温室効果ガス削減の国際的な取り組みCDM(クリーン開発メカニズム)とは?

基礎知識

CDM(クリーン開発メカニズム)とは何かをご存じでしょうか。

温室効果ガス削減を達成するには世界中の国の協力が必要不可欠です。しかし、開発途上国のように経済的な問題等で、すぐに脱炭素化を推し進めるのが難しい地域も存在します。

そのため、先進国と発展途上国がともに協力して気候変動対策を講じることができるようにと、策定されたのがCDM(クリーン開発メカニズム)です。

CDM(クリーン開発メカニズム)は日本の脱炭素化を推進する取組としても非常に有効な手だてのひとつです。ぜひ本コンテンツをご一読し、CDMについての知見を深めてください。

CDMはクリーン開発メカニズムという国際的な取り組みのこと

CDMは、「Clean Development Mechanism」の略称であり、日本語では「クリーン開発メカニズム」と訳されます。

CDMの主な目的は次の2つです。

□ 先進国が排出量を削減するという約束を果たすことを支援する
□ 発展途上国が持続可能な開発を達成できるよう先進国が支援すること

具体的にいうと、先進国が発展途上国で太陽光発電所を建設するなど環境に優しい取り組みを進めることで途上国の発展が見込めます。そして、取り組みを進めた先進国は途上国で削減できたCO2の一部は自国の削減分としてもカウントでき目標達成義務に貢献することが可能です。このようにCDMは先進国と途上国双方にメリットのある仕組みと言えます。

CDMの取り組みは京都議定書が発端

京都議定書とは1997年のCOP3(地球温暖化防止京都会議)にてCO2の削減目標が設定された2005年に発効した気候変動枠組条約に関する議定書です。先進国が削減対策を行っていくべき旨が書かれており、参加国の温室効果ガス削減目標が定められました。CDMはこの京都議定書の京都メカニズムのひとつで、開発途上国に対する柔軟性措置として策定されたものです。

CDMの種類

CDMのプロジェクトは、以下のように大きく2つに分類されます。

1.排出削減CDMプロジェクト(排出源プロジェクト)
2.新規植林・再植林CDMプロジェクト(吸収源プロジェクト)

それぞれの基準や内容を解説します。

排出削減CDMプロジェクト

排出削減CDMプロジェクトとは温室効果ガス削減のためのプロジェクトです。さらにプロジェクト活動によるクレジット量によって、大規模CDMと小規模のCDMの2種類があります。

排出削減CDMにはさまざまな分野の項目がありますが、代表的なものをいくつかご紹介しましょう。

再生可能エネルギー・エネルギー輸送、需要・製造業・建設・鉱業/鉱物生産・金属製造・廃棄物処理・処分・農業等

大規模CDM

上記でご紹介した分野において大規模で実施されるプロジェクトです。クレジット量が年平均16,000t-CO2以上のプロジェクトについては、大規模CDMに当てはまります。

小規模CDM

小規模なCDMプロジェクトはさらに以下の3つのタイプに分けられ簡易な手続きが適用されます。

タイプ1
再生可能エネルギープロジェクト
最大出力が15MW(又は同量相当分)まで
タイプ2
省エネルギープロジェクト
エネルギー供給又は需要サイドにおける年間の 削減エネルギー消費量が60GWh(又は同量 相当分)まで
タイプ3年間排出削減量が60kt/年のもの

新規植林・再植林プロジェクト

ここでは新規植林・再植林プロジェクトについて解説していきます。

新規植林・再植林CDM

新規植林・再植林プロジェクトにおける具体的な内容は第1約束期間(2008-2012年)においては以下の表のとおりになります。

新規植林
(Afforestation)
・最低50年間は森林ではなかった土地を森林に転換する
・50年以上に渡り草原であった土地を森林に転換する場合等
再植林
(Reforestation)
・過去には森林であった土地を再び森林に転換する
・1989年12月31日以降森林でない土地への植林活動

さらに以下の3つの基準を満たすことが必要です。

1.林冠率10% – 30%以上
2.森林のまとまり0.05ha~1.0ha以上
3.成熟時の樹高2m~5m以上

小規模新規植林・再植林CDM

小規模新規植林・再植林CDMでは、取引コストを削減するため、通常規模と比較して、簡素化された手続き・ルールが設定されており、バンドリングによる活動が行えます。バンドリングとは、取引コストを安くする目的で、複数の小規模CDMプロジェクトをひとつにしたり、活動の明確な特徴を失うことなくポートフォーリオを形成したりすることです。ただし、結合した合計のCO2吸収量は、規定する制限(年間8キロトン)を越えてはいけません。

CERとは

CER とは、認証された 排出削減量 CDMの実施 によって 生じた 排出削減量 に基づくクリーン開発メカニズムCDMを通じて発行されるクレジット先進国は削減量を達成するためにCERを活用することができます。

CDMプロジェクトのベースラインと追加性について

CDMは、「CDMを実施しなかった場合は起きえなかった」(追加性)ことを証明することが義務付けられた制度です。プロジェクトが実施されていなかった場合に排出されているかもしれなプロジェクト境界内の炭素蓄積変化を予測し、(ベースライン)追加的な排出削減を行わなくてはいけません。このようなプロジェクトの追加性は、プロジェクト設計書にてあらかじめ提示する必要があります。

企業がCDMを実施する流れ

ここからは企業がCDMを実施する流れを詳しく解説していきます。

STEP1:事前調査を行う

プロジェクトに参加する場合は、参加者はまず温室効果ガスの排出削減量の事前調査を行う必要があります。

STEP2:プロジェクトデザイン文書を作成する

プロジェクト参加者は、CDMプロジェクトのデザイン文書を作成します。そして投資国・ホスト国それぞれに提出して承認を受けます。文書に記載する項目は以下です。

□ プロジェクト活動概要
□ ベースラインの設定方法
□ プロジェクト活動期間及び、CDMプロジェクトによりCERクレジットを取得できる期間
□ モニタリングの方法や計画
□ 温室効果ガス排出源ごとの温室効果ガス排出量の計算
□ 環境への影響
□ 利害関係者のコメント

STEP3:プロジェクトがCDMの基準に適しているか評価される

プロジェクトデザイン文書は、認定された指定運営主体である民間の第三者認証機関によって検証されます。これは有効化審査と呼ばれる方法です。

検証は、指定された運営主体がCDM の様式と手順、および京都議定書締約国と CDM 理事会の関連決定に定められた要件に照らして行います。

STEP4:CDMプロジェクトを登録する

登録とは、検証したプロジェクトを理事会が正式に承認することです。登録はそのプロジェクト活動に関連するCERの検証、認証、発行の前提条件となります。

【登録手順の詳細】
1.事務局による不備チェック
2.事務局による審査
3.理事会による審査

執行委員会のメンバー 3 名が審査を要求した場合は、プロジェクトは審査を受けなくてはなりませんが、そうでない場合は登録に進むことが可能です。

STEP5:プロジェクトを実施する

登録されたプロジェクトは、承認された排出ベースラインとモニタリング方法を利用して開始されます。

STEP6:CO2排出削減量等を検証される

プロジェクトは承認された監視計画に基づき、要求された量の排出削減が行われたかどうかを検証されます。CDM プロジェクト活動の結果として発生した温室効果ガスの発生源による人為的な削減量が検証され認証されます。

認証とは指定された期間中にプロジェクトが、検証どおりの排出量削減を達成したかどうかを書面で保証するものです。

STEP7:排出削減量のCER(クレジット)が発行される

プロジェクト運営者は、削減量に見合ったクレジットの発行要求とともに、検証報告書を CDM 理事会に提出します。

【CER発行手順の詳細】
1.事務局による不備チェック
2.事務局による審査
3.理事会による審査

締結国または理事会の 3 人のメンバーが審査を要求した場合、発行要求は審査を受けますが、そうでない場合は発行に進むことが可能です。

STEP8:取得したクレジットを売却する

プロジェクトによって取得したCERをプロジェクト参加者等の間で分配、または売却します。

CDMプロジェクトの現状

CDMで発行されるCERはカーボンオフセットにも用いられているクレジットです。CDMはこれまで発行されたクレジットの中では一番多くを占めますが、ピークは2012年までと言われており、近年はボランタリークレジットが主流となっています。

そのため、CDMの後継となる仕組みが必要とされ、国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)において、CDMの後継となる「64メカニズム」について議論されました。今後はCDM関連のプロジェクトに関しては、暫定措置を経て「64メカニズム」へ移管される予定です。今後の動向を注視する必要があります。

まとめ

CDM(クリーン開発メカニズム)についてさまざまな角度から解説しました。CDMについてご理解いただけたのではないでしょうか。脱炭素化は世界的な潮流であり、今後は大手企業だけではなく海外に事業基盤を持つ中小企業にも無縁ではありません。

途上国での事業展開を行いながら、環境への取り組みを行うCDMについて、ぜひ自社での取り組みを検討してはいかがでしょうか。

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