第77回WHO総会で日本が参加を表明した「ATACH」とは?
今年の5月27日から6月1日に、ジュネーブで第77回WHO総会が開催されました。
日本からは厚生労働大臣政務官や医務技監、国際保健福祉交渉官等が参加し、全29の議題について協議がなされ、保健医療に関する政策決定が行われました。
日本としての方針や取り組みについて、厚生労働大臣が行った政府代表演説では次のような内容が発表されました。
「ATACHへの参加表明」とありますが、ATACHとはAlliance for Transformative Action on Climate and Healthの略称で、気候変動と健康に関する変革的行動のためのアライアンスのことです。ATACHについて詳しく見ていきましょう。
参照:厚生労働省:第77回WHO総会結果
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hokabunya/kokusai/tp210607-01_00014.html
参照:厚生労働省:気候変動と健康に関する変革的行動のためのアライアンス(ATACH)への参加を表明しました
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_40358.html
参照:Alliance for Transformative Action on Climate and Health (ATACH)
https://www.who.int/initiatives/alliance-for-transformative-action-on-climate-and-health
「ATACH」が設立された目的や活動内容は?
ATACHは、2021年に開催されたCOP26(第26回気候変動枠組条約締約国会議)で設立された、気候変動とそれに伴う健康問題に対処することを目指すプラットフォームです。
昨今の異常気象などにより、熱中症や感染症の拡大、水害などによる負傷を引き起こしているという実態が設立の背景です。
ATACHの目的は大きく3つです。
気候変動が進むと、極端な気象現象(例えば熱波・豪雨や洪水・干ばつなど)が起こり、熱中症や感染症(マラリアやデング熱等)、自然災害による怪我など、人々の健康にも悪影響を及ぼします。このようなリスクを減らすための予防策や対策を考え、支援体制等を強化していくことが目的です。
医療システムが自然災害や気候変動による影響を受けないよう、医療施設への再エネの導入やエネルギー効率の改善、耐震・洪水対策、資金調達などで、強靱で持続可能な保健医療システムを構築するために、各国が連携して取り組むことも目的です。
各国の政策立案者や専門家がオンラインプラットフォームで最新の研究結果や成功事例を共有できるようにしたり、定期的なワークショップや医療従事者・政策立案者向けの教育の実施によって、気候変動への対応力を高めます。効果があった対策や成功事例を各国で導入していくことで、全体としての対策強化を行うことも目的の一つです。
日本の「ATACH」への貢献
日本は、既に知識共有・技術支援・政策支援・資金調達の4つの観点でATACHの活動に貢献しています。
例えば、太陽光発電・風力発電などの再生可能エネルギー技術や、空調・断熱・エネルギー管理システムなどのエネルギー効率の技術は世界の中でもトップクラスと言われています。日本の先進的な技術を他国の医療施設などでも導入することで、環境負荷の軽減に貢献できます。
また、日本は地震や台風、津波などの自然災害が多発する国でもあることから、防災技術や災害対応の経験が豊富です。日本の防災技術や災害対応システムは、他国の医療施設の対策強化に活かすことができます。
その他にも、政府開発援助(ODA)を通じた資金提供や、民間企業の技術提供・資金協力などでも貢献しています。
このように、ATACHの取り組みでは、日本の高い技術や独自に培ってきた知識や経験を役立てることができます。
まとめ
第77回WHO総会で日本がATACHに参加を表明したことで、今後国内の環境規制がさらに強化されたり、医療施設等の再エネ化が促進されることが予想されます。
また、企業には気候変動対策だけでなくそれによる健康保護に対する取り組みも求められるようになるかもしれません。今後の動向にも注目です。