新SHK制度の変更点総まとめ。令和6年4月1日よりCO2の算定ルールの変更点について徹底解説

法改正やルール

令和6年4月1日より、温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度(以下、「SHK制度」※排出者が自ら排出量を算定することで自主的取組の基盤を確立すること、情報を公表・可視化することで国民や事業者全体の取り組みを促進することが目的の制度)が改正され、CO2の算定ルールが変更されることになりました。算定対象活動・排出係数・地球温暖化係数の見直しが行われます。令和5年度実績分の報告から適用されますので、特定排出者の方や算定を行っている事業者の方は、変更点について押さえておきましょう。

【環境省】令和6年度報告からの温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度の変更点について

算定対象活動・排出係数・地球温暖化係数が更新されます

変更点4つの概要は次の通りです。

    • 温室効果ガスの種類別に排出量算定の対象となる事業活動と排出係数が定められている一覧表がありますが、その一覧が更新されます。
      更新内容としては、
    • 「新たに算定対象活動として追加された事業活動(赤字)」
    • 「排出係数の区分のみ変更となった既存の事業活動(青字)」
    • 「排出係数の数値のみが変更となった既存の事業活動(緑字)」
    • 「削除された事業活動(黒一重線)」の大きく4パターンです。

次の表は変更があった箇所を示しています。また、CO2を基準とした換算地球温暖化係数(GWP)も変更されます。温室効果ガスの種類ごとの変更前後の数値は、次の表でご確認ください。

エネルギー起源二酸化炭素(CO2)

区分変更都市ガスの使用
燃料の使用
他人から供給された熱の使用
変更なし他人から供給された電気の使用

非エネルギー起源二酸化炭素(CO2)

新規追加石炭の生産
原油の輸送
地熱発電施設における蒸気の生産
炭酸塩の使用
二酸化チタンの製造
電気炉における炭素電極の使用
鉄鋼の製造において生じるガスの燃焼(フレアリング)
潤滑油等の使用
非メタン揮発性有機化合物(NMVOC)を含む溶剤の焼却
ドライアイスの製造
炭酸ガスのボンベへの封入
炭酸ガスの使用
耕地における肥料の使用
区分変更原油又は天然ガスの生産
ソーダ石灰ガラスの製造
エチレン等の製造
廃棄物の焼却
数値変更セメントの製造
アンモニアの製造
カルシウムカーバイドの製造
変更なし原油又は天然ガスの試掘
原油又は天然ガスの性状に関する試験の実施
生石灰の製造
シリコンカーバイドの製造
ソーダ灰の製造
カルシウムカーバイドを原料としたアセチレンの使用
鉄鋼の製造における鉱物の使用
ドライアイスの使用

メタン(CH4)

新規追加コークスの製造
木炭の製造
原油の輸送
天然ガスの輸送
都市ガスの供給
地熱発電施設における蒸気の生産
エチレン等の製造
堆肥の生産
区分変更燃料の使用
原油又は天然ガスの生産
家畜の排せつ物の管理
農業廃棄物の焼却
廃棄物の埋立処分
廃棄物の焼却
工場廃水の処理
下水、し尿等の処理
数値変更電気炉における電気の使用
石炭の生産
原油の精製
家畜の飼養(消化管内発酵)
稲作
変更なし原油又は天然ガスの試掘
原油又は天然ガスの性状に関する試験の実施
都市ガスの製造

一酸化二窒素(N2O)

新規追加木炭の製造
半導体素子等の製造
林地における肥料の使用
堆肥の生産
区分変更燃料の使用
原油又は天然ガスの生産
アジピン酸等の製造
家畜の排せつ物の管理
耕地における肥料の使用
耕地における農作物の残さの肥料としての使用
農業廃棄物の焼却
廃棄物の焼却
工場廃水の処理
下水、し尿等の処理
変更なし原油又は天然ガスの性状に関する試験の実施
麻酔剤の使用

ハイドロフルオロカーボン(HFC)

新規追加マグネシウム合金の鋳造
噴霧器の製造におけるHFCの封入
区分変更原油又は天然ガスの生産
ソーダ石灰ガラスの製造
エチレン等の製造
廃棄物の焼却
数値変更クロロジフルオロメタンの製造
ハイドロフルオロカーボンの製造
冷凍空気調和機器の製造におけるHFCの封入
業務用冷凍空気調和機器の使用開始におけるHFCの封入
業務用冷凍空気調和機器の整備におけるHFCの回収及び封入
変更なしプラスチック製造における発泡剤としてのHFCの使用
噴霧器の使用
溶剤等の用途へのHFCの使用

パーフルオロカーボン(PFC)

新規追加光電池の製造におけるPFCの使用
鉄道事業又は軌道事業用整流器の廃棄
区分変更半導体素子等の製造におけるPFC、HFC又はNF3の使用
数値変更パーフルオロカーボンの製造
変更なし溶剤等の用途へのPFCの使用
削除アルミニウムの製造

六ふっ化硫黄(SF6)

新規追加粒子加速器の使用
区分変更半導体素子等の製造におけるSF6の使用
数値変更六ふっ化硫黄の製造
変圧器等電気機械器具の製造及び使用の開始におけるSF6の封入
変更なしマグネシウム合金の鋳造
変圧器等電気機械器具の使用
変圧器等電気機械器具の点検におけるSF6の回収
変圧器等電気機械器具の廃棄におけるSF6の回収

三ふっ化窒素(NF3)

数値変更三ふっ化窒素の製造
変更なし半導体素子等の製造におけるNF3の使用

 

また、CO2を基準とした換算地球温暖化係数(GWP)も変更されます。
温室効果ガスの種類ごとの変更前後の数値は、次の表でご確認ください。

廃棄物の原燃料使用の位置づけ・様式が変わります

廃棄物の燃料利用又は廃棄物燃料の使用により発生する二酸化炭素が「エネルギー起源CO2」に位置づけられることになりました。

それに伴って、報告様式も変更となります。
それぞれ、次のような欄が設けられました。

【様式第1 第1表】
「②廃棄物の原燃料使用に伴うエネルギー起源CO2」を新設。

特定事務所についても同様に、

【別紙第1表】
「②廃棄物の原燃料使用に伴うエネルギー起源CO2」を新設。

廃棄物の焼却の際は、主目的が燃料利用の場合・廃棄物由来の燃料を使用する場合はエネ起CO2として計上します。熱回収を伴う廃棄物の焼却・廃棄物の単純焼却などその他の場合は非エネ起として扱います。単純焼却以外の場合は、調整後排出量への計上は不要です。廃棄物を原料及び燃料の両方で利用する場合は、全量を燃料利用として計上しましょう。

電気及び熱の係る証書の使用の上限が設定されます

調整後温室効果ガス排出量の調整の際、特定排出者が購入した証書による国内認証排出削減量の控除について、電力に係る証書は他人から供給された電気の使用に伴う二酸化炭素排出量が、熱に係る証書は他人から供給された熱の使用に伴う二酸化炭素排出量が上限となります。

それに伴って、報告様式も変更になりました。

【様式第1第5表の3】
「国内認証排出削減量のうち、グリーンエネルギー二酸化炭素削減相当量の係る情報」を新設。

都市ガス及び熱の事業者別係数が新たに導入されます

ガス事業者と熱供給事業者についても、電気事業者と同様に、基礎排出係数と調整後排出係数が導入されることになりました。現時点では詳細が出ておらず、6月中にWeb上で公表されることになっていますので、時期が来たら確認してみましょう。

新設されるにあたって、様式の変更点は次の通りです。

【様式第1第3表の1】
「エネルギーの使用に伴って発生する二酸化炭素のうち、都市ガスの使用に伴う二酸化炭素の温室効果ガス算定排出量の算定に用いた係数」

【様式第1第3表の2】
「調整後温室効果ガス排出量のうち、都市ガスの使用に伴う二酸化炭素の算定に用いた係数」

【様式第1第3表の5】
「エネルギーの使用に伴って発生する二酸化炭素のうち、他人から供給された熱の使用に伴う二酸化炭素の温室効果ガス算定排出量の算定に用いた係数」

【様式第1第3表の6】
「調整後温室効果ガス排出量のうち、他人から供給された熱の使用に伴う二酸化炭素の算定に用いた係数」

【様式第1別紙第2表の1】
「エネルギーの使用に伴って発生する二酸化炭素のうち、都市ガスの使用に伴う二酸化炭素の温室効果ガス算定排出量の算定に用いた係数」

【様式第1別紙第2表の3】
「エネルギーの使用に伴って発生する二酸化炭素のうち、他人から供給された熱の使用に伴う二酸化炭素の温室効果ガス算定排出量の算定に用いた係数」

SHK制度の改正について不明な点がある場合は、お近くの管轄の地方環境事務所に問い合わせてみましょう。

そもそもSHK制度とはどういう制度?

SHK制度は2006年から導入されている制度です。しかし、算定対象活動や排出係数の見直しはあまりされていませんでした。近年の経営環境や各種機器の性能、科学的知見などを反映し、見直しがされることとなりました。

引用:温室効果ガス排出量の算定・報告・公表制度

SHK制度は「温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度」が正式名称となります。温対法(地球温暖化対策の推進に関する法律)に基づいて、一定量以上の温室効果ガスを排出する事業者に対して、国への排出量の算定、報告が義務付けられています。
全ての温室効果ガスが対象となり、多量に温室効果ガスを排出する事業者は、事業内容に関わらず対象となります。下記の表にてご確認ください。

温室効果ガスの種類対象者
[1]エネルギー起源二酸化炭素
(燃料の使用又は他人から供給された電気若しくは熱の使用に伴い排出されるCO₂)
【特定事業所排出者】

全ての事業所のエネルギー使用量合計が原油換算※1 1,500kl/年以上の事業者が対象です。
具体的には以下の(1)~(4)のいずれかに該当する事業者です。※2

  1. 省エネ法による特定事業者
  2. 省エネ法による特定連鎖化事業者
  3. 省エネ法による認定管理統括事業者又は管理関係事業者のいずれかであって、かつ、全ての事業所のエネルギー使用量合計が1,500kl/年以上の事業者
  4. 上記以外の事業者であって、かつ、全ての事業所のエネルギー使用量合計が1,500kl/年以上の事業者※3
【特定輸送排出者】

  1. 省エネ法による特定貨物輸送事業者
  2. 省エネ法による特定旅客輸送事業者
  3. 省エネ法による特定航空輸送事業者
  4. 省エネ法による特定荷主
  5. 省エネ法による認定管理統括荷主又は管理関係荷主のいずれかであって、かつ、貨物輸送事業者に輸送させる貨物輸送量が3,000万トンキロ/年以上の荷主
  6. 省エネ法による認定管理統括貨客輸送事業者又は管理関係貨客輸送事業者のいずれかであって、かつ、輸送能力の合計が300両以上の貨客輸送事業者
[2]非エネルギー起源二酸化炭素
([1]以外で排出されるCO₂)
【特定事業所排出者】

次の①及び②の要件を満たす事業者※4,※5

①温室効果ガスの種類ごとに定める当該温室効果ガスの排出を伴う活動(排出活動)が行われ、かつ、当該排出活動に伴う排出量の合計量が当該温室効果ガスの種類ごとにCO2換算で3,000トン以上

②事業者全体で常時使用する従業員※6の数が21人以上

[3]メタン(CH₄)
[4]一酸化二窒素(N₂O)
[5]ハイドロフルオロカーボン類(HFC)
[6]パーフルオロカーボン類(PFC)
[7]六ふっ化硫黄(SF₆)
[8]三ふっ化窒素(NF₃)

※1 省エネ法と本制度では、バイオマス由来の燃料や水素、アンモニア等、算定対象となるエネルギーの種類が異なるものがありますが、ここでは省エネ法の算定方法によりエネルギー使用量を算定し、原油換算します。以降は「原油換算」の表記を省略します。
※2 (1)~(4)のいずれかに該当する事業者においてエネルギー使用量合計が1,500kl/年以上となる事業所が含まれる場合は、当該事業所におけるエネルギー起源CO₂排出量も併せて報告します。
※3 (1)~(3)に該当しない事業者は省エネ法により指定又は認定された事業者ではありませんが、(4)はこれらの指定又は認定の取消を受けた事業者が指定又は認定されていた期間の排出量を報告することを想定しています。
※4 要件(Ⅱ-4ページ)を満たす連鎖化事業者(フランチャイズチェーン)についても、加盟している全事業所における事業活動をフランチャイズチェーンの事業活動とみなして報告を行います。
※5 温室効果ガスの種類ごとにCO₂換算で排出量が3,000トン以上となる事業所が含まれる場合は、当該事業所の当該温室効果ガス排出量も併せて報告します。

SHK制度では、自らの活動に伴い輩出したCO2・CH4・N2O・HCFs・PFCs・SF3の排出量「基礎排出量」と、基礎排出量をもとに、クレジット等によって調整した排出量「調整後排出量」を算定します。詳細な算定方法及び報告方法は温室効果ガス排出量の算定・報告・公表制度を参考にしましょう。

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