ライフサイクルアセスメント(LCA)について理解を深める

基礎知識

2015年、気候変動や環境汚染対策への関心が世界中で高まる中、「国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)」にて、パリ協定が採択されました。本協定は、各国のCO2排出量削減を目的としており、日本もこの協定に参加しました。そしてこれを機に、国内においても「カーボン・オフセット」や「余剰電力売買」などに関連する様々な法制度策定が進められています。今回ご紹介するライフサイクルアセスメント(LCA)も、これらの環境負荷低減のための取り組みのひとつとなります。

また、近年では製品やサービスが環境へ与える影響について、事業者自身が積極的に検証、評価を行うことが求められています。2001年に施行された「循環型社会形成推進基本法」でも、生産者が、その製造段階だけでなく使用後(廃棄やリサイクル)の環境負荷の低減についても一定の責任を負うという内容が付されました。これらの背景を踏まえ、日本でもCSR報告書などにおいてLCAが導入されるケースが増えています。

このように、人々の生活と経済活動は密接に関係しているため、今後はより一層、環境に配慮した事業者の商品やサービスは高く評価されるとともに、それらを供給する事業者自身も社会的評価を高めていく流れになることが見込まれます。本コンテンツを通してライフサイクルアセスメントに関するご理解を深めていただき、自社製品・サービスのライフサイクルの細分化と可視化、並びに環境負荷の低い製品のお届けにお役立ていただけると幸いです。

ライフサイクルアセスメント(LCA)の概要

ライフサイクルアセスメント(以降、LCA)とは、製品やサービスのライフサイクルを通じた環境への影響を評価する手法です。もう少し細かくお伝えすると、工業製品や農業製品、各種サービスにかかる原料調達から、生産、流通、廃棄、リサイクルまで含めたすべてのライフサイクルで生じる環境負荷を、総合的かつ定量的に評価・査定することです。

例えば、昨今『環境にやさしい製品』と打ち出し、古紙や廃棄プラスチックをリサイクルして活用している事業も数多く存在します。しかし、実際には廃棄された古紙やプラスチックを回収してリサイクルするほうが、新しく製品を作るよりも多くのエネルギーを消費し、より多くのCO2を排出している場合もあります。このような事態を避けるためにも、業界・業種を問わずLCAの考え方がしっかりと浸透していく必要があります。

▶従来の環境負荷評価との違い

 従来の環境負荷評価LCA
対象製品やサービスの、
『生産』工程
製品やサービスの、
『生産から廃棄まですべて』の工程
評価方法定性的定量的


©https://www-cycle.nies.go.jp/magazine/mame/20070702.htm
出典:国立環境研究所 循環・廃棄物のまめ知識「ライフサイクルアセスメント(LCA)」

LCAの実施手順

明確に定められたLCAの実施手順は、ありません。
そこで、以下に一例として実施手順の3STEPをお示しいたします。

  • STEP1. ライフサイクルプロセスの可視化
    まずは、どのようなLCA規格においても、製品のライフサイクル(原料の調達・輸送・工場での生産・消費・処分)を「漏れなく・重複なく」細分化し、可視化。
  • STEP2. 各プロセスにおける消費・排出量の確認
    次に、各プロセスで、自社がどれくらいの原材料・電力・燃料等を消費しているのかを確認し、それに伴い廃棄物やCO2、SOx、NOx等をどれほど排出しているのかを整理。
  • STEP3. 各項目の環境負荷を算出
    最後に、企業活動に伴うエネルギー等の消費量、温室効果ガス等の排出量を元に、それぞれの環境負荷を算出。ここで、今後どのような資源を活用して、有効な環境資源の残存量を減らさず、環境負荷の高い物質の排出量を減らすことができるのかを再検討。

各社がLCAを行いその情報を公開すれば、他社との比較によって自社の活動における改善の可能性を見出すことができたり、「○○%のCO2排出削減のためには、コストが××必要」といった定量的な判断を行ったりすることが可能となります。

LCA実施におけるポイント

LCAの実施手順同様、LCAの実施方法においても、ルール化されたものは現状では存在しません。しかし、自社の環境活動を対外的に透明性高く行うためには、ISO*1やカーボンフットプリント*2のような一般的な規格に基づいてアセスメントを実施することがポイントの一つとなります。

また、自社の環境負荷を相対的に評価するためには、(自社の属する)業界の中で信頼性のあるLCA規格を採用することも重要です。もし業界のLCAと自社が用いるLCAの規格が異なれば、環境負荷の影響を他社と比較することができず、信頼性を損なう可能性があるためです。

しかし、LCAの実施を検討する事業者がこのような既存の方法をみても、「やり方が分からない」、「データを収集することが大変」と感じることは少なくないようです。

CARBONIXでは、これまで企業全体や工場単位で算出していたCO2排出量を、各工程単位や製品単位に細分化し、可視化することが可能です。詳細は、「温室効果ガス排出量算出ツール『CARBONIX』」をご覧ください。

*1 ISO14040(/4044)にはLCAの手順が国際規格として定められていますが、CO2の算出方法が詳細に規定されているわけではありません。
*2 カーボンフットプリント ガイドライン(2023年5月、経済産業省、環境省)
参照:https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/carbon_footprint/pdf/20230526_3_1.pdf

LCAの導入事例

以下に、国内企業によるLCAの具体的な取り組み事例をご紹介いたします。

▶マツダ株式会社
車のライフサイクルの違いによる環境負荷の影響について研究を行ったり、生産地域の電力状況や燃費、生涯走行距離など様々な違いを考慮したLCAを実施したりすることで、地域ごとの特色を生かした環境負荷の小さな自動車生産や、顧客に合った車種の提案を可能とした。

参照:マツダ|LCA(ライフサイクルアセスメント)
https://www.mazda.com/ja/sustainability/lca/

▶日産自動車株式会社
中期環境行動計画「ニッサン・グリーンプログラム2022」で、新車からのCO2排出量を2022年までに2000年比で40%削減(日本、アメリカ、欧州、中国)、新車の30%(重量ベース)を新規採掘資源に依存しない材料にするなどの目標を掲げている。これらの実行に際し、LCAによる評価を活用。
(2010年には社団法人産業環境管理協会に、2013年にはテュフラインランドより第三者認証を受けている。)
LCAで得られたデータを活用した結果、多くの車種で内燃機関の効率向上や車両軽量化を実現し、前型よりもCO2排出量を抑えることに成功。

参照:ライフサイクルアセスメント (LCA) | サステナビリティ | 日産自動車企業情報サイト
https://www.nissan-global.com/JP/SUSTAINABILITY/ENVIRONMENT/GREENPROGRAM/FOUNDATION/LCA/

▶富士通グループ
「グリーン製品」評価制度を1998年から導入しており、製品に対してLCAを活用。
公式HPにおいて、富士通グループの製品のライフサイクルにおけるCO2排出のグラフも掲載し、消費者に情報の可視化を行っている。また、その他サービスにおけるLCAの実施にも積極的に取り組んでいる。

参照:富士通グループ「製品LCAの取り組み」,
https://www.fujitsu.com/jp/about/environment/lca/

まとめ

環境対策を行うにあたり、自社の事業活動がどのような影響を与えているのか、正確に見極める必要があります。上述のように、例えば環境に良いと思って実施していた取り組みが、見えないところで実際には環境に悪い影響を与えている、という可能性もあります。そのため、自社の事業活動ではライフサイクルの『どの段階で環境負荷が高く、どこを対策すれば真に地球環境への影響が小さい製品を生み出すことができるのか』を正しく評価し、消費者に少しでも環境負荷の低い製品を届けることが今後の企業姿勢として求められます。

本コンテンツ並びにCO2排出量の算定に関しご質問がございましたら、弊社までお問い合わせ下さい。

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