CO2を回収し貯留する技術CCSの実用化に向けて各国のプロジェクト動向を解説

基礎知識

2024年2月13日、CO2の貯留事業に関する法案として「CCS事業法」が閣議決定され、国会に提出されました。これまで法令上の位置付けが曖昧だったCCS(CO2回収・貯留技術)ですが、ルール策定に伴い「試掘権」、「貯留権」を設けて民間事業者を後押し、CO2排出削減に繋げることが狙いです。2050年に温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする、というカーボンニュートラルの実現に向けた政府の目標に対し、現状では工場や発電所といった脱炭素化が難しい分野があることから、CCSが期待されています。

そこで本コンテンツでは、CCSに関する理解を深め、昨今のCCS関連の動向を把握する機会となれば幸いです。

経済産業省:二酸化炭素の貯留事業に関する法律案【CCS事業法】の概要
©https://www.env.go.jp/content/000201039.pdf

 

パリ協定とは

CCSを理解する上で、必ずといってよいほどセットで出てくるのは、パリ協定です。
CARBONIX MEDIAでも、『温対法の改正を踏まえて、自社がとりくむべきことを解説』、『カーボンニュートラルについて理解を深める』、『ライフサイクルアセスメント(LCA)について理解を深める』、『1.5℃目標の実現に向かうためのエネルギーに関する合意がされたCOP28を解説』、『現代日本の抱える環境問題とは』、『「地球沸騰化」に直面し、事業者に求められていることを解説』といった記事で、パリ協定に関しては取り上げてきました。

ここではまず、パリ協定に内容について、簡単に確認していきます。

2015年12月、第21回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)において、2020年以降の温室効果ガス排出削減等のための新たな国際枠組みとして、パリ協定が採択されました。この協定の特徴として、歴史上はじめて、全ての国が参加し、公平な合意が取り付けられたことが挙げられます。気候変動問題が、国際社会全体から見ても、皆が一丸となって直ちに取り組むべき重要な課題として認識されたことが伺え、その注目度の高さも示唆されています。

パリ協定の概要は、以下の通りです。


  • 世界共通の長期目標として2℃目標(*1)の設定。1.5℃に抑える努力を追求すること。
  • 主要排出国を含む全ての国が削減目標を5年ごとに提出・更新すること。
  • 全ての国が共通かつ柔軟な方法で実施状況を報告し、レビューを受けること。
  • 適応の長期目標の設定、各国の適応計画プロセスや行動の実施、適応報告書の提出と定期的更新。
  • イノベーションの重要性の位置付け。
  • 5年ごとに世界全体としての実施状況を検討する仕組み(グローバル・ストックテイク)。
  • 先進国による資金の提供。これに加えて、途上国も自主的に資金を提供すること。
  • 二国間クレジット制度(JCM)も含めた市場メカニズムの活用。

外務省:2020年以降の枠組み:パリ協定より引用


 

パリ協定を通し目標とされている、いわゆる「2℃目標」の達成に向け、IPCCの第5次報告書の中では、その達成において、炭素固定や炭素除去を前提としたネガティブ・エミッションの実現が必要であることが報告されています。

(*1) 産業革命以前と比較して、世界の平均気温の上昇を2℃未満に抑える目標。

 

環境省:IPCC 第5次評価報告書の概要 -WG1(自然科学的根拠)-
©https://www.env.go.jp/earth/ipcc/5th/pdf/ar5_wg1_overview_presentation.pdf

環境省:IPCC 第5次評価報告書の概要 -WG1(自然科学的根拠)-
©https://www.env.go.jp/earth/ipcc/5th/pdf/ar5_wg1_overview_presentation.pdf

そこで、ネガティブ・エミッションの実現に大きく貢献し得るとされているのが、次章より紹介するCCSです。IEAの報告書内では、2060年までのCO2削減量の合計のうち、14%をCCSで担うことが期待されています。

CCSとは

Carbon dioxide Capture and Storageの略で、CO2を回収し貯留する技術を表しています。仕組みとしては、発電所や化学工場などから排出されたCO2を、ほかの気体から分離して集め、地中深くに貯留・圧入するというものです。現状では、北海道・苫小牧で日本初の大規模な実証試験が行われており、2030年の実用化が目指されています(*2)

経済産業省 資源エネルギー庁:知っておきたいエネルギーの基礎用語 ~CO2を集めて埋めて役立てる「CCUS」
©https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/ccus.html

(*2) その他、佐賀市ではCCUの先駆的なプロジェクトとして、、二酸化炭素回収機能付き廃棄物発電検討事業が取り組まれたり、川崎重工業株式会社では、低濃度二酸化炭素回収システムによる炭素循環モデル構築実証が行われたりしています。

因みに、2023年3月時点の海外のCCS(・CCUS)に関する動向は、以下のようになっています。

経済産業省:CCS長期ロードマップ検討会最終とりまとめ説明資料 令和5年3月
© https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/ccs_choki_roadmap/pdf/20230310_2.pdf

経済産業省:CCS長期ロードマップ検討会最終とりまとめ説明資料 令和5年3月
©https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/ccs_choki_roadmap/pdf/20230310_2.pdf

 

CCS導入のメリットとデメリットについて

一見、カーボンニュートラルに向けて良いこと尽くしのように思われるCCSですが、やはり課題もあります。それは、コスト面です。経済産業省より、各フェーズに分けてコスト削減を目指す具体的な試算結果も公表されています。

メリット天候に左右されずに発電が可能な火力発電の、CO2排出量をおさえることができるため、低炭素化を目指すことできる。

環境省:CCUSを活用したカーボンニュートラル社会の実現に向けた取り組み
©https://www.env.go.jp/earth/brochureJ/ccus_brochure_0212_1_J.pdf

デメリットCO2を他の気体から分離させて回収する際に、コストがかかる。

経済産業省:CCS長期ロードマップ検討会最終とりまとめ説明資料 令和5年3月
© https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/ccs_choki_roadmap/pdf/20230310_2.pdf

 

CCUSとの違いについて

CCSとよくセットで出てくるのが、CCUSです。Carbon dioxide Capture, Utilization and Storageの略で、分離・貯留したCO2を利用する技術を表しています。

例えば、アメリカでは、CO2を古い油田に注入することで、油田に残った原油を圧力で押し出しつつ、CO2を地中に貯留するというCCUSが行われており、全体ではCO2削減が実現できるほか、石油の増産にもつながるとして、新たなビジネスモデルに繋がっています。

CCUSの詳細につきましては、別コンテンツでご紹介します。

 

まとめ

本コンテンツでは、パリ協定で目標とされている「2℃目標」の達成に向けて、CCSがどれくらい重要となってくるのか、昨今のCCSの動向を踏まえながら解説しました。

実際に政府の検討会においては、万が一2030年にCCSが導入できなかった場合、2050年のカーボンニュートラルの実現に必要なCO2の年間貯留量の確保が困難となる懸念がある、との試算が出ています。

経済産業省:CCS長期ロードマップ検討会最終とりまとめ説明資料 令和5年3月
© https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/ccs_choki_roadmap/pdf/20230310_2.pdf

 

まだまだ課題も多いCCSですが、事業者の皆様も、引き続き情報を収集しその動向に注目していくことが必要です。

本コンテンツ、並びにCO2排出量の算定に関しご質問がございましたら、弊社までお問い合わせ下さい。

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