サプライチェーン排出量を算定することで企業が得られるメリット
サプライチェーン排出量算定の担当になったばかりの方は、大変な作業を任されたことにネガティブなイメージを持っているかもしれません。しかし、サプライチェーン排出量の算定は、企業として環境問題に取り組むだけでなく、様々なメリットを得ることができます。
この記事では、環境省が公表している情報などを参考にしながら、サプライチェーン排出量を算定することで企業にどのようなメリットがあるかご紹介していきます。
目次
サプライチェーン 排出量算定の6つのメリット
はじめにご紹介するのは、環境省が「サプライチェーン排出量算定の考え方」という資料で公表している、サプライチェーン排出量を算定する6つのメリットです。
- 削減対象の特定
- 環境経営指標に活用
- 他事業者との連携による削減
- 削減貢献量の評価
- 機関投資家等の質問対応
- CSR情報の開示
企業がサプライチェーン排出量算定を行うことでこのようなメリットがあるとされています。
それぞれのメリットの詳細を一言にまとめると以下のようになります。
メリット | 概要 |
削減対象の特定 | 自社の排出量の全体像を把握し、 優先的に削減すべき対象を特定できる。 |
環境経営指標に活用 | 排出量の削減対策の進捗状況を確認することで、環境経営指標として活用できる。 |
他事業者との連携による削減 | 他事業者と連携した削減策を共同で考案し、取り組むことができる。 |
削減貢献量の評価 | 排出量と削減貢献量を一緒に公表し、削減貢献量の参考指標として活用できる。 |
機関投資家等の質問対応 | 機関投資家や環境格付機関からの質問に回答し、自社の環境経営の取組を発信できる。 |
CSR情報の開示 | WEBサイトなどに掲載し、自社の環境活動への理解を深めてもらうことができる。 |
これだけでは、まだピンとこない方もいらっしゃるかもしれません。
より具体的なメリットを次の章でご説明いたします。
ビジネスの中で具体的に得られる4つのメリット
前の章でご説明したメリットを、より具体的に解説していきましょう。
企業がサプライチェーン排出量を算定することで、以下のようなメリットを得ることができます。
- 企業の環境イメージを高めることができる
- 排出量を削減した結果、コストも削減できる
- 消費者に自社を知ってもらうきっかけにできる
- 取引先との間で新しいビジネスが生まれる
一つずつ詳細をご説明していきます。
企業の環境イメージを高めることができる
自社が環境問題に取り組んでいる企業だと発信していくことは、今の企業ブランディングでは不可欠です。
サプライチェーン排出量を算定していること、排出量削減に取り組んでいることを積極的に発信すれば、自社の環境イメージ向上に繋がります。
環境問題への取り組みに関する第三者認証を取得することも可能です。
特に、海外ではサプライチェーン排出量の第三者認証が重視されており、認証を受けていることは大きな格付けとなります。
主な第三者認証には、SBT、ESI制度、グリーン経営認証制度、ISO14001などがあります。
排出量を削減した結果、コストも削減できる
温室効果ガスの排出量削減に取り組んだ結果、コスト削減も達成できることがあります。
例えば、サプライチェーン排出量を算定したところ、自社製品を入れるために購入していた段ボールで想像以上に温室効果ガスを排出していたことがわかったとします。
この場合、「排出量を削減するために従来より小さな段ボールに変更した結果、段ボール1個あたりのコストが減る」、「段ボールが小さくなって梱包がコンパクトになったことで1度の輸送で運べる量が増え、排気ガスを減らすことができたと同時に輸送コストも減った」等を実現できる可能性があります。
このように排出量を削減するという観点から見直しを図ることは、コスト削減にも繋がるのです。
また、世界では企業や個人の二酸化炭素の排出量に伴い、炭素税というものを導入している国があります。日本でも近年導入される可能性があるため、排出量を算定し削減を進めておくことは、将来的な税金の支払いを軽減できるという意味でもコスト削減に繋がると言えます。
消費者に自社を知ってもらうきっかけにできる
中間製品を製造している企業は消費者との接点が少なく、最終製品を販売する企業のように自社をなかなかPRできず、知名度アップが課題の企業もあるかもしれません。
サプライチェーン排出量を算定していれば、自社が環境に配慮した製品を作りに欠かせない企業であることをデータ等を用いてWebサイトや小冊子などでPRすることが可能です。
このような自社の取り組みをPRすれば、新しいビジネスチャンスの創出や採用ブランディングに活かして行くことができます。
取引先との間で新しいビジネスが生まれる
サプライチェーン排出量の算定をきっかけに取引先企業との関係性を強化できる場合もあります。
Scope3では、他社の温室効果ガス排出量を算定する必要があり、自社から他社に情報共有を依頼することや、他社から情報共有を依頼されることもあります。
このやり取りを通じて、取引先企業から排出量の削減に繋がる新しい製品やアイデアの提案を受けるかもしれません。
また、情報共有を依頼してきた取引先企業に製品やアイデアの提案をできることもあるでしょう。
さらに、新規の取引においても温室効果ガス排出量の削減に繋がる製品であることを理由に、競合他社ではなく自社を選んでもらえる可能性もあります。
このように、サプライチェーン排出量を算定していること、排出量削減に繋がる製品を展開していることを自社や製品の強みになります。
大手企業のサプライチェーン排出量算定の活用例と算定のメリット
環境省のWebサイトには大手企業のサプライチェーン排出量の算定結果や取り組みが公表されています。
取り組み事例として記載されている「算定結果の活⽤⽅法」「算定のメリット」の中からいくつか例を紹介いたします。
企業 | 活用方法やメリット |
化粧品会社 | 製品の使⽤段階の負荷が大きいことが判明したため、環境負荷を低減できる製品を開発・提供した |
健康食品会社 | 持続可能な社会に向けて、どこに投資し、どこに向かっていくかを明確にした |
スーパーマーケット | 環境に配慮した容器等を開発した |
物流会社 | 社内の環境意識向上に活用した他者との環境コミュニケーションの活性化に繋げた |
製薬会社 | 温室効果ガス削減⽬標について、Science Based Targets(SBT)の認証取得した |
まとめ
企業がサプライチェーン排出量を算定するメリットをご説明しました。
最後に、この記事でご紹介した企業が得られる具体的なメリットを、もう一度確認しておきましょう。
- 企業の環境イメージを高めることができる
- 排出量を削減した結果、コストも削減できる
- 消費者に自社を知ってもらうきっかけにできる
- 取引先との間で新しいビジネスが生まれる
この他にも、従業員の環境意識の向上など、サプライチェーン排出量の算定は自社のビジネスの様々な場面で活かしていくことができます。
まずは担当者の方がサプライチェーン排出量を算定するメリットを理解し、それを社内の方々に広めていき、排出量の算定や削減に積極的に取り組む体制を整えていきましょう。