B Corpとは?認証の仕組みと企業にもたらすメリットを解説

2023年12月、株式会社アダストリアのグループ会社で、ファッション業界におけるサーキュラーエコノミーの実現を目指す企業として2020年に設立された株式会社ADOORLINK(アドアーリンク)が、社会や環境に配慮した公益性の高い企業に対する国際的な認証制度である「B Corp(ビーコープ)」を取得しました。
このように、2025年2月時点において国内でB Corp認証を取得している企業数は、52社となっています。(※1)これらに該当する企業は、企業規模の大小や事業内容に寄らず幅広く認証を受けており、いかに社会課題や環境問題に関わるあらゆる側面において高い基準を持って行動しているかが、認証を受ける際の重要なポイントとされています。実際に、上記の株式会社ADOORLINKの事例においては、B Corpの認証取得にあたってのアセスメントで、従業員の健康やウェルネス、安全、キャリアアップの将来性、満足度などが評価されたため、特に「従業員」の項目で高いスコアを獲得しています。また、その他にも「コミュニティ」や「顧客」の項目において、ダイバーシティや社会貢献活動、サプライチェーン管理、顧客管理などの取り組みが評価されています。
B corpの評価項目(5つ) | ||||
ガバナンス (企業統治) | 従業員 | コミュニティ | 環境 | 顧客 |
そこで本コンテンツでは、B corpに関する理解を深めるにあたり、B corpの概要から今後の展望までをまとめて解説していきます。
(※1)最新の情報は、以下のB Lab Global Siteよりご確認ください。
URL:https://www.bcorporation.net/en-us/find-a-b-corp/?refinement%5BhqCountry%5D%5B0%5D=Japan
B corpの概要について
Benefit for all corporationの略で、企業の社会的・環境的パフォーマンスを評価し、持続可能なビジネスを推進するための国際的な認証制度を表しています。この制度は、「社会的責任」を持つ企業を守る仕組みを作ることを目的として、アメリカのシューズブランドである「AND1」の設立者らによって創設されました。現在、B corpはアメリカの非営利団体であるB Labによって提供されており、企業が利益の追求だけでなく、社会や環境への貢献を重視していることを証明するものとなっています。
農林水産省:B Corpとは
© https://www.maff.go.jp/j/shokusan/sosyutu/attach/pdf/index-70.pdf
B Corpが目指すところは、企業が環境や社会に与える影響を考慮しながら、持続可能な経営を行うことです。そのためにも、従業員や顧客、地域社会といったステークホルダーに対して責任を持つビジネスの在り方を促進することがこの認証制度が果たすべき役割となっています。農林水産省の公表しているデータによると、2024年9月末時点で、世界のB corp数は9,210となっており、162の業界にこの制度が浸透し始めていることが分かります。
B Corp認証の特徴としては、以下のような点が挙げられます。
社会的・環境的な影響に対する評価 | 企業は、BIA(B Impact Assessmentの略)という評価ツールを使用し、環境、労働環境、コミュニティへの貢献などを測定されます。 |
法的要件 | B Corp認証を取得する企業は、必要に応じて会社の定款を変更し、ステークホルダーの利益を考慮することを明確にする必要があります。 |
透明性と説明責任 | 認証を受けた企業は、社会的・環境的なパフォーマンスを公表し、持続的な改善を続ける必要があります。 |
また、B Corp認証の取得するメリットしては、①ビジネスの差別化、信用の構築、②人材の確保と維持、③グローバルコミュニティの一員になる、④パフォーマンスを計測し、仲間と改善し続ける、といった内容が挙げられます。
①ビジネスの差別化、信用の構築 ④パフォーマンスを計測し、仲間と改善し続ける | (例)ブランド価値の向上 社会的責任を果たす企業としての信頼を得ることになります。 (例)消費者からの支持 倫理的な消費を重視する顧客層の支持を受けやすくなります。 |
②人材の確保と維持 | (例)従業員のエンゲージメント向上 企業理念に共感する従業員のモチベーションが高まります。 |
③グローバルコミュニティの一員になる | (例)投資機会の拡大 ESG投資家やインパクト投資家からの注目が集まりやすくなります。 |
B corpの取得プロセスと評価方法について
まずは、B Corpを取得するためのプロセスをお伝えしていきます。認証に際しては、以下の4つのSTEPを踏む必要があります。一連のSTEPを経て認証に至るまでには、おおよそ1年がかかるとされています。
次に、評価方法について確認していきます。主に上記のSTEP1に関係する部分となります。評価に際しては、B Labが提供するBIA(B Impact Assessment)というツールを使用し、5つの項目に対して用意された平均 200以上の設問を回答し、企業を評価する方法となっています。
B Corpの認証取得で見られる評価項目は、以下の5つです。
ガバナンス(企業統治) | 企業の透明性や倫理的な経営方針。 |
従業員 | 従業員の福利厚生や多様性の確保。 |
コミュニティ | 地域社会への貢献や公平な雇用機会の提供。 |
環境 | 環境負荷の軽減や持続可能な資源の活用。 |
顧客 | 消費者に対する倫理的な対応や製品の安全性。 |
国内のB Corp取得企業の傾向分析について
ここでは、冒頭でもお伝えした国内のB Corp取得企業52社の内訳について、多面的な角度から確認していきます。該当の52社のリストは、本章の最後にあわせて掲載していますので一緒にご確認ください。
業種別分析
【結果】
多様な業種が分布している状況ですが、「コンサル・情報」に関連する業種が最も多く、全体の約4分の1を占める結果となっています。
ビジネスモデル分析
【結果】
B to B、B to Cの分布に偏りはなく、認証企業はそれぞれ半分ずつの割合を占める結果となっています。
分野別得点分析
【結果】
「ガバナンス」や「コミュニティ」では点数の開きが比較的狭いですが、「顧客」と「環境」は、企業のミッションや事業内容によって特徴が出やすいこともあり、得点差が大きくなっています。また、冒頭で紹介した株式会社ADOORLINKの事例においても「従業員」の項目において高い評価を得ていましたが、認証取得済みの企業全体の傾向を見ても、「従業員」の項目は、意図的な雇用機会の提供などにより高い評価を得る企業が出てきている状況でした。
B Corp取得企業一覧(BIA得点の上位企業より降順にて記載。B Lab Global Siteよりデータ抜粋)
BIA得点 | 会社名 | 事業内容 | 認証取得月 |
128 | 株式会社CFCL | ファッションデザイン、販売 | 2022年 7月 |
126.1 | CLASS EARTH株式会社 | オリジナル商品企画、アート、コンサルティング等 | 2024年11月 |
112.3 | 株式会社泪橋ラボ | 国際協力、保健・社会福祉、非営利活動等の調査 | 2018年 6月 |
110.2 | 株式会社ファンドレックス | コンサルティング | 2023年 7月 |
110.1 | 株式会社クラダシ | 社会貢献型ショッピングサイトの運営 | 2022年 6月 |
109.6 | ダノンジャパン株式会社 | 乳製品製造・販売、飲食料品の輸入・マーケティング | 2020年 5月 |
109.1 | アークエルテクノロジーズ株式会社 | 脱炭素化プラットフォーム、新電力、DXコンサル | 2023年 6月 |
102.8 | 五常・アンド・カンパニー株式会社 | 途上国の低所得世帯や中小企業への金融サービス提供 | 2025年1月 |
101.3 | ハーチ株式会社 | デジタルメディア運営、サステナビリティ等支援事業 | 2023年 4月 |
101 | 株式会社エコリング | 買取事業、ブランド品専門店運営販売事業 | 2021年 6月 |
97.8 | 株式会社エイチ・カツカワ | 皮革製品の企画・販売、修理 | 2024年11月 |
95.8 | 株式会社UMITO Partners | 水産・漁業関連コンサルティング事業等 | 2023年 4月 |
95.8 | 東陽電気工事株式会社 | 電気・通信・消防設備工事 | 2024年3月 |
95.3 | 株式会社ナイスコーポレーション | アパレル製造 | 2023年 4月 |
94.4 | ライフイズテック株式会社 | 中高生向けIT・プログラミング教育企画・運営等 | 2022年 9月 |
93.9 | 株式会社シルクウェーブ産業 | 新素材開発 | 2016年 3月 |
93.8 | 株式会社クラフ | 情報セキュリティサービス | 2023年 9月 |
92.5 | 日産通信株式会社 | 移動体工事、アクセス工事、セキュリティ工事 | 2018年 1月 |
92 | 株式会社メップル | 植物由来健康食品の企画・販売 | 2023年11月 |
90.7 | 株式会社ネイチャーズウェイ | 化粧品製造・輸出入・卸/販売・研究開発・OEM | 2023年11月 |
90.1 | 総武建設株式会社 | 住宅の設計・施工・販売、用地の売買・仲介等 | 2023年11月 |
88.1 | 株式会社アルティコ | スポーツウェアブランド運営、メディア運営等 | 2023年12月 |
86.9 | 株式会社オシンテック | ソフトウェア開発・運用、コンサル等 | 2022年 3月 |
86.9 | 株式会社andu amet | 皮革製品の企画、販売 | 2023年11月 |
86.6 | 株式会社STYZ | ドネーションプラットフォーム運営、コンサル等 | 2024年7月 |
86.6 | ファブリック株式会社 | 製品&サービスデザイン、リサーチ、コンサル等 | 2024年9月 |
86.3 | 合同会社レドリボング | ITシステム開発 | 2021年12月 |
85.9 | 株式会社Colere | 人事戦略コンサルティング事業 | 2023年 1月 |
85.6 | 株式会社ルイーダ | コンピュータープログラミング | 2023年 1月 |
85.6 | 株式会社 エヌ・ケー | ハンドバッグ・カバン・小物製造加工・企画・製造卸等 | 2023年 7月 |
85.2 | えそらフォレスト株式会社 | ライフスタイル事業、コンシューマビジネスソリューション事業 | 2023年 6月 |
85.2 | imageMILL株式会社 | ブランディング・広告制作 | 2023年 7月 |
85.1 | 株式会社アーチ | オリジナルブランドの企画、デザイン、販売、卸 | 2024年9月 |
85 | 株式会社pP | パーソナルケア商品販売 | 2023年 6月 |
83.7 | 株式会社People Focus Consulting | 組織開発コンサルティング事業 | 2023年 2月 |
83.6 | 株式会社サニーサイドアップグループ | PR・コミュニケーション | 2024年6月 |
83.5 | アスエネ株式会社 | CO2・ESG評価等クラウドサービス | 2024年5月 |
83.4 | 株式会社ADOORLINK | 衣料品・雑貨等の企画・製造・販売、再販、D2C | 2023年11月 |
83.2 | イチロウ株式会社 | 介護士シェアリング、居宅介護支援、介護施設紹介 | 2024年11月 |
83.1 | 株式会社パブリックグッド | マーケティング/PRの戦略立案・実施 | 2023年 6月 |
82.6 | 合同会社mayunowa | 化粧品製造・販売、スパ運営 | 2022年 3月 |
82.6 | 株式会社Innovation Design | 飲食事業、物販事業、コンサルティング事業 | 2022年12月 |
82.6 | 株式会社Sanu | 貸家業 | 2024年2月 |
82.2 | 株式会社ファーメンステーション | 化粧品・雑貨・食品向け原料提供/開発等 | 2022年 3月 |
81.9 | 石井造園株式会社 | 公共工事、植栽、外構工事、緑地管理等 | 2016年 5月 |
81.6 | 株式会社グッドカルチャーズ | オリジナルグッズの制作・販売 | 2025年1月 |
81.4 | フリージア株式会社 | デイケアサービス | 2016年11月 |
80.9 | 株式会社シグマクシス・ホールディングス | コンサルティング、事業投資 | 2022年 1月 |
80.9 | 株式会社バリューブックス | 書籍の買取 | 2024年10月 |
80.5 | 株式会社ovgo | 飲食の製造・販売等 | 2022年12月 |
80.4 | 株式会社わざわざ | パンや生活雑貨の店舗販売・EC | 2023年 6月 |
80.3 | 株式会社TOMAP | プログラミング教育、Webサイト制作等 | 2024年11月 |
B Corpの今後の展望について
1章でもお伝えしたように、世界のB Corp数は9,210(2024年9月末時点)となっており、B corpの認知度は世界的に高まりつつあります。このような流れを受けて、B corpの今後の展望としては以下のような動向が考えられています。
認証取得企業の増加 | 特に日本やアジア地域での取得企業が増えると予想されます。 |
政策との連携 | 政府や自治体が、B corp認証企業へインセンティブを提供する可能性が考えられます。 |
消費者意識の向上 | エシカル消費(※2)のトレンドが強まり、B corp企業の競争力が高まることが想定されます。 |
(※2)地域の活性化や雇用などを含む、人や社会、地域、環境に配慮した消費行動を表します。
まとめ
本コンテンツでは、B corpに関する理解を深めるにあたり、B corpの概要、取得プロセスと評価方法、国内のB corp取得企業の傾向分析、今後の展望について、順を追って解説してきました。
今やB corpは、企業が社会的・環境的責任を果たしながら持続可能な成長を遂げるための重要な指標となっています。今後もB corpの認証取得を目指す企業が増え、社会全体のサステナビリティが向上していくことが期待されるでしょう。
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