自然エネルギーとは?種類やメリット・デメリットをわかりやすく解説

自然エネルギーとは?種類やメリット・デメリットをわかりやすく解説
基礎知識

地球温暖化や エネルギー危機が深刻な問題となる中、自然エネルギーへの注目が世界的に高まっています。

日本のエネルギー自給率は2023年度で15.2%と、先進国の中でも極めて低い水準です。化石燃料の約8割以上を海外からの輸入に依存しています

こうした背景から、太陽光や風力などの自然エネルギーは、持続可能で環境にやさしいエネルギー源として期待されているのです。

しかし、自然エネルギーには様々な種類があり、それぞれ異なる特徴やメリット・デメリットを持っています。

本記事では、自然エネルギーの基本的な定義から具体的な種類、導入時のメリットとデメリット、さらに日本と世界の現状や将来の展望まで、初心者の方にもわかりやすく解説していきます。

自然エネルギーとは?簡単にわかりやすく解説

自然界に存在するエネルギー源から得られるエネルギーである「自然エネルギー」。

太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスなど、地球上で自然に生み出されるエネルギー源を活用したものを指します。

ここでは、自然エネルギーの基本についてわかりやすく解説していきます。

自然エネルギーの定義

自然エネルギーとは、太陽、地熱、風、潮汐流といった自然現象によって得られるエネルギーの総称です。

石油や石炭、天然ガスといった有限な資源である化石エネルギーとは違い、太陽光や風力、地熱といった地球資源の一部など自然界に常に存在するエネルギーのことを指します。

その大きな特徴は、「枯渇しない」「どこにでも存在する」「CO2を排出しない(増加させない)」の3点となっています。

自然エネルギーの多くは太陽光からもたらされるため、原則として太陽が照り続けている限り枯渇の心配はありません。

再生可能エネルギーとの違い

自然エネルギーと再生可能エネルギーは、ほぼ同義で使われることが多いですが、厳密には「自然エネルギー」は太陽光や風力など自然現象由来のエネルギーを指し、「再生可能エネルギー」は使用後も比較的短期間で再生される持続可能なエネルギー源全般を指します。

▼定義の違い

自然エネルギー自然界に元々存在するエネルギー源(太陽光、風力、潮力など)
再生可能エネルギー使用後も比較的短期間で再生される、持続可能なエネルギー源全般

エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律(エネルギー供給構造高度化法)においては、「再生可能エネルギー源」について、「太陽光、風力その他非化石エネルギー源のうち、エネルギー源として永続的に利用することができると認められるものとして政令で定めるもの」と定義されています。

自然エネルギーは再生可能エネルギーの一部で、再生可能エネルギーの中でも、太陽光や風力、地熱など自然現象によって得られるエネルギーのことを指します。

自然エネルギーにはどんな種類がある?

自然エネルギーには、さまざまな種類があります。

  • 太陽光発電
  • 風力発電
  • 水力発電
  • 地熱発電
  • バイオマスエネルギー

など、地球上に自然に存在するエネルギー源を活用しているため、化石燃料とは異なり基本的に枯渇する心配がありません。

ここでは、それぞれのエネルギーの特徴について紹介します。

太陽光発電

太陽光パネルなどを使って、太陽光をエネルギーに変換する発電方式のことを指す太陽光発電は、日本で最も普及している自然エネルギーです。

太陽光発電に使われるシリコン半導体には、光が当たると電気が発生する特性があります。この特性を利用して電気を作っているのが、太陽光発電です。

太陽光発電設備は、太陽光がエネルギー源であることから、再生可能エネルギーの中では比較的導入しやすいことがひとつの理由です。また、用地を占有しない点から、既存施設の未使用スペースに導入できます。

一般家庭でも屋根や壁に設置でき、発電用のスペースを新たに用意する必要がないという特徴があります。

風力発電

風の力によって風車が回ったその動力を発電機でエネルギーに変換する発電方法のことをいう風力発電は、世界的に導入が進んでいる自然エネルギーです。

また、風力発電には山間部や海岸などに設置される「陸上風力」と、海洋上に設置される「洋上風力」の2種類があります。

時間帯の影響を受けないという利点がありますが、太陽光と同じく季節や天候に左右されるため、安定的に電力供給をすることが難しいという課題もあります。

また、大規模で行えばコストを抑えられますが、日本での発電コストは高止まりしているのが現状です。

水力発電

水力発電は、高いところにある水を低いところに落として水流で水車を回し、その回転エネルギーを発電機で電気エネルギーに変換させる発電方法です。

日本は水資源に恵まれているので、水力発電は昔から盛んに行われてきました。国内のみでまかなえる貴重なエネルギー源で、ダムでの大規模な発電だけでなく、河川や農業用水などを利用した中小規模の発電も含めて幅広い規模で行われています。

水力発電は天候などの自然条件に左右されないため、安定したエネルギー供給が可能です。古くから利用されているため技術やノウハウが充実していることも魅力の1つでしょう。

地熱発電

地下に浸透した雨水がマグマによって加熱されてできた蒸気を利用して電気を発生させる方法が地熱発電です。

地熱発電は、地下のマグマの熱で温められた水蒸気がタービンを回し発電する方法です。地熱発電は、太陽光や風力のように気候によらないため安定した電気エネルギーとなりますが、地熱資源量は地下を掘ってみなければわからないというリスクを持ち合わせています。

日本は世界第3位の地熱資源量を誇り、この豊富な資源を活用した再生可能エネルギー発電が期待されています。しかし、土地利用に伴う権利調整やその他の複雑な課題が存在し、十分に活用されていないのが現状です。

バイオマスエネルギー

バイオマスとは、化石燃料以外の、動植物などから生まれた再生可能資源を指します。バイオマス発電は、そのバイオマス燃料を燃やして熱せられた蒸気でタービンを回すことで発電する方法です。

発電の過程では「焼却」が発生するものの、燃料である「バイオマス」は成長時に空気中のCO₂を吸収しており、その量は”焼却時に排出されるCO₂と同量”とされています。そのため結果的には大気中のCO₂量を増やさず、クリーンでエコな発電方法といえます。

太陽光発電などと違い天候に左右されず、燃料さえあれば安定して電気を供給できる発電方法として注目されています。

廃棄物を燃料にできるため、廃棄物の減少や再利用に貢献し、循環型社会を推し進められるというメリットもあります。

その他の自然エネルギー

日本の法律(再生可能エネルギー特別措置法)では、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスの5種類が再生可能エネルギーとして定義されていますが、上記以外の自然エネルギーも進んでいます。

特に注目されているのが海洋エネルギーです。

  • 波力発電
  • 潮流発電
  • 海流発電

また、温度差発電も興味深い技術で、温泉水と冷たい河川水の温度差を利用したり、海水の表層と深層の温度差を利用する海洋温度差発電も研究されています。

これらの新しい自然エネルギーは、日本の地理的特性を活かした独自のエネルギー源として期待されています。

自然エネルギー3つのメリット

自然エネルギーには主に3つのメリットがあります。

  • 環境への負荷が少ない
  • 資源が枯渇する心配がない
  • エネルギー自給率の向上に貢献できる

これらのメリットは、化石燃料に依存した現在のエネルギーシステムが抱える問題を解決する可能性を持っています。

環境への負荷が少ない

再生可能エネルギーは二酸化炭素などの温室効果ガスを排出しなかったり、正味ゼロ(ネットゼロ)にしたりする方法で発電できます。

火力発電で使われる化石燃料などの資源は、使える量に限りがあり、利用することで多くの二酸化炭素が出てしまいます。

一方で、自然エネルギーは発電時にCO2をほとんど排出しないため、地球温暖化の主要な原因である温室効果ガスの排出削減に大きく貢献できます。

気候変動の主要な原因である温室効果ガスの排出削減に寄与でき、さらに大気汚染物質の排出も少ないため、環境にやさしいエネルギー源ともいえるでしょう。

資源が枯渇する心配がない

再生可能エネルギーは自然界に無尽蔵に存在する資源(太陽光、風力、水力、地熱など)もしくは循環型のバイオマスなどを利用するため、枯渇することがありません。

石油や石炭などの化石燃料は限りある資源で、いずれは枯渇する可能性がありますが、自然エネルギーは半永久的に利用できるエネルギー源です。

化石燃料のように徐々に減少し、最終的には使い果たされる心配がないため、将来的に次の世代へ負担を与えない持続可能なエネルギー源であることが再生可能エネルギーならではの大きなメリットです。

太陽が存在する限り、これらの自然エネルギーは継続して利用することができます。

エネルギー自給率の向上に貢献できる

また、資源に乏しい我が国は、エネルギーの供給のうち、石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料が8割以上を占めており、そのほとんどを海外に依存しています。

東日本大震災後、日本のエネルギー自給率は一時10%を下回りましたが、2023年度には15.2%まで回復しています。

再生可能エネルギーは国産のエネルギー源であるため、エネルギー自給率の改善にも寄与することができます。

再生可能エネルギーは、太陽光など地球上にあるものを利用したエネルギーで、日本でも生産が可能です。これをうまく活用すればエネルギー自給率が上がり、資源の乏しい日本でも安定したエネルギー供給が可能となるでしょう。

自然エネルギー3つのデメリット

自然エネルギーにはいくつかの課題も存在します。

  • 出力変動の問題
  • 環境への影響
  • コストの問題

これらの課題を克服するため、蓄電技術の開発、環境アセスメントの徹底、そして継続的な技術革新とコスト削減の取り組みが進められています。

出力変動の問題

加えて、太陽光や風力といった一部の再生可能エネルギーは発電量が季節や天候に左右されます。この際、需要と供給のバランスが崩れると、大規模な停電などが発生するおそれがあります。

太陽光発電は夜間や雨天時には発電できず、風力発電も風が吹かなければ発電量が大幅に減少します。

太陽光発電は、日光が一定量射し込む場所で日照さえ確保できればどこでも発電できるので、以下のように多くのメリットがありますが、一方で、夜間や悪天候の日に発電量が減少するなど、電気の供給量が天候によって変わってしまうことがデメリットです。

このような出力変動により、電力系統の安定性に影響を与える可能性があります。

環境への影響

自然エネルギーは環境にやさしいとされていますが、設備の建設や運用時には一定の環境への影響が生じる場合があります。

大規模な太陽光発電所の建設では森林伐採が必要になることがあり、風力発電では風車の騒音や鳥類への影響が懸念されることがあります。

水力発電では、ダムの建設により河川の生態系や周辺環境に変化をもたらす可能性があります。

これらの影響を最小限に抑えるため、適切な環境アセスメントや配慮が重要となります。

コストの問題

再生可能エネルギーの多くは、火力発電や原子力発電と比べるとエネルギー変換効率が低いことも課題です。

初期投資費用が高額になることが多く、特に地熱発電や洋上風力発電では、設備の建設に莫大な費用がかかります。

しかし、水力発電は初期費用が高いことが課題とされるだけでなく、長期に渡る河川状況の調査も必要であり、運用をすぐに始められないケースも多いといわれています。

ただし、近年は技術革新により太陽光パネルなどの価格は大幅に下降傾向にあり、長期的には経済性が向上することが期待されています。

自然エネルギーの現状と課題

自然エネルギーは世界的に急速な成長を遂げていますが、多くの課題も残されています。

世界や日本でどのように自然エネルギーが導入されているのか、またその課題について見ていきましょう。

世界の自然エネルギー導入状況

欧州では、2023年には、自然エネルギーの年間発電電力量の割合が50%を超える国が多くあり、EU27か国全体の平均でも44.3%に達しており、ウクライナ危機などの影響で化石燃料による発電電力量の割合は32.8%まで減少している。

自然エネルギー財団が発表した2022年の「世界の電源構成」によると、日本をはじめとするアジアでは約60~70%を石炭・石油・ガスなど化石燃料による火力発電に頼っているのに対して、ヨーロッパやアメリカ大陸では自然エネルギー発電(再生可能エネルギー発電)の割合が高い国が多くなっています。

特にデンマークやブラジルでは、再生可能エネルギーの割合が約80〜90%に及びます。

中国では、水力発電に加えて風力や太陽光の導入がこの10年間で急速に進み、2023年には風力発電の年間発電電力量の割合が9.4%、太陽光発電が6.2%で原発(4.6%)を大きく上回り、水力も含めた自然エネルギーの割合は30.9%に達する。

日本の自然エネルギー導入状況

日本国内の2023年度の自然エネルギーによる年間発電電力量の割合は約26%となり、前年度から増加しています。

2023年度の再生可能エネルギーの内訳は、太陽光発電が約9.8%、水力発電が7.6%、バイオマス発電が4.1%、風力発電が1.1%、地熱発電が0.3%です。

日本の再エネ発電設備容量は第6位です。一方、発電電力量に占める再エネの比率は約22%と低いのが現状です。

今後解決すべき課題

さらに、これまで、日本の電力系統は主として大規模電源と需要地を結ぶ形で作られてきましたが、従来の大規模電源が立地している地域と再生可能エネルギー電源のポテンシャルのある地域は、必ずしも一致しません。

そのため、再生可能エネルギーを電力系統に接続する際に、「系統に繋げない」「費用が高い」「時間がかかる」などの系統制約の問題が顕在化しています。

2023年の日本国内の電力需給データでは、自然エネルギーの発電割合は平均で22.3%(発電電力量ベースでは約26%)でした。変動性再生可能エネルギー(VRE)の出力抑制が各地で実施されており、抑制率は多くのエリアで前年より増加。

電力系統の整備と蓄電技術の向上が急務となっています。

自然エネルギーに関する政策・制度

自然エネルギー普及をサポートする、政策や制度にはどのようなものがあるのでしょうか。

カーボンニュートラルな社会に近づくための取り組みを紹介します。

「買取」から「市場連動」へ:FIPの導入

FIP(フィードインプレミアム)制度は2022年4月から開始され、一定規模以上の太陽光や中小水力などは新規認定でFIP制度のみが適用されます。FIP制度は市場価格にプレミアム(補助額)を上乗せして再生可能エネルギーの売電を支援する仕組みです

FIP制度とは再生可能エネルギー(以下再エネ)で発電した電力を、FIT制度のように固定価格で買い取るのではなく、一定の補助額(プレミアムを付与する制度です。

2022年4月から開始されており、発電事業者の投資を促し、再エネ導入を拡大することが目的です。

FIPとは正式には「フィードインプレミアム(Feed-in Premium)」と呼ばれます。市場で電力を販売するときに、予め決められた基準となる価格と市場価格の価格差を、プレミアム(補助額)として付与する制度です。

このように、今後はFITとFIPの2つの制度が併存することになります。

企業の自然エネルギー調達を支える新たな仕組み

FIP制度では、非化石価値が発電事業者に帰属するため、再エネ証書を通じて独自に取引することが可能です。一方、FIT制度では環境価値が国に帰属し、取引の柔軟性が制限されています。

企業が自然エネルギーを調達するための新たな仕組みとして、非化石証書制度やPPA(電力購入契約)などが導入されています。

これにより企業は、自社の脱炭素目標に向けて、より柔軟に自然エネルギーを調達できるようになりました。

FIP制度移行により新たなビジネスチャンスが生まれます。

地域が主役の新しい自然エネルギー政策

さらに、自家消費を促進するオンサイトPPAや需要家主導のオフサイトPPAなどの非FITによる自然エネルギーの導入を地域の自治体や事業者が積極的に推進するための環境整備などを進める必要があります。

地域主導の自然エネルギープロジェクトが各地で展開されており、地域活用電源として小規模太陽光発電やソーラーシェアリングなどが推進されています。

FIT制度は地域活用電源(ソーラーシェアリングを含む小規模太陽光、小規模水力、小規模バイオマス、小規模地熱など)では条件つきで維持される一方で、競争電源(大規模太陽光、風力)については新たにFIP制度が導入されるなど大きく変わりました。

これにより、地域の特性を活かした自然エネルギーの導入が促進されています。

自然エネルギーの将来展望

政府は2050年までにカーボンニュートラルの実現を目指しています。そのため2021年閣議決定した「第6次エネルギー基本計画」で、CO2排出量を最小限に抑えることのできる再エネの導入を最大限増やすことを掲げています。

2030年の電源構成(エネルギーミックス)において、政府は再生可能エネルギーの比率を36~38%に引き上げることを目標としています。

近年の世界的な動向として、2023年11月からドバイで行われたCOP28(国連気候変動枠組条約第28回締約国会議)では、「世界全体の再生可能エネルギー設備容量を2030年までに3倍にする」という新たな目標が掲げられ、日本を含む118カ国が賛同しました。

技術革新の面では、ペロブスカイト太陽電池や浮体式洋上風力の導入、次世代革新炉の開発・設置、水素・アンモニア・CCUSの導入などの取り組みを進めていくとされており、より効率的で低コストな自然エネルギーシステムの実現が期待されています。

また、蓄電技術の向上により出力変動の問題が解決され、自然エネルギーの主力電源化が現実的になってきています。

まとめ

自然エネルギーは、環境負荷が少なく、資源が枯渇しない持続可能なエネルギー源として、世界的に注目が高まっています。

太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスなど様々な種類があり、それぞれ異なる特徴を持っています。

日本では2023年度に自然エネルギーの発電電力量の割合が26.1%に達しましたが、2030年度の目標である36~38%に向けてさらなる導入拡大が必要です。

出力変動や初期コストなどの課題はありますが、FIP制度の導入や技術革新により、これらの問題は徐々に解決されていくと期待されます。

2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、自然エネルギーは重要な役割を果たしていくでしょう。

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