capture and Storage(BECCS) Enhanced weathering バイオ炭 等 |
Verified Carbon Standardのシステム
VCSのルールや基準について解説していきます。VCSのプログラムには次のように5つの項目があります。それぞれについて簡潔に解説しましょう。
検証済みのカーボン基準
VCSは個人や企業が自主的に温室効果ガス削減を行うために、炭素市場でクレジットを購入し、排出量の削減に貢献することを支援します。検証済みのカーボン基準においては、「国際炭素削減・オフセット同盟 (ICROA)」 によって承認されており、その規定を満たしたプロジェクトに対して認証を行っています。
管轄区域およびネストされたREDD+フレームワーク
森林関連の排出削減活動を行う団体が実施する取り組みと、政府の気候目標を統合するために役立つためのフレームワーク「REDD+」に準拠した認証を実施しています。適切な森林保全プロジェクトが実施されることで温室効果ガス削減と生物多様性の保全に貢献が可能です。
気候、コミュニティ、生物多様性の基準
VCSの気候、コミュニティ、生物多様性の基準は「CCBスタンダード」に準拠しています。「CCBスタンダード」とは特定のプロジェクトが気候、地域社会、生物多様性に具体的な利益をもたらしていることを保証する国際的な基準です。
プラスチック廃棄物削減基準
プラスチックの生産量は年間3億5千万トンを超えています。プラスチック廃棄物に関する プログラムは、あらゆるプラスチックの収集とリサイクル活動に活用できます。プラスチック廃棄物の収集やリサイクルを増やすプロジェクトへの投資を拡大することが可能です。
持続可能な開発の検証済み影響基準
社会および環境プロジェクトの現実世界の利点を認証するための世界最高基準を誇る「SD VIsta」による検証で投資への効果を促します。「SD VIsta」とは、Verraが、国連が定めたSDGs目標に対して新たに制定した認証制度です。
Verified Carbon Standardの認証方法
VCSの認証方法は、前段で紹介した5つから実施したいプログラムを選択します。選択したらプログラムのルールや要件に従ってプロジェクトの文書を作成し提出しましょう。プロジェクトのテンプレートはVerraの公式サイトからダウンロードが可能です。
提出したプロジェクトは第三者機関により厳密に検証と評価が行われます。プロジェクトが認証されたらVerraレジストリに登録され、その後クレジット取引が可能になります。Verraレジストリでは、システム内のプロジェクトとクレジットの独自性も保証されています。
なお、プロジェクトの登録、クレジットの発行、廃止、譲渡のすべてを希望する場合は、有効な Verra Registry アカウントを
取得しなくてはいけません。
具体的な取り組み方法や報告方法はガイドラインを参考に
前段で紹介したそれぞれの項目の取り組み方や報告方法はVerraの公式サイトのガイドラインを参考にしてください。それぞれのページのリンクをご紹介しておきます。
Verra公式サイト⇒https://verra.org/
Verified Carbon Standardは認証クレジット数が10億クレジットに到達!
Verraが発行しているVCSは世界のカーボンクレジットの中でも最大の取引量を誇ります。2009年に最初のクレジット認証を行ってから、その後13年間で合計約1億トンのクレジットを発行しています。
特にアフリカ・ケニアで開発中のREDD+プロジェクト「Chyulu (チユル)Hillis REDD+ Project」は、ケニア南東部のマクエニ郡にある火山性の山岳地域のエコシステムを保全し、さらに生態系を保護する活動を通じて、REDD+クレジットの創出で大気中から10億トン以上の炭素、その他のGHG排出量を削減または除去する事業に発展し、世界から注目を浴びました。
まとめ
国際的なボランタリークレジット認証機関であるVerraが認証・発行するボランタリークレジットVCSについてさまざまな角度から解説しました。
国際的な認証基準というとハードルを高く感じる企業担当の方もいらっしゃるかもしれません。しかし、世界でもっとも広く利用されているVCSプログラムの使用は、将来的な脱炭素化推進を考えたとき、グローバルな認証基準を取得することは自社にとって大いに利益をもたらします。
本コンテンツを参考に、自社での脱炭素化への取り組みにVCS活用を検討してみてはいかがでしょうか。