1.5℃目標の実現に向かうためのエネルギーに関する合意がされたCOP28を解説

基礎知識

COP28とは、「国連気候変動枠組条約第28回締結国会議」のこと。2023年11月30日から12月13日に、アラブ首長国連邦のドバイにあるエキスポシティにて開催されました。

会議の目的は気候変動に対処するための国際的な行動と協力を促進することで、世界各国から政策立案者や専門家・非政府組織などの代表者が集まり、地球温暖化を抑制して持続可能な未来を実現するための議論や意思決定が行われています。

ここでは、COP28の要点や成果を紹介します。押さえるべきポイントは3つです。

グローバル・ストックテイクの確認と「2035年目標」設定の指針

グローバル・ストックテイクとは、加盟国の気候変動に関する行動や目標への進捗状況を定期的(5年毎)に評価するしくみのことで、パリ協定において定められました。加盟国が自国の温室効果ガス排出削減目標への達成度や気候変動対策への努力などの進捗をはかり共有することが目的の成果文書です。その第1回が2023年ということで、COP28では各国から成果文書が共有されました。

進捗を“棚卸し”した結果、現時点での温室効果ガス削減効果は、今のペースでは2019年比で2030年までに約2%減程度(途上国は先進国からの経済的・技術的な支援があればより削減効果が得られる見込みですが、それを踏まえても5.3%程度)となります。2050年までに温室効果ガスの排出量を実質0にするには、本来2030年に43%、2035年には60%の削減が求められているのに対し、目標と実態が大きく乖離していることが懸念されました。

成果文書や首脳級会合を経て公布された決定文書には、1.5℃目標(※地球全体の平均気温上昇を産業革命前の水準から1.5℃以内に抑えることを目指すもの)達成のためには緊急的な行動が必要であることや、全ての温室効果ガス・全てのセクターを対象とした排出削減や、分野別貢献(再エネ発電容量を3倍・省エネ改善率を2倍にすること等)が明記されています。

各国は、この決定文書を踏まえて2025年までに「2035年目標」を設定していくことになりますが、気候変動対策に緊急性が求められている分、より高い目標を掲げることとなるでしょう。

化石燃料からの脱却を目指し、2030年までに再エネ容量を3倍・省エネ改善率を2倍に

グローバル・ストックテイクの成果文書を受けて公布された決定文書には、2050年ネットゼロに向けて化石燃料からの脱却をこの10年間で加速する旨が明記されました。

COP28の開催前から注目度の高かった化石燃料の今後の使用について、「段階的な廃止」ではなく「脱却」という抽象的な表現で記されたことが話題となりました。これには、COP28の議長国が石油原産国であるアラブ首長国連邦であった事情もあったのではないかと言われていますが、気候変動対策を行うことによる化石燃料産業にかかわる人々への影響を考え、配慮して公正な移行をしていかなければならないということも記載されています。

ひとまずは化石燃料の使用について「廃止」という措置は取られませんでしたが、今後国内でも再生可能エネルギーの発電設備が増え、省エネ改善(エネルギー効率の向上)がより促進される動きになっていくでしょう。

実際に、COP28に参加した岸田文雄内閣総理大臣は、 12月1日から2日に行われた首脳級会合「世界気候変動サミット」に出席した際に行ったスピーチにて、省エネを徹底しグリーンエネルギーの導入を最大限はかる旨や、排出削減対策の講じられていない新規の国内石炭火力発電所の建設を終了していくことを表明していました。

ロス&ダメージ基金制度の大枠が決定。日本は約14億円の拠出を表明

ロス&ダメージとは気候変動による気象災害などの悪影響によって出た損失や損害のことで、COP27の段階で気候変動の影響に特に脆弱な途上国に対して、それに対応する基金制度の設置を行うことが既に合意されていました。それがこの度のCOP28において、なんと初日に制度の大枠が決定され、早速、運用開始に向けての動きが見られたのです。

ロス&ダメージの基金について、対象を途上国にすること、先進国が立ち上げ経費を拠出すること、世界銀行の下に設置すること、公的資金・民間資金・革新的資金などあらゆる資金源から拠出することなどの大枠が決定されました。

それを受け、各国が基金の立ち上げ経費への拠出表明を行い、日本も1000万米ドル(約14億円)の拠出を表明しました。

これまで、日本を含め世界中がパリ協定の目標達成に向けて取り組んできましたが、今回COP28で進捗状況を評価したことで、目標に対して大きな隔たりがあることが分かりました。日本では、先進国として途上国などへの支援を進めるとともに、自国で化石燃料からの脱却を緊急的に進めるべく、再エネ化や省エネ改善をより強化していくことが予想されます。今後、個人や企業には積極的な行動や対策が求められるでしょう。

出典:【環境省】国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)、京都議定書第18回締約国会合(CMP18)及びパリ協定第5回締約国会合(CMA5)が開催されました

関連記事一覧