GHGプロトコルとは?GHGプロトコルの概要から導入手順、メリットまで徹底解説
GHGプロトコルをご存じですか?
GHGプロトコルとは、企業が温室効果ガス排出量を算定・報告するための国際的な基準(ガイドライン)です。世界資源研究所(WRI)と持続可能な発展のための世界経済人会議(WBCSD)が共同で設立した国際的な基準であり、企業や組織が温室効果ガスの排出量を計算し、報告するための方法論を提供しています。
近年、地球温暖化対策の重要性が高まる中、企業には温室効果ガス排出量の削減が強く求められるようになってきました。しかし、自社の排出量を正確に把握し、効果的な削減対策を立てるのは容易ではありません。
そこで注目されているのが、GHGプロトコルです。GHGプロトコルは、世界中の企業が同じ方法で温室効果ガス排出量を測定し、比較できるようにするために作られた基準です。この基準に従うことで、企業は自社の排出量を正確に把握し、削減対策を立てやすくなります。
本コンテンツでは、GHGプロトコルの概要から、企業が導入する際の手順、そして導入によるメリットまで、詳しく解説していきます。地球温暖化対策に取り組む企業にとって、GHGプロトコルは今や欠かせない存在となっています。本記事を読んで、GHGプロトコルについての理解を深め、自社の温室効果ガス排出量管理と削減対策に活かしてください。
目次
GHGプロトコルとは、企業が温室効果ガス(GHG)の排出量を計算し、報告するためのルールブック
GHGプロトコルは、企業が温室効果ガス(GHG)の排出量を計算し、報告するために基準となるものです。これは、世界中の企業が同じ方法でGHG排出量を測定し、比較できるようにするために作られました。これらの基準に従うことで、企業は自社のGHG排出量を正確に把握し、削減対策を立てやすくなります。
また、世界中の企業が同じ基準を使うことで、企業間の比較がしやすくなり、全体としてのGHG排出量削減に役立ちます。
GHGプロトコルでは、下記の通り、大きく4つの内容が定められています。
① 排出量の分類
温室効果ガス(GHG)の排出量を算定するときによく耳にする「スコープ1」、「スコープ2」、「スコープ3」という分類はGHGプロトコルで定められています。スコープ1は、企業が直接的に排出するGHG(燃料の燃焼など)。スコープ2は企業が間接的に排出するGHG(購入した電力の使用など)。スコープ3は企業のバリューチェーン全体で排出されるGHG(原材料の調達、製品の使用・廃棄など)という分類がなされています。
② 算定方法
GHGプロトコルは、GHG排出量の算定方法について、詳しい手順を提供しています。これには、データの収集方法、計算式、排出係数の利用方法などが含まれます。この手順に従うことで、企業は自社のGHG排出量を正確に計算することができます。
③ 報告方法
GHGプロトコルは、企業がGHG排出量を報告する際の様式や内容についても定めています。これにより、企業の報告書は統一された形式で作成され、比較がしやすくなります。
④ 検証方法
GHGプロトコルでは、企業のGHG排出量報告書を第三者機関が検証することを推奨しています。これは、報告書の信頼性を高めるために重要な手続きです。
このようにGHGプロトコルは、気候変動対策において企業が果たす役割を明確にし、その行動を促すための重要なツールなのです。
GHGプロトコルが広まったのは企業にも温室効果ガス排出量の削減が求められるようになったため
GHGプロトコルが国際的に使用されている背景には、地球温暖化対策の重要性が広く認識され、企業にも温室効果ガス排出量の削減が求められるようになったことがあります。各国政府や投資家、消費者などのステークホルダーから、企業のGHG排出量情報の開示を求める声が高まっていることも、GHGプロトコルの普及を後押ししています。
GHGプロトコルに基づいて算定・報告された排出量情報は、企業のサステナビリティ報告書やCDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)などの情報開示プラットフォームで公表されています。これにより、企業のGHG排出量の透明性が高まり、ステークホルダーとの対話や協働を通じた効果的な温室効果ガス削減対策の推進が可能になります。
今後、パリ協定の目標達成に向けて、企業のGHG排出量削減への取り組みがますます重要になると考えられます。GHGプロトコルは、企業のGHG排出量管理の国際標準として、地球温暖化対策の推進に大きく貢献していくことが期待されています。
GHGプロトコル、温対法、省エネ法、SHK制度、ISO14064の違い
GHGプロトコルを学んでいくにあたり、関連ルールが多くでてきます。根拠となる条文や規約など違いがさまざまあるため、困惑してしまう事業者も多くいらっしゃることでしょう。下記に一覧をまとめましたので、ぜひ違いをご確認いただき、自社の対象となるものはどれなのか、それぞれどのようなルールを守る必要があるのかをしっかり見ておきましょう。
※横にスクロールで全体をご覧いただけます。
項目 | GHGプロトコル | 温対法 | 省エネ法 | SHK制度 | ISO14064 |
目的 | 企業のGHG排出量の算定・報告のための 国際的なガイドライン | 日本の温室効果ガス排出量の 削減を目的とした法律 | 日本のエネルギー使用量の 削減を目的とした法律 | 省エネ法に基づく 事業者クラス分け評価制度 | 組織のGHG排出量の 算定・報告・検証のための国際規格 |
対象 | 企業全般 | 年間の温室効果ガス排出量が 3,000t-CO2以上の事業者 | 年間のエネルギー使用量が 原油換算で1,500kL以上の事業者 | 省エネ法の対象事業者のうち、 エネルギー多消費型の事業者 | 組織全般 |
排出量の分類 | スコープ1 スコープ2 スコープ3 | 特に規定なし | 特に規定なし | 特に規定なし | 直接排出と間接排出に分類 |
排出量算定方法 | 各スコープについて、詳細な算定方法を提供 | 事業者が直接的に温室効果ガス排出量を算定。 国が定める算定方法ガイドラインに従う。 | エネルギー使用量を把握 | エネルギー使用量に基づいて、 温室効果ガス排出量を間接的に算定 | 算定方法の原則と要件を規定 |
報告要件 | 排出量の算定結果に加え、使用した手法、 データ源、前提条件などの詳細な情報の 報告を要求 | 温室効果ガス排出量の算定・報告・公表を義務付け | エネルギー使用量等を報告 | エネルギー使用量削減の取り組みを評価し、 クラス分け行い、評価結果に応じて、 中長期計画の作成や定期報告などの 義務が課される。 | 報告の原則と要件を規定。 報告書の様式は規定しない。 |
検証 | 第三者検証は必須ではないが、 推奨されている | 第三者検証を受けることが 義務付けられている | 特に規定なし | 特に規定なし | 検証の原則と要件を規定。 検証報告書の様式も規定。 |
法的拘束力 | なし(自主的なガイドライン) | 地球温暖化対策の推進に関する法律 | エネルギーの使用の 合理化等に関する法律 | エネルギーの使用の 等に関する法律 | なし(自主的なガイドライン) |
国際的な整合性 | 国際的なガイドラインとして 広く認知・使用されている | 温室効果ガス排出量の算定・報告に関しては、 GHGプロトコルなどの国際的な基準との 整合性を図っている | 日本独自の法律 | 日本独自の制度であり、 国際的な標準とは異なる | 国際規格であり、 各国の制度との整合性を図っている |
GHGプロトコルは、企業が温室効果ガス排出量を算定・報告するための国際的なガイドラインです。スコープ1(直接排出)、スコープ2(エネルギー起源の間接排出)、スコープ3(その他の間接排出)に分類して、各スコープについて詳細な算定方法を提供しています。自主的なガイドラインであり、法的拘束力はありませんが、国際的に広く認知・使用されています。
温対法(地球温暖化対策の推進に関する法律)は、日本の温室効果ガス排出量の削減を目的とした法律です。温室効果ガスを一定量以上排出している事業者(年間の温室効果ガス排出量が3,000t-CO2以上の事業者)に対し、温室効果ガス排出量の算定・報告・公表を義務付けています。また、第三者検証を受けることも義務付けられています。
省エネ法(エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律)は、日本のエネルギー使用量の削減を目的とした法律です。一定量以上のエネルギーを使用する事業者(年間のエネルギー使用量が原油換算で1,500kL以上の事業者)に対し、エネルギー使用量等の報告を義務付けています。
参照:https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/enterprise/overview/index.html
SHK制度は、省エネ法に基づく事業者クラス分け評価制度です。省エネ法の対象事業者のうち、エネルギー多消費型の事業者を対象に、エネルギー使用量削減の取り組みを評価し、クラス分け(S、A、B、C)を行います。評価結果に応じて、中長期計画の作成や定期報告などの義務が課されます。
参照:https://ghg-santeikohyo.env.go.jp/files/study/2022/stdy_20220117_3_rev2.pdf
ISO14064は、組織の温室効果ガス排出量の算定・報告・検証のための国際規格です。直接排出と間接排出に分類し、算定方法の原則と要件を規定していますが、具体的な算定方法は規定していません。報告の原則と要件、検証の原則と要件、検証報告書の様式も規定しています。
参照:https://www.env.go.jp/earth/ondanka/ghg-verification/brief_info/mat_2010.pdf
GHGプロトコルの5つの特徴
GHGプロトコルは、企業のGHG排出量算定・報告に関する包括的な基準です。
以下の5つの特徴を持っています。
1.GHG排出量を正しく算定・報告できる
2.スコープ1、2、3に分類して排出量を算定できる
3.排出量の算定・報告方法を標準化できる
4.企業間での排出量の比較可能性を高められる
5.効果的な温室効果ガス削減対策の立案・実行を支援できる
GHGプロトコルは、企業のGHG排出量を直接的な排出(スコープ1)、間接的な排出(スコープ2)、バリューチェーン全体での排出(スコープ3)の3つに分類して算定・報告することを求めています。これにより、企業は自社の排出量をより詳細に把握し、効果的な削減対策を立てることができます。
また、GHGプロトコルは排出量の算定・報告方法を標準化することで、企業間での排出量の比較可能性を高めています。これにより、ステークホルダーは企業のGHG排出量情報を容易に理解・評価することができ、企業の温室効果ガス削減への取り組みを後押しすることができます。
GHGプロトコルは、GHG排出量を正しく算定・報告できる基準
GHGプロトコルでは、基準(Standard)とガイダンス(Guidance)という2種類の⽂書を定めています。基準(Standard)は、組織が温室効果ガス排出量の算定・報告を⾏う上で遵守すべき事項が定められたもので、この基準を遵守しなければ、GHGプロトコルに準拠した算定・報告とは⾔えません。ガイダンス(Guidance) とは、基準に沿って実際に算定・報告を⾏う上での実践的なガイドです。
GHGプロトコルで算定・報告する際の5つの原則
GHGプロトコルでは、GHG排出量の算定・報告を行う際に、以下の5つの原則に基づくことが求められています。
● 妥当性
排出量の算定・報告を行う組織境界を定める際は、事業特性やGHG関連情報の利用目的とユーザーニーズに基づいて適切に定義する必要があります。これにより、算定・報告する情報が利用者の意思決定に関連し、役立つものになります。
>● 完全性
設定した組織境界内では、可能な限りすべての排出源からの排出量を漏れなく算定・報告することが求められます。これにより、企業活動全体の温室効果ガス排出量を把握することができます。
● 一貫性
一定期間にわたって、温室効果ガス排出量の算定・報告方法を一貫して適用することが重要です。データの計算や提示方法について、同一のアプローチと実践を用いることで、経年での比較可能性を確保することができます。
● 透明性
温室効果ガス排出量の算定・報告プロセスにおいては、明確な監査結果に基づいて、関連するすべての問題について客観的かつ首尾一貫した方法で説明し、根拠となる資料を提示することが求められます。これにより、報告された情報の信頼性が担保されます。
● 正確性
GHG排出量の算定・報告に用いるデータの誤差を可能な限り小さくすることを求めています。企業は、データの収集や計算プロセスにおける誤差要因を特定し、それらを最小限に抑えるための措置を講じる必要があります。また、算定結果の不確実性を定量的に評価し、報告することが推奨されています。第三者検証を受けることで、排出量情報の正確性をさらに高めることができます。
これらの原則に従うことで、GHGプロトコルは信頼性の高い基準となっています。
自社にかかわるサプライチェーン全体で連携して取り組める
GHGプロトコルは、企業が自社の温室効果ガス排出量を管理するための国際的なガイドラインですが、その特徴の一つに、サプライチェーン全体での排出量管理を可能にするスコープ3の概念があります。これにより、企業は自社の排出量だけでなく、サプライチェーンの上流から下流までの排出量を把握し、サプライチェーン全体で連携して排出量削減に取り組むことができます。
スコープ3は、企業のバリューチェーン全体で排出される間接的な排出量を対象としており、原材料の調達、製品の使用・廃棄など、自社以外の活動に関連する排出量も含まれます。
企業は、スコープ3の排出量を算定・報告することで、自社の事業活動が及ぼす環境影響をより広範囲で捉えることができます。
サプライチェーン全体での連携による排出量削減の取り組みには、以下のようなものがあります
● 原材料サプライヤーとの協力
企業は、原材料サプライヤーと協力して、原材料の調達・輸送過程における排出量削減に取り組むことができます。例えば、サプライヤーに対して環境配慮型の原材料の使用を求めたり、輸送ルートの最適化を促したりすることで、サプライチェーン上流での排出量を削減できます。
● 製品設計での省エネルギー性能向上
企業は、製品の設計段階から省エネルギー性能を高めることで、製品の使用段階における排出量削減に貢献できます。エネルギー効率の高い製品を開発し、消費者に提供することで、下流での排出量削減を促進できます。
● 物流の効率化
企業は、物流パートナーと協力して、輸送ルートの最適化や積載率の向上、モーダルシフトの推進などに取り組むことで、輸送段階での排出量を削減できます。
● 廃棄物の削減とリサイクルの推進
企業は、サプライチェーンの下流にあたる廃棄段階での排出量削減にも貢献できます。製品の長寿命化や廃棄物の削減、リサイクルの推進などを通じて、廃棄段階での環境負荷を低減できます。
参照:環境省「3R推進協議会」
● 消費者への環境情報の提供
企業は、製品のライフサイクル全体での環境負荷に関する情報を消費者に提供することで、消費者の環境意識を高め、持続可能な消費行動を促すことができます。
このように、GHGプロトコルのスコープ3の概念は、企業がサプライチェーン全体の排出量を把握し、サプライチェーンの各段階にある様々なステークホルダーと連携して排出量削減に取り組むことを可能にします。企業は、スコープ3の排出量情報を活用して、サプライチェーン全体での効果的な排出量削減戦略を立案・実行することができるのです。
今後、企業がサプライチェーン全体での温室効果ガス排出量削減を進めていく上で、GHGプロトコルはますます重要な役割を果たすことが期待されています。企業は、GHGプロトコルを積極的に活用し、サプライチェーンの各段階にあるパートナーと協力しながら、効果的な排出量削減の取り組みを推進していくことが求められています。
算定のためのガイドラインやツールが整っている
GHGプロトコルは、企業がGHG排出量を算定するための詳細なガイドラインやツールを提供しているため、導入がしやすく、効率的かつ精度の高い算定が可能です。その理由は、環境省がGHGプロトコルに基づいた算定方法のガイドラインを公開しており、算定の全容や方法が明確に示されているからです。さらに、製造業、運輸業、農業などの業界別の測定方法も掲載されているため、企業は自社の業種に適した算定方法を選択することができます。
具体的には、以下のようなガイドラインやツールが整備されています。
● GHGプロトコルスコープ 3 排出量の算定技術ガイダンス
● GHGプロトコル 企業バリューチェーン(スコープ3)会計および報告基準
● サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位データベース
● サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドラインン (ver.2.4)
GHG排出量算定ツール「CARBONIX(カーボニクス)
株式会社Sustechが提供するクラウド型脱炭素化支援プラットフォーム「CARBONIX」は、GHG排出量の算定を効率化し、サプライチェーン全体のGHG排出量データベース構築を実現するツールです。CARBONIXは単なる入力ツールではなく、環境保全と事業成長の両立を目指すカーボンニュートラル戦略の策定を支援する脱炭素化支援プラットフォームとして設計されています。
実務上の使いやすさを追求し、膨大なGHG排出量データを円滑かつストレスなく登録できるCARBONIXは、サプライチェーンにおけるGHG排出量の管理方針の策定から、入力、算定、分析、改善策定までワンストップで運用可能であり、事業の脱炭素化を効率化し、実務上の負担を軽減します。また、サプライチェーン全体のGHG排出量を一元管理できるCARBONIXを導入することで、社内の各担当部門への情報収集依頼や集約の体制構築の煩雑さ、グループ内の拠点間で排出量の管理方法が異なることによる集計の難しさ、GHG排出量を算出したものの取引先への情報開示の方法が不明であるといったGHG排出量の運用にまつわる課題を解決できます。
CARBONIXによって事業におけるGHG排出量の算定と全体像の把握を効率化することで、より有効性のあるカーボンニュートラル戦略の策定が可能となります。そして、その戦略の策定と実施が事業展開において様々なメリットを生み、事業成長に繋ぎます。
他企業と比較することができる
GHGプロトコルは、世界中の多くの企業が利用している国際的な基準であるため、自社の排出量や削減の取り組みを他社と比較することができます。その理由は、GHGプロトコルが企業のGHG排出量算定・報告の統一的な基準を提供しているからです。多くの企業がこの基準に従ってGHG排出量を算定・報告しているため、企業間のGHG排出量データの比較可能性が高くなります。
具体的には、自社と同じ業種の企業のGHG排出量データを比較することで、自社の排出量レベルが業界内でどの位置にあるのかを把握することができます。また、同業他社の排出量削減の取り組みを参考にすることで、自社の削減策の立案に活かすことができます。GHG排出量削減で優れた成果を上げている企業を特定し、その取り組みを詳しく調べることで、自社の削減策の参考にすることも可能です。
さらに、GHGプロトコルに基づいて算定・報告されたGHG排出量データを利用することで、投資家、顧客などのさまざまなステークホルダーに自社のGHG排出量削減の取り組みを効果的に伝えることができます。他社との比較を通じて、自社の取り組みの優位性をアピールすることも可能です。サプライチェーンに属する企業同士でGHG排出量データを共有し、比較することで、サプライチェーン全体でのGHG排出量削減の取り組みを効果的に推進することもできます。企業はGHGプロトコルを活用することで、効果的なGHG排出量削減策を立案・実行し、競争力を高めることができるのです。
企業がGHGプロトコルを用いて排出量の算定を行うメリット4つ
メリット①効率的に環境負荷を減らせる
GHGプロトコルを用いることで、企業は自社のGHG排出量をスコープ1、2、3に分類して正確に把握することができます。これにより、自社の事業活動のどの部分で多くのGHG排出が発生しているかを特定し、環境負荷の高い部分に重点的に取り組むことが可能になります。
例えば、工場での生産工程における排出量が大きいと判明した場合、その工程のエネルギー効率を向上させたり、省エネ設備を導入したりすることで、効果的にGHG排出量を削減できます。
また、サプライチェーン全体での排出量も把握できるため、サプライヤーと協力して原材料の調達や輸送方法を見直すことで、サプライチェーン全体の環境負荷を効率的に減らすことができます。
メリット②透明性の高い取り組みができる
GHGプロトコルは国際的に広く認められた基準であるため、これを用いてGHG排出量を算定・報告することで、企業の環境への取り組みの透明性が向上します。GHGプロトコルに基づいて算定された排出量データは、一貫性があり、比較可能性が高いため、顧客や投資家などのステークホルダーに対して信頼性の高い情報を提供することができます。
また、GHGプロトコルに沿った報告を行うことで、企業の環境への取り組みが社会的に認知され、ブランドイメージの向上にもつながります。さらに、CDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)などの国際的な情報開示プラットフォームにおいても、GHGプロトコルに基づいた報告が求められているため、これに対応することで、企業の透明性をアピールすることができます。
メリット③さまざまな環境規制に対応しやすい
今後、世界的に温室効果ガス排出量の削減に向けた取り組みが加速することが予想され、各国政府による環境規制の強化が進むと考えられます。例えば、GHG排出量の報告義務化、排出量規制、炭素税の導入などが検討されています。GHGプロトコルを用いてGHG排出量を算定・管理していれば、これらの規制に円滑に対応することができます。GHGプロトコルに基づいて算定された排出量データは、規制当局の要求する報告様式に合わせて提出しやすく、排出量規制や炭素税の対象となる排出量を正確に把握することができます。
また、GHGプロトコルを用いて自社の排出量の現状と削減ポテンシャルを分析することで、規制に対応するための目標設定や戦略立案がしやすくなります。
メリット④事業コストの削減にもつながる
GHGプロトコルを用いてGHG排出量を算定することは、自社の事業活動におけるエネルギー使用状況や排出量の全体像を把握することにつながります。これにより、エネルギー効率の低い部分や改善の余地がある部分を特定し、効果的な省エネ対策を立案・実行することができます。
例えば、高効率な設備への更新、運用方法の見直し、再生可能エネルギーの導入などにより、エネルギー使用量を削減し、コスト削減を実現することができます。また、サプライチェーン全体での排出量を把握することで、サプライヤーとの協力を通じて、原材料の調達や輸送の効率化を図ることができ、調達コストの削減にもつながります。
さらに、GHGプロトコルに基づく排出量削減の取り組みを通じて、企業の環境パフォーマンスが向上すれば、投資家や消費者からの評価が高まり、ブランド価値の向上や売上の増加などの経済的メリットも期待できます。
企業がGHGプロトコルを導入し活用する手順6STEP
STEP1:環境省のガイドラインを確認し、導入の目的を明確にする
企業がGHGプロトコルを導入する際には、まず環境省が提供する「サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位データベース」や「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン」などを確認し、GHGプロトコルの概要を把握することが重要です。これにより、自社がGHGプロトコルを活用する目的、例えば、自社のGHG排出量の全体像を把握することで効果的な削減対策を立案する、サプライチェーン全体での排出量を管理することでサプライヤーとの協力関係を強化する、ステークホルダーに対して自社の環境への取り組みを効果的にアピールする、などを明確にすることができます。
STEP2:企業内での担当者を決める
GHGプロトコルに基づくGHG排出量の算定や報告には、社内のさまざまな部門からデータを収集し、分析する必要があるため、一定のリソースが必要となります。そのため、GHGプロトコルの導入にあたっては、まず社内で担当者やチームを任命することが重要です。担当者やチームには、環境管理やサステナビリティ経営に関する知識を持つ人材を選定したり、必要に応じて外部の専門家による支援を受けることも検討すべきです。また、経営層からの明確な指示と関与も不可欠です。
STEP3:分類を理解した上で、自社の排出源を特定する
GHGプロトコルでは、GHG排出量をスコープ1、2、3に分類し、さらにスコープ3については15のカテゴリに分類しています。企業は、これらの分類について十分に理解した上で、自社の事業活動に関連する排出源を特定する必要があります。例えば、自社の工場での燃料使用に伴う排出はスコープ1、購入電力の使用に伴う排出はスコープ2、原材料の調達に伴う排出はスコープ3のカテゴリ1(購入した製品・サービス)に該当します。自社の排出源を特定した上で、各排出源に関するエネルギー使用量や活動量のデータを収集します。
関連リンク:https://sustech-inc.co.jp/carbonix/media/knowscopes123/
関連リンク:https://sustech-inc.co.jp/carbonix/media/scope1/
関連リンク:https://sustech-inc.co.jp/carbonix/media/scope2/
関連リンク:https://sustech-inc.co.jp/carbonix/media/scope3/
STEP4:排出量を測定し算定する
収集したデータを用いて、GHGプロトコルのガイドラインに基づいてGHG排出量を算定します。算定には、各排出源に対応する排出係数を用います。例えば、燃料の使用に伴う排出量は、燃料使用量に燃料種別ごとの排出係数を乗じて算定します。GHGプロトコルでは、排出係数データベースが提供されているため、これを活用することができます。また、GHGプロトコルに対応した算定ツールを使用すれば、必要なデータを入力するだけで排出量が自動的に計算されるため便利です。
STEP5:社内で排出量削減戦略を立て、実行する
算定の結果、自社のGHG排出量の全体像が明らかになります。排出量が多い分野や活動を特定し、重点的に削減対策を講じることが重要です。例えば、工場での生産工程における排出量が大きい場合は、高効率な設備の導入や運用方法の見直しによるエネルギー効率の向上、再生可能エネルギーの導入などの対策を立案・実行します。また、サプライチェーン全体での排出量が大きい場合は、サプライヤーとの協力を通じて、原材料の調達や輸送の効率化を図ることが重要です。これらの削減戦略を社内で共有し、実行体制を整えることが必要です。
STEP6:報告書を作成し、社内外に公表する
GHGプロトコルに基づく排出量算定の結果や削減の取り組みについては、年度ごとなど定期的に報告書を作成し、社内外に公表することが重要です。報告書には、排出量の算定結果だけでなく、削減の取り組みの内容やその効果についても記載します。また、経営層のコミットメントや今後の削減目標についても盛り込むことが望ましいでしょう。報告書は、自社のウェブサイトで公開したり、CDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)などの情報開示プラットフォームに提出したりすることで、ステークホルダーに広く情報を発信することができます。報告書の公表を通じて、自社の環境経営の取り組みに関する透明性と説明責任を果たすことが期待できます。
まとめ
GHGプロトコルは、企業が温室効果ガス排出量を算定・報告するための国際的な基準であり、効果的な温室効果ガス削減対策の立案・実行を支援することを目的としています。GHGプロトコルを導入することで、企業は自社のGHG排出量を正確に把握し、効率的に環境負荷を減らすことができます。また、国際的に認められた基準を用いることで、透明性の高い取り組みが可能となり、さまざまな環境規制にも対応しやすくなります。
企業がGHGプロトコルを導入し、活用するには、環境省のガイドラインを確認し、導入の目的を明確にすることが重要です。そして、排出量を測定・算定し、社内で排出量削減戦略を立て、実行します。最後に、報告書を作成し、社内外に公表することで、自社の環境経営の取り組みに関する透明性と説明責任を果たすことができます。
今後、世界的に温室効果ガス排出量の削減に向けた取り組みが加速することが予想される中、GHGプロトコルは企業のGHG排出量管理の国際標準として、ますます重要な役割を果たすことが期待されています。株式会社Sustechが提供するクラウド型脱炭素化支援プラットフォーム「CARBONIX」を活用することで、より効率的かつ効果的にGHG排出量の管理と削減に取り組むことができるでしょう。