CCUSは回収、貯留した二酸化炭素を、再利用・活用しようとする技術であり、注目を集めています。
昨今、日々の経済ニュースを通して、”脱炭素”というキーワードを耳にする機会が増えてきたのではないででしょうか。
先日も、三井住友信託銀行とCCS/CCUSの実証実験が行われている苫小牧市との間で、脱炭素支援に関する提携が発表されました。三井住友信託銀行が、北海道で自治体の脱炭素支援に力を入れ、地元とのつながりが強い信用金庫と連携し、ESG(環境・社会・企業統治)金融を通じて再生可能エネルギーの普及を後押しするというニュース(*1)です。
資源エネルギー庁:CO2を回収して埋める「CCS」、実証試験を経て、いよいよ実現も間近に(前編)
© https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/ccs_tomakomai.html
先日のCCSに続き、あまりまだ聞き馴染みのないCCUSですが、
一体どのような技術を指すのでしょうか。
そこで本コンテンツでは、CCSとCCUS、並びにカーボンリサイクルの違いに関して理解を深め、CCUSの今後の展望について知っていただく機会となれば幸いです。
(*1) 日本経済新聞 (2024年2月21日); 三井住友信託銀行、北海道の信金と自治体の脱炭素支援
CCUSとは
Carbon dioxide Capture, Utilization and Storageの略で、分離・貯留したCO2を利活用する技術を表しています。仕組みとしては、CCSの技術によって大気中などから回収され貯蔵されたCO2を、利活用に向けて最適な形に変換し、次のビジネスに繋げていくというものになります。現状では、アメリカをはじめとする海外での実用化は進んでいます。しかし国内においては、ナショナルプロジェクトや先導研究他は、東京工業大学や早稲田大学、日産自動車株式会社や国立標準技術研究所等複数の技術ごとによる研究発表ベースの報告(*2)は挙がっているものの、いずれもまだ実用化には結びついていない状況です。
JX石油開発:CO2排出抑制と原油増産を両立するPetra Nova CCUS プロジェクトを推進
©https://www.nex.jx-group.co.jp/project/america/usa/ccus.html
経済産業省:CCUS/カーボンリサイクル関係の技術動向
©https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/green_innovation/pdf/001_07_03.pdf(*2) リンカーズ株式会社:カーボンニュートラルに不可欠なCCUSの注目技術事例20選を参照。
以下では、CCSと併せてCCS/CCUSの3段階のフローについて、もう少し詳しく見ていきます。
リンカーズ株式会社:カーボンニュートラルに不可欠なCCUSの注目技術事例20選を参照。
© https://corp.linkers.net/blog/openwithlinkers/7412/
①分離・回収(CCS)
発電所や精製所、化学プラントなどで発生する排ガスに含まれるCO2や大気中に停滞するCO2が対象です。「化学吸収法」や「物理吸着法」、「酸素燃焼法」等様々な手法が使われます。
②輸送・貯蔵(CCS)
パイプラインやタンクローリー、船舶、鉄道で輸送されます。パイプラインはほかの手段と比べて輸送量が大きく、すでにアメリカを中心に活用されていますが、一度敷設してしまうと他の場所への変更がほぼ不可能に点がデメリットです。また、小規模な輸送には、タンクローリーや船舶、鉄道が使用されています。特に船舶は国をまたいだ輸送も可能であるため、今後さらに広く使われる可能性があります。
輸送したCO2を貯留する場所は、地中、もしくは海底になります。
地中の場合は油田にCO2を注入し、その圧力で石油の生産量を向上させる石油増進回収法が開発されています。一方、海洋に関する貯留は、冒頭でもご紹介した苫小牧市での実証実験でも実施しているとおり、製油所の排出ガスからCO2を分離回収し、それを海底に作った井戸に貯留する形です。
③変換・利活用(CCUS)
変換から利活用にかけては、様々な企業や大学の研究室で実証実験が試みられている段階です。例えば海外の事例では、カナダの政府が回収したCO2を建築材料や燃料、消費財などの製品に変換・利用する最先端技術の開発に約95万ドルの投資を行っています。
CCUSの市場規模について
現状でCO₂の回収コストはまだまだ高く課題となっていますが、2050年にかけて低減していく見通しとなっています。それに伴い、CCUSの世界市場は2050年にかけて、10-12兆円となる見通しであると、第一回グリーンイノベーション(GI)戦略推進会議及びワーキンググループにて報告されています。プラントだけではなく、分離回収のための液や膜が、主要な製品となる予定です。
経済産業省:CCUS技術とは
©https://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/global_warming/roadmap/innovation/ccus.html
CCUSとカーボンリサイクルの違いについて
CCUSが、大気中などから回収したCO2を変換し、利活用に繋げる技術の総称を表す一方で、カーボンリサイクルは利活用技術の中で、回収したCO2を化学品や燃料、鉱物等に転換して再利用する技術を表しています。混同されて使われがちですが、CCUSの括りの方が広くなることを改めて確認しておきましょう。
経済産業省 資源エネルギー庁:未来ではCO2が役に立つ?!「カーボンリサイクル」でCO2を資源に
©https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/carbon_recycling.html
経済産業省 資源エネルギー庁:カーボンリサイクルロードマップ概要
©https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/carbon_recycle_rm/pdf/20230623_02.pdf
また、カーボンリサイクルに関する国内外の具体的な産業間連携の事例は、以下にお示しする経済産業省のHPにも記載がありますので、ご興味のある事例に関しては是非アクセスしてみてください。
経済産業省:【別冊2】産業間連携の事例
©https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/carbon_recycle_rm/pdf/20230623_04.pdf
まとめ
本コンテンツでは、CCSの技術内容を再確認し、CCUSの概要と展望、カーボンリサイクルとの違いについて解説させていただきました。
実用化に向けて、各種技術の検討と実証実験が繰り返されている状況となりますが、いずれもまずは目指すところは一緒で、2050年のカーボンニュートラルの実現です。
今回のように、身近なテーマとは少し離れた技術革新の内容に関しても引き続き情報収集を続けていただき、ゆくゆくはご自身の事業の脱炭素経営に繋げていただけますと幸いです。
本コンテンツ、並びにCO2排出量の算定に関しご質問がございましたら、弊社までお問い合わせ下さい。