地熱発電とは?メリットとデメリットを徹底解説:可能性と課題を探る

CO2削減

地球温暖化対策として注目される再生可能エネルギー。

日本の豊富な火山資源を活かせるエネルギーに「地熱発電」がありますが、現在はまだ積極的に活用されているとは言えない状況です。

本コンテンツでは、地熱発電の仕組みから、そのメリット・デメリット、さらには日本における課 題まで徹底解説します。

環境問題に関心が高い方や、再生可能エネルギーの導入を検討している企業の皆様、そしてエネルギー政策に携わる方々にとって、貴重な情報源となるでしょう。

地熱発電が盛んな県や代表的な事例も紹介しているので、地熱資源が豊富な地域の住民の方々にもぜひ参考にしていただきたいと思います。

地熱発電の可能性と課題を探り、日本のエネルギーの未来を共に考えていきましょう。

地熱発電とは?未来のエネルギーを探る

地熱発電は、地球の熱を利用してエネルギーを生み出す革新的な技術です。この方法は、再生可能エネルギーのなかでも注目を集めており、環境への負荷が少ない持続可能な発電方法として期待されています。

地熱発電の可能性はまさに無限大です。

引用:地熱発電の開発(経済産業省資源エネルギー庁)

地球の内部にある膨大な熱エネルギーを効率的に利用することで、安定した電力供給が可能になります。

特に日本は火山国であり、地熱資源が豊富です。この恵まれた環境を活かすことで、エネルギー自給率の向上や二酸化炭素排出量の削減に大きく貢献できる可能性があります。

地熱発電の仕組みを簡単に解説

地熱発電の仕組みは、意外にもシンプルです。

  1. 地下の熱水や蒸気を採取する
  2. 採取した熱水や蒸気でタービンを回す
  3. タービンの回転で発電機を動かし、電気を生成する
  4. 使用済みの熱水は地下に戻す

この循環システムにより、持続的な発電が可能になります。地熱発電所の種類には、フラッシュ方式、バイナリー方式などがありますが、基本的な原理は同じです。

地熱発電の最大の特徴は、天候や時間に左右されず、安定した発電ができる点です。これは、太陽光発電や風力発電にはない大きな利点といえるでしょう。

世界と日本の地熱発電事情

世界の地熱発電の状況を見てみると、アイスランドやニュージーランド、フィリピンなどが積極的に導入を進めています。これらの国々では、地熱発電が主要な電力源の一つとなっています。

国名地熱発電事情
アイスランド電力の約20%を地熱発電
ニュージーランド電力の約13%が地熱発電
フィリピン電力の約9%が地熱発電

一方、日本の地熱発電の現状はどうでしょうか。

実は、日本はアメリカ、インドネシアに次ぐ世界第3位の地熱資源保有国でありながら、その利用率はわずか2%です。

日本の地熱発電所の数は23カ所程度で、総発電量は約54万キロワット。日本の電力需要の0.2%程度を賄っている状態です。

日本の地熱発電が盛んな地域とは

日本の地熱発電所は火山地帯のある東北と九州を中心にあり、豊かな地熱資源を活かした発電が行われています。

北海道森発電所
岩手県松川地熱発電所
松尾八幡平地熱発電所
葛根田地熱発電所
秋田県大沼地熱発電しょ
澄川地熱発電所
上の岱地熱発電所
山葵沢地熱発電所
宮城県鬼首地熱発電所
福島県柳津西山地熱発電所
岐阜県奥飛騨温泉郷中尾地熱発電所
熊本県わいた地熱発電所
南阿蘇湯の谷地熱発電所
大分県杉乃井地熱発電所
滝上発電所
滝上バイナリー発電所
大岳発電所
八丁原発電所
菅原バイナリー発電所
鹿児島県大霧発電所
山川発電所
山川バイナリー発電所
メディポリス指宿発電所

これらの発電所は、地域との良好な関係を築きながら、安定した運転を続けています。

たとえば、八丁原発電所では、地熱の恵みを利用した温泉施設を運営し、地域の観光資源としても活用されています。

また、柳津西山地熱発電所では、地元の温泉事業者との協力体制を構築し、共存共栄を図っています。

そのほか、全国各地で新たな掘削調査が行われており、現行の地熱発電所は今後の地熱発電開発のモデルケースとなるでしょう。

地熱発電のメリットとデメリット

地熱発電には、他のエネルギー源にはない独自の特徴があります。ここでは、そのメリットとデメリットを詳しく見ていきます。

地熱発電のメリット:安定供給の要

地熱発電の最大の利点は、安定した電力供給が可能なところです。そのほかにも以下のようなメリットがあります。

  1. 天候に左右されない:太陽光や風力と異なり、24時間365日発電可能
  2. 高い設備利用率:約70%以上(太陽光は約15%、風力は約20%程度)
  3. CO2排出量が少ない:火力発電の約1/10程度
  4. 国産エネルギー:エネルギー自給率の向上に貢献
  5. 長期運用が可能:一度建設すれば数十年単位で利用可能

これらの特徴から、地熱発電はベースロード電源として非常に有望視されています。

地熱発電のデメリット:課題と対策

一方で、地熱発電にはいくつかの課題も存在します。

  1. 初期投資が高額:地下の調査や掘削に多額の費用が必要
  2. 開発リスクが高い:地下の状況が不確実で、失敗のリスクがある
  3. 場所の制約:地熱資源が豊富な場所に限定される
  4. 環境への影響:景観の変化や温泉への影響が懸念される
  5. 開発に時間がかかる:調査から運転開始まで10年以上かかることも

これらの課題に対しては、技術開発や法整備、地域との合意形成などが重要になってきます。

たとえば、バイナリー発電技術の進歩により、水よりも沸点が低い物質を媒体とした発電が可能になってきています。

また、環境アセスメントの徹底や地域との対話を通じて、地域との共生を図ることも大切です。

火山大国日本と地熱発電の関係

日本は世界有数の火山大国です。この地理的特徴は、地熱発電にとって大きなアドバンテージとなります。

日本の地熱資源量は世界第3位と言われており、その潜在的な発電能力は約2300万キロワットと推定されています。これは、原子力発電所約23基分に相当する膨大な量です。

しかし、現状ではその一部しか活用されていません。その理由としては、以下のような点が挙げられます。

  1. 国立公園内での開発規制
  2. 温泉事業者との調整の難しさ
  3. 高額な初期投資と長期の開発期間

これらの課題を克服し、日本の地熱ポテンシャルを最大限に活かすことができれば、エネルギー自給率の向上や環境負荷の低減に大きく貢献できるはずです。

火山の恵みを活かした地熱発電は、日本のエネルギー戦略において重要な選択肢の一つとなりうるでしょう。今後、技術開発や制度設計の進展により、さらなる普及が期待されます。

地熱発電の課題と将来性

地熱発電は大きな可能性を秘めていますが、同時にいくつかの課題も抱えています。ここでは、その課題と将来性について詳しく見ていきましょう。

なぜ日本は地熱発電を推進しないのか

日本が地熱発電を積極的に推進しない理由には、複数の要因があります。

  1. 法規制の壁:国立・国定公園内での開発制限
  2. 地域との調整:温泉事業者との利害対立
  3. 高いリスクと長期の開発期間:初期投資の回収に時間がかかる
  4. 技術的課題:スケール(鉱物の析出物)対策や地熱貯留層の管理
  5. 社会的認知度の低さ:地熱発電の利点が広く知られていない

これらの課題を解決するためには、法整備や技術開発、そして社会的な理解の促進が必要です。たとえば、地熱開発特区の設置や、温泉事業者との協力モデルの構築などが考えられます。

また、地熱発電の利点や安全性について、より積極的な情報発信を行うことも重要でしょう。地域住民や温泉事業者との対話を通じて、Win-Winの関係を築いていくことが求められます。

地熱発電のコストと経済性

地熱発電のコストは、初期投資が高額である一方、運転コストは比較的低いという特徴があります。

コスト特徴
初期投資・地下調査、井戸掘削、発電設備建設など
・180億円ほどかかる場合もある
運転コスト・運転維持費の平均は13万円/kW/年
・燃料費が不要なので維持管理費は比較的低い
発電コスト・16.7円/1kWh(2020年時点)

初期投資の高さがネックとなっていますが、一度建設すれば長期間にわたって安定した発電が可能です。また、技術の進歩により、今後さらなるコスト低減が期待されています。

経済性の面では、FIT(固定価格買取制度)の導入により、地熱発電の事業性が向上しています。しかし、さらなる普及のためには、初期リスクを軽減する支援策や、より魅力的な買取価格の設定などが必要かもしれません。

企業と地域の挑戦:地熱発電の未来

地熱発電は、企業の技術革新と地域の協力によって大きく発展する可能性を秘めています。この分野での先進的な取り組みは、日本のエネルギー未来を明るく照らす希望の光となっています。

地熱発電に取り組む注目企業

日本には、地熱発電事業に積極的に取り組む企業が複数存在します。これらの企業の挑戦が、地熱発電の未来を切り開いていくのです。

企業名特徴的な取り組み
三菱マテリアル国内最大の地熱発電事業者として、効率的な発電所運営を実現
大林組国内外で地熱発電事業を展開、地熱発電による水素の生産も行っている
川崎重工業バイナリー発電システムの開発・販売を通じて、中小規模の地熱発電を推進
日本重化学工業日本初の商業規模地熱発電に成功

これらの企業は、それぞれ独自の技術や戦略を持って地熱発電事業に挑んでいます。

さまざまな技術革新によって、地熱発電は徐々に広がっているのです。

地域活性化につながる地熱発電

引用:知っておきたいエネルギーの基礎用語 ~地方創生にも役立つ再エネ「地熱発電」(経済産業省自然エネルギー庁)

地熱発電は、単なるエネルギー生産にとどまらず、地域活性化にも大きく貢献しています。地熱の恵みを活かした地域づくりは、新たな雇用を生み出し、観光資源としても注目を集めています。

地熱発電を活用した地域活性化の成功事例をいくつか見ていきましょう。

  1. 大分県九重町:「地熱の恵み」を前面に出した観光戦略
    • 地熱発電所を見学ツアーの目玉に
    • 地熱の蒸気を利用した足湯や温室栽培を観光資源化
  2. 秋田県湯沢市:地熱発電を核とした産業クラスターの形成
    • 地熱関連企業の誘致による雇用創出
    • 地熱を利用した農業や水産業の展開
  3. 鹿児島県指宿市:小規模バイナリー発電の展開
    • 温泉水を利用した発電システムの導入
    • 環境に優しい観光地としてのブランド確立

これらの事例は、地熱発電が地域経済に新たな活力をもたらす可能性を示しています。地域の特性を活かした取り組みが、持続可能な地域発展につながるのです。

技術革新が拓く地熱発電の可能性

地熱発電の未来は、技術革新によってさらに大きく広がっています。新たな技術が、これまで利用できなかった地熱資源の活用を可能にし、発電効率の向上や環境負荷の低減を実現しつつあります。

注目すべき技術革新の例

  1. EGS(Enhanced Geothermal System):
    • 人工的に地下の亀裂を作り、水を循環させて熱を取り出す技術
    • 従来の地熱発電では利用できなかった場所での発電を可能に
  2. 超臨界地熱発電:
    • マグマに近い超高温の熱水を利用する次世代技術
    • 従来の5倍以上の出力が期待される
  3. AI・IoTの活用:
    • 地熱貯留層の管理や発電効率の最適化に活用
    • 予測精度の向上によるリスク低減と運用コストの削減
  4. 新素材の開発:
    • 高温・高圧に耐える新素材の開発
    • スケール(鉱物の析出)対策技術の進化

これらの技術革新により、地熱発電のポテンシャルはさらに拡大しています。実用化されれば、地熱発電はさらに競争力のある電源となるでしょう。

地熱発電推進のための具体的施策

地熱発電の普及を加速させるためには、政府や自治体による積極的な支援が不可欠です。ここでは、地熱発電を推進するための具体的な施策について考えてみましょう。

公的支援と規制緩和の必要性

地熱発電の普及を阻む大きな障壁のひとつが、高額な初期投資と長期の開発期間です。これらの課題を克服するためには、公的支援と規制緩和が重要な役割を果たします。

具体的な施策案

  1. 補助金制度の拡充:
    • 調査・掘削費用への補助金増額
    • 発電設備導入時の税制優遇措置
  2. リスク保証制度の創設:
    • 掘削失敗時のリスクを公的機関が一部負担
    • 民間投資を促進するセーフティネットの構築
  3. 規制緩和:
    • 国立・国定公園内での開発規制の緩和
    • 環境アセスメント手続きの簡素化・迅速化
  4. 送電網整備への支援:
    • 遠隔地の地熱発電所と需要地を結ぶ送電網の整備
    • 系統連系費用の一部公的負担

これらの施策により、民間企業の地熱開発への参入障壁が低くなります。

リスク保証制度があれば、中小企業でも地熱開発に挑戦しやすくなるでしょう。

また、規制緩和により開発可能な地域が増えれば、日本の地熱ポテンシャルをより有効に活用できるようになります。公的支援と規制緩和の適切な組み合わせが、地熱発電推進の鍵となるのです。

温泉事業と小規模地熱発電

地熱発電の推進において、温泉事業者との協力は非常に重要です。温泉地には豊富な地熱資源が存在し、これを有効活用することで、エネルギー生産と観光振興の両立が可能になります。

温泉事業と地熱発電の共生モデル

  1. カスケード利用:
    • 発電後の熱水を温泉や暖房に利用
    • 資源の有効活用と温泉の安定供給を実現
  2. 小規模バイナリー発電の導入:
    • 既存の温泉井戸を利用した発電システム
    • 温泉の泉質や湯量に影響を与えにくい
  3. 利益共有スキームの構築:
    • 発電収益の一部を地域や温泉事業者に還元
    • Win-Winの関係性を構築
  4. 観光資源としての活用:
    • 地熱発電所見学ツアーの実施
    • 環境教育の場としての活用

これらの取り組みにより、温泉事業と地熱発電の共存共栄が可能になります。

大分県別府市では、小規模バイナリー発電の導入により、温泉資源を守りながら再生可能エネルギーの生産を実現しています。

また、長野県小谷村では、温泉熱を利用した小規模発電と熱利用のカスケードシステムを構築し、地域全体でエネルギーの地産地消を進めています。

成功事例を参考に、全国各地の温泉地で地熱発電の導入を検討することで、日本の地熱ポテンシャルをより有効に活用できるでしょう。

地熱発電の将来展望とまとめ

地熱発電は、日本のエネルギー未来を支える重要な選択肢の一つです。安定した電力供給が可能で、環境への負荷も小さい地熱発電には、大きな可能性があります。

この記事では、以下の点について詳しく見てきました。

  1. 地熱発電の仕組みとポテンシャル
  2. 日本の地熱発電の現状と課題
  3. 地熱発電のメリットとデメリット
  4. 企業と地域の先進的な取り組み
  5. 技術革新がもたらす新たな可能性
  6. 地熱発電推進のための具体的施策

地熱発電の普及には、まだいくつかの課題が残されています。しかし、技術革新や制度の整備、地域との協力関係の構築により、これらの課題は着実に克服されつつあります。

今後、政府の支援策や規制緩和、企業の技術開発、地域との連携強化などが進めば、地熱発電はさらに大きく発展する可能性があります。日本の豊富な地熱資源を活かし、持続可能なエネルギー社会を実現するため、地熱発電の推進に向けた取り組みがますます重要になっていくでしょう。

私たち一人ひとりが地熱発電について理解を深め、その可能性と課題について考えることが、日本のエネルギー未来を切り開く第一歩となるのです。地熱発電が日本のエネルギー戦略の中で重要な役割を果たす日も、そう遠くないかもしれません。

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