温室効果ガスとは?基礎知識から国際的な動向まで徹底解説!

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地球上で日々進行している気候変動の問題は、温室効果ガスの排出が大きく関わっています。このガスが地球の温暖化にどのように作用しているのか、また私たちの生活とどのように関連しているのかを理解することは、環境問題への意識を高める上で非常に重要です。また、温室効果ガスの排出について考えることは、今後の経済状況に対応するために必要不可欠なこととなってきました。本記事では、温室効果ガスの種類や特徴から、排出分野、経済への影響、企業の対策、国際的な動向に至るまで、幅広い視点から温室効果ガスについて掘り下げていきます。

温室効果ガスとは

温室効果ガスは、GHG(Green House Gas)という略称があり、地球の気候システムに影響を及ぼしています。そのため温室効果ガスの排出が続くと、それに伴って地球温暖化は進行していくのです。ではまず、温室効果ガスがどのようなプロセスで地球温暖化に繋がっていくのか、図解と共にみていきましょう。

出典:気象庁「温室効果とは

太陽光の吸収

太陽から地球に入射する短波長の可視光線は、大気を通過して地表に達します。地表ではその一部が吸収され、残りが反射します。

赤外線の放出

地表で吸収された太陽光のエネルギーは、地表から長波長の赤外線として再放出されます。

温室効果ガスによる赤外線の吸収

大気中の温室効果ガス分子は、地表から放出された赤外線の一部を吸収します。

赤外線の再放出

吸収した赤外線は、温室効果ガス分子から全方向に再放出されます。その一部は宇宙に逃げますが、一部は地表に向かって放出され、再び地表で吸収されます。

温室効果の増大

このような吸収と再放出のサイクルにより、大気中に留まる赤外線の量が増え、それに伴い地表とその近くの大気が温められる「温室効果」が高まります。

気候変動への影響

温室効果の増大により、地球全体の平均気温が上昇し、気候変動をもたらします。気温上昇に伴い、海面上昇、極端な気象現象の増加、生態系への影響など、様々な影響が生じます。

 

温室効果ガスの種類

温室効果ガスは二酸化炭素(CO2)だけではなく、いくつかの種類が存在します。メタン(CH4)、一酸化二窒素(N2O)、フッ素化ガス(HFCs、PFCs、SF6)といったガスがこれに含まれ、それぞれが地球のエネルギーバランスに異なる影響を与えています。それぞれがどのような特徴をもち、どのように排出されているのか、理解を深めていきましょう。

二酸化炭素(CO2)

二酸化炭素(CO2)は温室効果ガスで一番有名なものですが、炭素と酸素からなる化合物で、元々は地球の大気中に自然に存在するガスです。地球の気候システムに重要な役割を果たしますが、過剰な排出が地球温暖化を引き起こしてしまうのです。

二酸化炭素は以下のような特徴を持ちます。

化学式: CO₂

物理的性質: 無色、無臭のガス。通常の大気圧下では気体ですが、低温高圧下では固体(ドライアイス)となります。

分子構造: 炭素原子1つと酸素原子2つからなる直線状の分子構造を持ちます。

そして二酸化炭素は、自然界、人間活動の両方で発生しています。

自然界での発生

  • 呼吸: 動植物の呼吸活動によって放出されます。
  • 火山活動: 火山の噴火や地殻変動により放出されます。
  • 有機物の分解: 土壌や海洋中での有機物の分解過程で発生します。

人間活動での発生

  • 化石燃料の燃焼: 石炭、石油、天然ガスなどの燃焼によって大量のCO₂が放出されます。これは電力生産、交通、産業活動の主なエネルギー源です。
  • 森林破壊: 森林伐採や焼き畑農業によって、植物に蓄えられていた炭素がCO₂として大気中に放出されます。
  • 工業プロセス: 鉄鋼、セメント、化学工業などの産業活動からもCO₂が排出されます。

二酸化炭素は、100年間の温暖化係数(GWP)は基準の1となっているものの、排出量が多いため、二酸化炭素の排出抑制が地球温暖化防止のカギとなっています。さらに、大気中のCO₂が海洋に溶け込むと、炭酸を形成することで海水が酸性化してしまいます。これにより、海洋生態系の崩壊やサンゴ礁の白化が起きるのです。異常な温室効果以外にも、このような悪影響を及ぼすことがあるため、二酸化炭素の排出抑制は、未来に必要不可欠なものとなるでしょう。

メタン(CH4)

メタン (CH₄) は、炭素と水素からなる化合物で、最も簡単なアルカン(飽和炭化水素)の一種です。

以下のような特徴を持っています。

化学式: CH₄

物理的性質: 無色、無臭のガス。低温では液化し、非常に低温では固体になる。

燃焼性: 可燃性が高く、酸素と反応して二酸化炭素と水を生成する。

CH4+2O2→CO2+2H2O

そしてメタンは、二酸化炭素同様、自然界、人間活動の両方で発生しています。

自然界での発生

  • 湿地: 湿地の嫌気性環境(酸素が乏しい環境)でメタン生成菌が有機物を分解することで発生します。
  • 動物の消化過程: 反芻動物(牛、羊など)の消化過程で発生します。
  • 海底堆積物: 海底の有機物が分解される過程で発生します。

人間活動での発生

  • 農業: 稲作や家畜の飼育によって発生します。特に、稲作では水田の嫌気性条件がメタン生成に寄与します。
  • エネルギー生産: 石炭、石油、天然ガスの採掘・輸送中に漏れ出ることがあります。
  • 廃棄物管理: 埋立地や廃水処理施設で有機廃棄物が分解される際に発生します。

メタンの100年間の温暖化係数(GWP)は28です。つまり、同量のメタンはCO₂の約28倍の温室効果を持ちます。そのため、メタン排出削減は地球温暖化対策で重要視されています。

一酸化二窒素(N2O)

一酸化二窒素(N2O)は、大気中の寿命(一時的な濃度増加の影響が小さくなるまでの時間)が109年と長い気体です。大気中一酸化二窒素の世界平均濃度は年々上昇を続けています。

一酸化二窒素(N2O)は以下のような特徴を持ちます。

化学式: N₂O

物理的性質: 無色、無臭の気体。甘い味があり、吸入すると軽い麻酔効果や鎮痛効果があります。

沸点: -88.5°C

分子構造: 窒素原子が2つ、酸素原子が1つからなる非対称の分子です。

そして一酸化二窒素も上と同様、自然界、人間活動の両方で発生しています。

自然界での発生

  • 土壌微生物活動: 土壌中の微生物が有機物を分解する際に、窒素化合物が変化してN₂Oが生成されます。
  • 海洋: 海洋中の生物活動によっても少量が生成されます。

人間活動での発生

  • 農業: 窒素肥料の使用により土壌中の窒素化合物が増え、それを微生物が分解する過程で大量のN₂Oが発生します。
  • 工業プロセス: 化学工業、特に硝酸の製造過程でN₂Oが排出されます。
  • 燃焼プロセス: 化石燃料やバイオマスの燃焼時にも一部が生成されます。

一酸化二窒素の温暖化係数は265です。メタンと同様に二酸化炭素と比較すると、265倍の温室効果を持つということになります。発生する分野としては農業と化学燃料が中心ではありますが、成層圏オゾン破壊の原因ともなるため、排出削減が必要となっています。

フッ素化ガス(HFCs、PFCs、SF6

フッ素化ガスは、ハイドロフルオロカーボン(HFCs)、パーフルオロカーボン(PFCs)、および六フッ化硫黄(SF₆)などを含む非常に強力な温室効果ガスです。産業活動や製品に広く使用されていますが、その温室効果は二酸化炭素(CO₂)をはるかに上回ります。

それぞれの特徴は以下の通りです。

  • ハイドロフルオロカーボン(HFCs)

化学構造: 炭素、フッ素、水素の化合物。

用途: 冷媒(冷蔵庫、エアコン)、発泡剤、エアロゾル推進剤、消火剤など。

温室効果: HFCsはCO₂の数百倍から数千倍の温暖化係数(GWP)を持ちます。代表例として、HFC-134aのGWPは約1,430です。

  • パーフルオロカーボン(PFCs)

化学構造: 炭素とフッ素のみからなる化合物。

用途: 半導体製造、冷却材、消火剤など。

温室効果: PFCsのGWPは非常に高く、CO₂の数千倍から数万倍に達します。例えば、CF₄のGWPは約7,390です。

  • 六フッ化硫黄(SF₆)

化学構造: 硫黄とフッ素からなる無色無臭のガス。

用途: 電気絶縁体、変圧器、ガス絶縁開閉装置、消火器、工業用途など。

温室効果: SF₆のGWPは約23,500で、非常に強力な温室効果ガスです。

 

フッ素ガスは、今までの温室効果ガスと違い、基本的に人為起源のものです。

ハイドロフルオロカーボン(HFCs)の発生源

冷媒

  • エアコン: 家庭用、商業用、および自動車用のエアコンの冷媒として使用されています。
  • 冷蔵庫・冷凍庫: 家庭用および商業用の冷蔵・冷凍装置で使用されます。

発泡剤

  • 断熱材: 建築用の断熱材や冷蔵庫の断熱材に使用される発泡剤としてHFCsが使われています。
  • 包装材: 食品や工業製品の包装材の発泡プロセスに使用されます。

エアロゾル推進剤

  • スプレー缶: 各種エアロゾル製品(化粧品、医薬品、清掃用スプレーなど)の推進剤として使用されます。

消火剤

  • 消火システム: 特定の消火システムにおいて、HFCsが使用されています。

パーフルオロカーボン(PFCs)の発生源

半導体製造

  • エッチング・洗浄プロセス: 半導体製造において、エッチングガスや洗浄ガスとしてPFCsが使用されます。

冷媒

  • 特殊冷却システム: 特定の産業用冷却システムで使用されますが、HFCsほど広範に使用されていません。

消火剤

  • 特殊消火システム: 特殊な環境下で使用される消火システムにPFCsが使われることがあります。

その他の工業用途

  • 金属加工: 特定の金属加工プロセスで使用されることがあります。

六フッ化硫黄(SF₆)の発生源

電気絶縁体

  • ガス絶縁開閉装置(GIS): 高電圧の電気絶縁体として広範に使用されています。
  • 変圧器・スイッチギア: 高電圧機器の絶縁体やアーク消滅ガスとして使用されます。

半導体製造

  • エッチングガス: 半導体製造プロセスでのエッチングガスとして使用されます。

その他の用途

  • 気象観測用バルーン: 気象観測用のバルーンに充填されることがあります。
  • タイヤインフレーション: 特定の航空機のタイヤに使用されることがあります。

 

フッ素ガスは非常に強力な温室効果を持ちながら、長時間大気中に存在するため、産業廃棄物として漏れ出た場合、地球温暖化に大きく影響します。さらに、温室効果ガス全体の排出量は年々減少していますが、ハイドロフルオロカーボン(HFCs)の排出量は増加傾向にあります。使用が必要となる分野の企業が、確固とした対策を講じることが大切になるでしょう。

 

温室効果ガスを排出しやすい分野

現代社会において、温室効果ガスの排出はさまざまな分野で発生しています。特に産業部門、運輸部門、各部門の業務における電力使用は、主要な排出源として知られています。発電所や自動車の排気ガス、家畜からのメタン排出、ごみの処理過程でのガス発生などが挙げられます。これらの分野は経済活動と密接に関連しており、温室効果ガス削減には、持続可能な経済システムへの転換が求められます。

slide image

出典:環境省「2021年度(令和3年度) 温室効果ガス排出量(確報値)について

温室効果ガスの排出が経済に及ぼす影響

温室効果ガスの排出は、地球温暖化の原因としてのみならず、経済活動にも重要な影響を与えます。気候変動による自然災害の増加は、農業生産の減少やインフラの損傷に繋がり、国の経済に大きなダメージをもたらす可能性があります。また、温室効果ガスの排出削減に向けた政策は、産業構造の変化、新たな技術への投資、グリーンエネルギーへの移行など、対策コストも増大していくでしょう。

しかし、温室効果ガスの排出抑制をすることでプラスな影響をもたらすこともできます。排出抑制の技術革新は、新規市場やビジネス機会の創出に繋がり、再エネの利用率を高めることで化石燃料依存度の低下によるエネルギーリスクを軽減することができます。

企業が温室効果ガスの排出防止に取り組むための手順

カーボンニュートラルに向けて、企業は積極的な排出削減策を講じる必要があります。まずは、自社の温室効果ガス排出量の把握から始め、エネルギー効率の向上、再生可能エネルギーへのシフト、サプライチェーン全体の環境負荷の削減など、具体的な対策を計画して実行に移すことが求められます。また、排出権取引やオフセット(温室効果ガスの排出量を吸収量で相殺する)といった手段を利用して、排出削減に対する経済的インセンティブを創出することも有効です。

海外の温室効果ガス排出防止に向けた動向

海外の主要国や国際機関では、温室効果ガス排出の防止に向けて以下のような取り組みが行われています。

【国際的な枠組み】

  • 京都議定書(1997年採択、2005年発効) 先進国に温室効果ガス排出の法的拘束力のある数値目標を課した初の国際的枠組み。
  • パリ協定(2015年発効) 産業革命前からの地球の気温上昇を2℃未満に抑える努力を約束。各国が排出削減目標を策定・提出。

【主要国の動向】

  • EU:2050年までに温室効果ガス排出実質ゼロを目指す「グリーンディール」を策定。再生可能エネルギー比率引き上げなどを推進。
  • 米国:バイデン政権が「気候変動対策」を最重要課題に位置付け。パリ協定への復帰を表明。
  • 中国:2030年の排出ピークアウト、2060年の炭素中立を目標に掲げる。再生可能エネルギー投資を拡大。
  • 日本:2050年カーボンニュートラル実現を宣言。エネルギー基本計画を見直し、次世代電力への移行を推進。

【国際機関の取り組み】

  • 国連気候変動枠組条約(UNFCCC):各国の削減目標の策定・達成状況をレビュー。
  • 気候変動に関する政府間パネル(IPCC):科学的根拠に基づく政策提言を行う。

こうした国際的な連携体制の下、各国は再生可能エネルギーの導入拡大や省エネ対策、CO2削減技術の開発などの対策を加速させています。

まとめ

温室効果ガスの問題は、地球環境だけでなく、経済活動にも深刻な影響を及ぼします。企業や国家は、排出削減に向けた具体的な行動を取ることが求められており、それには情報の共有と意識の向上が不可欠です。個人としても、日常の選択が地球環境に寄与することを意識し、地球を守るためにできる行動を積極的に取り入れていくことが大切です。持続可能な未来に向けて、私たち一人ひとりが温室効果ガス削減への責任を果たしていくことが、今求められています。

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