【2024年版速報】再エネ賦課金の単価傾向と減免制度について
経済産業省は3月19日、再生可能エネルギーのFIT(※1)・FIP(※2)制度に基づき、電気料金に上乗せする再エネ賦課金の2024年度の単価を1kWhあたり3.49円に設定することを発表しました。これに伴い、“電気代の大幅値上げ”、“電気代の年1万円増”、”再エネ賦課金おかしい”といった様々なキーワードがネット上では検索されたり、ニュースで取り上げられたりし話題となりました。
再エネ賦課金とは、再生可能エネルギーの固定価格買取制度によって電力の買い取りに要した費用を、電気を使用している私たちが使用量に応じて負担するものとなっています。つまり、再エネ賦課金の増加は、日々の電気料金の支払いに直結してくる重要な問題です。しかしその一方で、再エネ賦課金の大幅な引き上げに関しては、確かに2024年度の決定額は2023年度の支払額の倍2.5倍近い金額となっていますが、実は昨年度が過去の増加傾向に反して大幅に減少していたという背景もあります。
経済産業省 資源エネルギー庁:FIT・FIP制度
©https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/surcharge.html
そこで、本コンテンツでは、再エネ賦課金の概要や単価傾向、減免制度について順を追って解説していきます。
(*1)固定価格買取制度。再生可能エネルギーで発電した電気を一定期間、電力会社が一定価格で買い取ることを国が約束している。2012年7月から導入。
経済産業省 資源エネルギー庁:制度の概要(FIT・FIP制度)
©https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/surcharge.html(*2)フィード・イン・プレミアム制度。再生可能エネルギーで発電した電気を売電した際に、売電収入に加えてプレミアム(補助金)を上乗せした金額が支払われる。2022年4月から導入。
経済産業省 資源エネルギー庁:再エネを日本の主力エネルギーに!「FIP制度」が2022年4月スタート
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再エネ賦課金(ふかきん)とは
再生可能エネルギー発電促進賦課金の略で、電力会社が再生可能エネルギーの電力を買い取るために要した費用の一部を、電気を使用するすべての方が負担するというものです。再生可能エネルギーで発電された電気は日々の電気の一部として供給されているため、毎月の電気料金とあわせて請求されています。賦課金の価格は、毎年度の再生可能エネルギーの固定価格買取制度によって算出され、経済産業大臣が定めています。また、単価は全国一律の単価になるよう、調整が行われています。
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例:再エネ賦課金の算定結果(2023年度)
賦課金単価=(買取費用等―回避可能費用等+広域的運営推進機関事務費)÷販売電力量
1.40円/kWh=(4兆7,477億円―3兆6,353億円+9億円)÷7,946億kWh
※蓄電池併設対応などの制度変更に伴う制度変更に伴うシステム改修費用を含む(2億円)
※買取費用の総額や販売電力量は、年度毎に想定され、設定されます。その結果、生じた推測値と実績値の差分については、翌々年度の再エネ賦課金単価で調整されます。
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<特徴>
・毎月の電力使用量に応じて請求
・電気を使うすべての方が負担
また、再エネ賦課金により目指すべき最終目標は、燃料価格の乱高下に伴う電気料金の変動を抑えることにあります。具体的には、私たちが再エネ賦課金を支払うことで再生可能エネルギーを活用した電気の普及に寄与し、日本のエネルギー自給率を向上させ、化石燃料への依存度の割合を低くしすることを目指しています。その結果、変動の激しい燃料価格に伴う電気料金の値上げを抑えることが可能となり、長期的に見れば再エネ賦課金の支払いが、電気を利用している自分達自身にメリットとして還元される仕組みとなっています。
経済産業省 資源エネルギー庁:固定価格買取制度 再生可能エネルギー ガイドブック 2018年度版
©https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/data/kaitori/2018_fit.pdf
再エネ賦課金の単価傾向と2023年度の減少要因について
2012年度に導入された再エネ賦課金ですが、2023年度を除き増加しています。一方、この2023年度は、前年に比べ半分以下に再エネ賦課金の単価が値下がりしています。主な要因としては、電力市場価格の高騰による回避可能費用(*3)の増加が挙げられます。回避可能費用の増加がどのように影響したのか、もう少し詳しく確認していきます。
2022年度、2023年度の再エネ賦課金の単価を算定するにあたり必要な費用、電力量は以下の図表のとおりです。ご覧いただいておわかりいただけますように、算定式に関連する4つの要素(買取費用等、回避可能費用等、広域的運営推進機関事務費、販売電力量)のいずれかに大きな変化があった場合は、賦課金の金額に変動が生じます。
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再エネ賦課金の算定式:
賦課金単価=(買取費用等―回避可能費用等+広域的運営推進機関事務費)÷販売電力量
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2022年度における想定 | 2023年度における想定 | |
買取費用等 | 4兆2,033億円 | 4兆7,477億円 |
回避可能費用等 | 1兆4,609億円 | 3兆6,353億円 |
販売電力量 | 7,943億kWh | 7,946億kWh |
作表:環境省 資源エネルギー庁のHPを元に筆者作成
作図:環境省 資源エネルギー庁のHPを元に筆者作成
つまり、再エネ買取費用と回避可能費用との差額を中心に再エネ賦課金単価が算出されるため、電力の市場価格が安いと賦課金単価は上昇し、市場価格が高いと賦課金単価が下落するという算定式になっています。2023年度に関しては更に紐解くと、ロシアのウクライナ侵攻などを背景として生じている世界的なエネルギー危機などが、市場価格の変動に影響していたということになります。
(*3)電力会社が再生可能エネルギーを買い取ることにより、本来予定していた発電を取りやめ、支出を免れることができた費用を指す。回避可能費用単価は、以前は一般電気事業者の電気事業に係る原価をベースに算定されていたが、小売全面自由化に伴い、市場価格連動へと移行した。そのため実質的には、再エネを買い取ると想定される電力量を、市場価格で買い取る場合の費用と考えてよい。
減免制度の概要について
電力多消費事業者の国際競争力の維持、強化の観点から、一定の基準を満たす事業所については、経済産業大臣の認定を受けることにより、賦課金の減免措置の適用を受けることが認められています。
経済産業省 資源エネルギー庁:減免認定手続©https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/fit_nintei_genmei.html
減免対象:下記該当期間に小売電気事業者等から供給を受けた電気
減免期間:制度の適用を受ける年度の5月の定例検針分から翌年4月の定例検針分まで
(4月の定例検針等が行われた日から翌年の4月の定例検針等が行われた日の前日まで)
減免率:事業の種類や電気の使用に係る原単位改善に向けた取組の状況(優良基準)により変動
(具体的な減免率は、以下の図表をご確認ください。)
経済産業省 資源エネルギー庁:賦課金減免制度について(概要資料)
©https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/dl/kaisei/gen_gaiyou.pdf
また、以下の5つのSTEPにて減免制度の適用を受けるための手続きを行った後、減免認定を受けた事業所については、法令に基づき、事業者名や認定を受けた事業の内容、電気使用量等の情報が公開されます。
経済産業省 資源エネルギー庁:賦課金減免制度について(概要資料)
©https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/dl/kaisei/gen_gaiyou.pdf
まとめ
本コンテンツでは、再エネ賦課金の概要を確認した後、昨年度に大幅な単価減少が見られ2024年度に再増加した事象について、再エネ賦課金の算定式を分解しながら確認してきました。また、多くの企業が海外への進出、事業拡大を検討していく上で国際競争力の維持、強化を目指すための減免制度についても解説していきました。
5月から今年度の再エネ賦課金として3.49円/ kWhが加算されるにあたり、今後も様々な表現方法で本件が報道されるでしょう。
しかし、情報を精査して現状を正しく理解し、個人として、又は事業者として再エネの普及に必要な対応を行う上で何をすべきか検討することが必要です。
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